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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第8部 狙われたエドル
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【母の決断】

「奥様、お急ぎを。」


真っ暗な地下通路を小さなランプの(あかり)だけを頼りに、一組の男女が死地から逃れようとしている。


先導する男は少しでも視界が良くなるように、ランプを高くかざしていたが、ランプの(あかり)が貧弱な上、足元も悪い。

しかも女は手に赤子を抱えていた。


これだけの悪条件が重なっては、いくら急ぎたくても、注意深く進むしか方法は無い。


一行が秘密の地下通路を進み始めてからおよそ10分、ついに道は階段のような段差で行き止まりとなった。


先導の男はそのまま段差を上り、通路の天井にある木製の蓋を開けると、新鮮な外気が通路に流れ込んでくる。


男は無言で注意深く地上に出ると、数分後に戻って来た。


「奥様、大丈夫です。待ち伏せはありませんでした。」


段差の途中で待っていた女は少しだけ表情を和らげると、手に抱えていた赤子を男に手渡そうとする。


「アルフレッド、この子を頼みます。安全な場所まで連れて行くのです。あなたなら囲みを抜けられるでしょう。」


男は驚愕の表情で反論する。


「何をおっしゃいますか!? 逃げるチャンスは今を置いて他にはありませんぞ!」


「あなたの言う通り、今なら刺客から逃げる事は可能でしょう。しかしこのまま逃げたところで問題が先送りになるだけです。王国の禍根(かこん)はここで絶ちます。」


「奥様・・・まさか屋敷に戻られるというのですか!?」


男の問いに対して、女はきっぱりとした口調で返答する。


「ここで私が死んでもこの子が残れば良い。この子がいずれアムロード家の希望になるでしょう。アルフレッド、あなたに当家の未来を託します。これが私の最後の命令と心得なさい。」


無言で相手の表情をじっと見つめていたアルフレッドは、やがて(あきら)めたように言葉を発する。


「どうやらお止めしても無駄のようですな・・・承知しました。サアラ様は命に代えても私が安全な場所までお連れ申し上げます。」


「頼みましたよ。」


女は()()()()と眠っているサアラをそっとアルフレッドに手渡すと、(いと)おしそうに彼女の頬を()でる。


「お別れよ、サアラ。母がいなくても強く生きるのです。」


そう言うと彼女は(きびす)を返し、通路の奥へと消えて行った。

次回「探索」は、1月30日(火)20時頃に公開予定です。

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