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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第7部 デール公国
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【月夜の邂逅】

王国代表を歓迎する夜会は、準備期間が短い割には大掛かりなものであった。


夜会の主賓として初対面の貴族たちを相手に接待を続け、さすがに疲れを感じたサアラは、夜会で自分の手助けをしてくれたメイドにそっと話しかける。


「どこかに一休み出来るところはないかしら?」


「それでしたら中庭がございます。夜は人がおりませんので、一休みされるのに最適です。」


「そこに案内して頂ける?」


「お安い御用です。」


サアラはメイドの案内で、一時的に会場を離れる。


「こちらでございます。それではごゆっくり。」


案内を終えたメイドは、その場から去って行った。


一人になったサアラは中庭に出て、深呼吸をしながら夜空を見上げる。


天空にはいつものように二つの月が煌々(こうこう)と輝いていた。


「月の美しさは王国も公国も変わらないのね・・・」


二つの月に照らされた中庭は、夜とは思えないほど明るい。


人気の無い中庭で、彼女の独り言を聞いた人間など誰もいないはずだった。


「そろそろ戻らなくては・・・」


サアラが中庭を離れようとした時、不意に答えが返ってくる。


「月に国境などないからね。」


ハッとしたサアラは声のした方向に目を凝らすが、人の姿は無い。


「誰!?」


サアラの問いを受ける様に、声の主は木陰から姿を現した。


全身が月明かりに照らされ、顔がはっきりと見える。


それはサアラが初めて見る人物だった。


「どなたですか?」


男は質問に答えない。

沈黙の時間が流れる。


「あの・・・」


「お前が来るのを待っていた。」


「・・・それはどういう意味でしょうか?」


彼は謎めいた微笑を浮かべると、言葉を返す。


「まあ、今にわかるさ。」


「私の事をご存じなのですか?」


「ああ、知っているとも・・・また会おう、サアラ・アムロード。」


その言葉を最後に、彼は再び木陰へと姿を消した。


「あの・・・もし?」


サアラの呼びかけに返答は無い。

既に中庭から人の気配は消えていた。


『あの人、私の名前を知っていたけど、結局誰だったのかしら・・・』


その男が消えた今、サアラにそれを確かめる(すべ)は残されていなかった。

次回「姫と不審者Ⅰ」は、11月20日(月)20時頃に公開予定です。

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