【クリストファーの告白Ⅳ】
「サアラ、私と結婚して欲しい。こんな事を誰かに言うのも、それ以前にこんな気持ちになったのも初めての経験だ。私の妻となる者はお前以外にあり得ない。これからも私と共にあり、私を支えて欲しい。」
クリストファーに普段のふざけた雰囲気は微塵もない。
彼の告白が一切の冗談を含んでいない事は誰の目にも明らかだった。
一方、クリストファーから真摯なプロポーズを受けたサアラの表情に驚きや困惑の色は無い。
しかしそれは歓喜の表情でもなかった。
「・・・殿下はとても率直なお方なのですね。そのような殿方を私は決して嫌いではありませんわ。」
「サアラ! それでは・・・」
勢い込むクリストファーに対して、サアラは悲しそうな表情で首を振る。
「摂政殿下、我がアムロード家は私以外に跡継ぎがおりません。私はそう遠くない将来に婿養子となる男性と結婚し、跡継ぎとなる子を成す義務があります。ですから摂政殿下がアムロード家の婿養子にでもなられない限り、結婚は不可能です。しかし殿下のお立場を考えれば他家への婿養子など、それこそ問題外でしょう。」
「・・・・・・」
「殿下にそこまで見込んで頂いた事は、女として光栄に存じます。ですが殿下が進まれる道と、私が進む道が交わる事は無いでしょう。ですから好き嫌いの問題ではありません。そもそも私は未来を選択する自由など無い人間なのです。」
「・・・お前の事情は分かった。今はそれで良い。」
「誠に申し訳ございません。」
「だが告白した以上、私も引き下がるつもりはない。例え時間がかかっても、希望を失い、未来を諦めたお前の心を変えて見せる。」
「殿下!?」
「サアラ、その程度で私が諦めると思うなよ。私は欲しいものは手に入れる主義なんだ。」
それはクリストファーの宣戦布告だった。
彼の決意を前にしたサアラは圧倒され、それ以上反論できない。
こうして二人の攻防は第一ラウンドを終えた。
次回「宿所防衛戦Ⅱ」は、11月29日(水)20時頃に公開予定です。




