【公国へⅡ】
『公国から届いた公式書簡の内容とミス・アムロードの証言を合わせて考えれば、公国の目的は彼女を自国に呼び寄せる事だろう。』
公国の目的までは読み解けたアランであったが、何故彼らがそこまでしてサアラを自国に招きたいのかが分からない。
王国においてサアラ・アムロードは間違いなく重要人物だが、国家存亡を左右するレベルの人物かと言えば、そうではない。
ましてやデール公国にとって彼女は重要人物ですらないというのが、アランの結論である。
結局公国の真意は分からないままだった。
両国の停戦協定を協議する王国側代表は、最終的にデール公国駐在の王国貴族であるオリソン子爵とサアラの二人に決まった。
デール公国側の指名はサアラ一人であったが、まさか一人で行かせるわけにはいかないので、残りの人選を行う必要があった。
最初はアラン自身かエドルがサアラと共に公国に行く案も検討されたが、協議が長引いた場合、彼らでは国内政治への影響が大きすぎる。
結局無難な選択で、協議が長引いても影響の無いオリソン子爵が候補として浮上した形である。
王国側のスタンスとしては、正代表はオリソン子爵であり、サアラはあくまで副代表という位置付けである。
またサアラたちが担当するのは実務協議までであり、協議内容が固まった後はウィルド王太子クラスが代表になる予定だ。
両国で何度かの公式書簡による調整が行われた結果、公国から最初に打診を受けた3か月後には、ついにサアラが王国代表としてデール公国へと出発する事になった。
次回「公国へⅢ」は、11月11日(土)20時頃に公開予定です。




