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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第6部 レラン高原の戦い
110/273

【処分】

その夜、グリーンヒル砦の広間には遠征軍と駐留部隊の主だった者が集まり、報告会議が開かれていた。


幸いにも味方の死者は十数名であり、サアラを警護する部隊からは怪我人こそ出たものの死者は無かった。


これほどの激戦にしては、考えられないほど少ない損害である。


敵の撃退に成功し、味方の損害は少なかった。

軍事的には大成功と言える。


この結果には大いに満足するアーサーであったが、どうしても看過できない問題が残っていた。


彼は厳しい表情でウィルド王太子を見つめると、(さと)すように語りかける。


「殿下、お分かりかと思いますが、もしミス・アムロードが救援に入らなければ、今頃殿下の命はありませんでしたぞ。」


「マクミラン卿、其方(そなた)の申す通りだ。返す言葉もない。」


ウィルドは隣に座るサアラに声をかける。


「ミス・アムロード、此度(こたび)の事、感謝する。」


サアラは黙って会釈する。


「間違いを素直に認められるのは、殿下に名君の素質がある何よりの証拠と存じます。しかし戦場における(あやま)ちは、時に取り返しのつかない結果を招きます。今回、殿下をお助けするためにミス・アムロードは文字通り命を懸けられました。それを決してお忘れなきように。」


「肝に銘じよう、マクミラン卿。」


次にアーサーはサアラに視線を移す。


「さてミス・アムロード、あなたにも申し上げたき事がございます。」


まるで悪戯(いたずら)が見つかった子供の様に、サアラの顔がサッと青ざめる。


「改めてミス・アムロードにお尋ね申す。今回の遠征の指揮官はどなたかな?」


「・・・あなたですわ、マクミラン卿。」


「そうです。指揮官である私が、ミス・アムロードには砦に留まるよう、はっきり申し上げたはずです。まさかそれをお忘れではあるまいな。」


「もちろん覚えております。」


「いくらウィルド殿下を助けるためとはいえ、周りが止めるのも聞かずに勝手に出撃した事は明らかな軍律違反であり、処罰の対象となります。」


「言い訳するつもりはありません。いかなる処罰も覚悟しておりますわ。」


「待ってくれマクミラン卿、ミス・アムロードの行動は私に原因がある。処罰なら私が受けよう。」


「いいえ、これはひとえに私の未熟さが招いた事。そのようなお心遣いは無用に願います。殿下、処罰は私が受けます。」


「いやしかし・・・」


「分かり申した。」


うんざりしたように溜息(ためいき)をついたアーサーは処分を言い渡す。


「お二人には等しく三日間の謹慎を命じます。」


それを聞いたサアラとウィルドは揃ってコクリと頷く。


二人の納得した様子を見て満足そうに頷いたアーサーは、まるで今思い出したかのように追加の処罰を口にする。


「ああそうそう、今日は罰としてミス・アムロードの夕食は用意しておりません。」


「えぇっ、夕食抜き!? そんなぁ・・・」


たった今まで(りん)としていたサアラが漏らした情けない声に、皆が大声で笑い出す。


「色気より食い気か?」


「いやいや姫様の場合、命より食い気であろう。」


「姫様ならたとえ殺されても、ご馳走を見せたら生き返るに違いない。」


戦場でサアラを護り切った一騎当千の騎士たちが次々に軽口を叩く。


サアラの一言で、たった今までの重苦しい雰囲気が一変し、その場は笑顔に包まれた。


激動の一日はこうして幕を閉じた。

次回「謹慎Ⅰ」は、11月2日(木)20時頃に公開予定です。

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