【馬術大会Ⅱ】
馬術大会には王立乗馬学校の生徒全員が出場出来るわけではない。
大会に出場できるのは、前年度の大会で実績を残した事で予選免除となるシード権選手と、予選を勝ち抜いた選手に限られる。
シード権選手が男女それぞれ10名づつ、予選を勝ち抜いた選手も同じく男女10名づつとなるため、男女合わせて40名で優勝を争う事になる。
競技は男女別に分かれており、男女それぞれで種目別の優勝者と総合優勝者が選ばれる。
選手は全ての競技に出場する事が出来るが、種目別の優勝を狙う選手は他の種目を棄権し、得意な一種目だけに絞って参加する事も可能だ。
ただし種目別の優勝だけではなく総合優勝を目指す者は、当然、全種目に出場する事になる。
女子の場合、前年度の優勝者が卒業したため、総合優勝の筆頭候補は前年度準優勝のサアラという事になる。
一方、これが初出場となるソフィアは優勝候補としては、全くノーマークの存在だ。
しかしサアラ自身はソフィアの事を優勝争いを左右するダークホースと捉えて、強く警戒していた。
それには理由がある。
予選を通してのソフィアのパフォーマンスは決して派手ではないが、とにかく失点が少ない事が特徴だ。
派手なパフォーマンスで得点アップを狙うのではなく、失点を減らしてコツコツ得点を積み重ねていくタイプである。
他の選手がミスによって大きく点を減らしていく中、大きな失点の無い彼女はいつの間にか順位を上げて、とうとう予選を突破してしまう。
一見地味で目立たないのだが、このタイプの選手は大きく崩れる事が無いため、実に厄介な存在だ。
そして、そんなサアラの予感は大会当日に現実となる。




