【隣国の招待Ⅰ】
「ただいまマーサ。」
30分以上説教された上、ようやくエドルの執務室から解放されたサアラは、ソファーにぐったりと座り込む。
「お帰りなさいませ」
「熱いお茶をお願い。」
「かしこまりました。」
マーサはお茶の準備をしながらサアラに話しかける。
「旦那様とのお話は終わったのですか?」
「まあ、なんとかね・・・それにしてもお父様って、何であんなに地声が大きいのかしら。うー、まだ耳がキンキンする。」
「それはお疲れ様でございました。これに懲りたら、あまり無茶をされない事ですね。」
「みんなそう言うけど、あれは仕方がなかったのよ。」
「さようでございますか。」
エドルやマーサに言われるまでもなく、サアラは別に騒ぎを起こしたいと思っているわけではない。
ただ、騒ぎになるのを恐れて何もしないのは性に合わないだけだ。
マーサからティーカップを受け取り、ゆっくりとお茶を飲む事でサアラの緊張がほぐされていく。
「やれやれ・・・戦争も終わったし、お父様のお説教も終わったし、これでようやく平和になるわ。」
「本当にそうなりますかねぇ・・・」
「マーサ、あなたは心配し過ぎなのよ。世は全て事も無しだわ。」
「姫様、一大事です!」
「グフッ!」
部屋に飛び込んできた若いメイドの大声に驚いたサアラは思わずお茶を吹き出した。
しばらく咳き込んだ後に息を整えたサアラは彼女に恐る恐る問いかける。
「・・・一体どうしたの?」
「今すぐ登城する様、王宮より至急の呼び出しです。」
「呼び出しって・・・お父様ではなく私を?」
「はい。先方は姫様をご指名です。」
横で話を聞いていたマーサがジト目でサアラを見る。
「確か平和になるんですよね、お嬢様。」
一方若いメイドは息を整えながら報告を進める。
「王宮からの使者はお帰りにはならず、姫様の返答をお待ちです。いかがいたしましょうか?」
「そのまま待たせておきなさい。私は今からお父様に報告します。」
サアラはそう言い残すと、エドルの執務室に取って返した。
次回「隣国の招待Ⅱ」は、11月7日(火)20時頃に公開予定です。




