【外交方針Ⅱ】
「サアラ・アムロード・・・そうか、それが彼女の名前か。」
「はい。王国駐在のオルドリッジ子爵からの情報とも完全に一致します。摂政殿下がお探しの人物は彼女です。」
「それで実際に話してみてどうだった?」
「会話をしたのはほんの僅かの間でしたので第一印象に過ぎませんが、表面的には常識をわきまえた令嬢という印象で、とても騎士として戦争に参加するような方には見えませんでした。」
「思ったより普通だったと。」
「はい。彼女と会話する中で、こちらから少し揺さぶりをかけたのですが、尻尾は出しませんでした。本性を隠しているのかもしれませんが、ガードは固いですね。」
「簡単に正体を明かしてはくれないか・・・だがこっちには戦場で彼女の顔を見た証人がいるんだ。面通しをしてしまえば、いくら彼女が否定しようが無駄な事さ・・・ところでミス・アムロードは美人だった?」
「・・・その情報は必要ですか?」
「もちろんだとも、何を言っているんだ。我が国の外交戦略を考える上で必要不可欠な情報だよ。」
「左様でございますか。しかし美人かどうかなど、それこそ個人的な印象になってしまいますが・・・」
「もったいをつけるな。平均以上か? 平均以下なのか? それとも問題外か?」
「・・・平均以上かと存じます。」
「そうか! 平均以上か。これは会うのが益々楽しみになった。」
「そうはおっしゃいますが、摂政殿下とミス・アムロードはお会いする約束など一つもしておりませんが・・・そもそもミス・アムロードにとっては、他国の人間である摂政殿下にお会いしなければならない理由がありません。普通に招待したところで怪しまれて断られるだけです。」
「なあに、理由が無ければ作れば良いだけさ。」
そう断言するクリストファーの表情は自信に満ちていた。
次回「隣国の招待Ⅰ」は、11月6日(月)20時頃に公開予定です。




