【クリストファーの告白Ⅲ】
クリストファーはサアラが差し出したそれをまじまじと見つめる。
「棘・・・まさかこんな小さな棘が刺さっただけで、馬が暴れたと言うのか!?」
「こんな小さな棘でも刺さり方によっては、大事になる場合がございます。」
次にサアラはその棘を馬に見せ、優しく首を撫でながら話しかける。
「ほら、お前を苦しめた棘は取ってあげたからね。もう大丈夫。」
それからしばらく馬の様子を観察したサアラは大きく頷くとクリストファーに状況を報告する。
「殿下、馬はすっかり落ち着きましたので騎乗可能です。」
「本当に大丈夫なのか?」
「問題ございません。もしどうしてもご不安という事であれば私が代わって殿下の馬に乗りますが・・・」
「いや、それには及ばない・・・それにしても見事なものだな、サアラ。」
「恐れ入ります。」
「さすがは先のレラン高原の戦いで一軍を率いて敵中突破し、ウィルド王太子を救い出した英雄だけの事はある。」
サアラは目を大きく見開いてクリストファーを凝視する。
「殿下、いつからそれを・・・」
「我が国の情報網を甘く見てもらっては困る。王国にそのような女騎士がいる事は戦争直後にキャッチしていた。それが恐らくお前であろうという事もね。」
「・・・・・・」
「ただその時点では、お前とその女騎士が同一人物かどうかの確証までは得られなかった。だからそれを確認する必要があった。」
「それでわざわざ私を代表に指名して呼び寄せたのですね。」
サアラはようやく王族でも国の重鎮でもない自分がどうして代表に選ばれたのかを理解した。
「そう。そこまでは計算通りだったのだ。だが私は油断していた。お前は戦いの英雄であるだけでなく、とんでもない大泥棒だった・・・それで予定が全て狂ってしまった。」
「大泥棒と言われましても、私、身に覚えはございませんが・・・」
「何を言う。私の心を盗んだではないか!?」
クリストファーはサアラの目を真っ直ぐに見据え、改めて自らの思いを伝える。
「サアラ、私と結婚して欲しい。」
次回「クリストファーの告白Ⅳ」は、11月28日(火)20時頃に公開予定です。




