【救援Ⅱ】
「間に合ったぞ、殿下はご無事だ!」
ウィルドの無事を自らの目で確認したサアラは、直ちに次の指示を出す。
「密集隊形を解け。散開!」
サアラの号令によりスピードを緩めた騎士たちは散開し、近衛騎士団を護るように、あっという間に周囲を固めていく。
「おぉ、アムロード家だ!」
「アムロード家が来てくれたぞ!」
待ちに待った救援に、近衛騎士たちの喜びが爆発する。
「殿下! ご無事ですか?」
真っ先に自分に駆け寄る小柄な騎兵の声を聞いたウィルドは驚愕した。
「あなたはまさか、ミス・アムロードなのか!? なぜここにいるのだ?」
「事情は後で説明いたします。殿下、我らが包囲に穴を開け、退路を切り開きました。殿下は今の内に近衛騎士団と共に撤退願います。」
「あなたはどうするのだ? ミス・アムロード。」
「殿下のご無事な撤退を見届けた後、我らも速やかに撤退いたします。」
「それは出来ぬ! 女性を残して自分たちだけ逃げる事など・・・」
「そのような事を言っている場合ではありません!!」
ウィルドを諫めるサアラの言葉は有無を言わせぬ激しい口調だった。
「ここで時を失えば、せっかく我らが命がけで開けた退路が閉じてしまいます! もし殿下が討たれれば、たとえ敵を撃退しても戦は我らの負けなのですよ! 殿下は王国の敗北をお望みですか!?」
それはウィルドが初めて目にするサアラの姿だった。
ウィルドはサアラの凄まじい気迫に圧倒される。
「・・・分かった、だか必ず生きて戻れ。ミス・アムロード、これは命令である。」
「かしこまりました。」
サアラはまるで夜会に出席した淑女のような優雅さで一礼した。
次回「救援Ⅲ」は、10月25日(水)20時頃に公開予定です。




