【一目惚れ】
「殿下はミス・アムロードに一目惚れされましたね。」
断定するビショップに対して、クリストファーはウッと言葉に詰まり、赤面する。
ポーカーフェイスが重要な国の指導者としては失格と言えるほどの分かりやすい反応だ。
「プッ、クックックッ・・・図星のようですな。」
思わず笑い出したビショップを見たクリストファーは困ったように抗議する。
「わ、笑うなビショップ! 私だってこうなるとは思わなかったんだ。」
「そうですか、堅物摂政と呼ばれた殿下にもついに春が来ましたか。なるほどねぇ・・・」
「お前、私をからかって楽しんでるだろう!?」
「いえいえとんでもございません。殿下、私は祝福しているのですよ。しかし殿下も大変な相手に惚れたものですなぁ、何しろ彼女は敵国の高位貴族の娘にして戦場を駆け回る女騎士でもある。あのような令嬢には滅多にお目にかかれるものではありません。ハードルの高さは尋常ではありませんな。」
「一体どうすればいいと思う? お前こういうのは得意なのか?」
「とにかく相手と会って話さなければ、何も始まらないでしょう。上手くいくとかいかない以前の問題ですよ。」
「では夜会には出るべきと?」
「夜会の際にお二人だけで話せるよう、私の方でセッティングまではさせて頂きます。ただしそこから先は殿下のご手腕次第です。」
「・・・分かった。お前の言う通りにしよう。頼りにしているぞ。」
「承知しました。それから殿下がミス・アムロードと親しくなるためには、まず殿下の事を知って頂く必要があります。」
「それはそうだな。 」
「そのためには殿下とミス・アムロードとの接触時間を増やす必要があります。そうすれば殿下のお人柄も自然と相手に伝わる事でしょう。」
「しかしその結果、嫌われることだってあるぞ。」
「それはそうです。恋愛事に絶対などあり得ません。」
「・・・その通りだ。それで接触時間を増やす何かいい考えでもあるのか?」
「ございます。例えばこのような手はいかがでしょう・・・」
ビショップの説明を聞いたクリストファーは驚きながらも賛意を示す。
「なるほど、その手があったか。少し強引な気もするが、悪くない。」
「男性側は少し強引なくらいでちょうど良いのです。」
「よし、では夜会の時に早速作戦を実行しよう。」
こうして二人のサアラ攻略作戦はスタートした。
次回「月夜の邂逅」は、11月19日(日)20時頃に公開予定です。




