【救援Ⅰ】
ウィルドと彼を護る近衛騎士たちは敵の包囲にじりじりと追い詰められていた。
ヒット&アウェイで断続的に突っ込んでくる敵をいなしつつ救援を待っていたが、未だその兆しは無い。
ウィルドと近衛騎士たちの戦意は高く、実際彼らは善戦していたが、長くは持たない事は明らかだ。
それを理解している包囲側は無駄な犠牲を避けるため、強引な攻撃はせずに相手を十分疲れさせてから、確実に仕留めるつもりだ。
この状況に近衛騎士たちも次第に焦りの色を濃くしていた。
やむなくウィルドは一か八かの賭けに出る事を決意する。
「このままでは勝機は無い。こちらの体力が残っている内に強行突破するぞ。」
しかし現在の数で強行突破を選択するのは、ある意味で相手の思うつぼになりかねない。
もし突破を試みれば相手からの総攻撃を受ける事になるため、仮に突破に成功したとしても、相当の犠牲を覚悟しなければならない。
『何としても殿下だけはお護りしなければ・・・』
近衛騎士団全員に悲壮感が漂う中、転機は突然訪れた。
「あれは何だ!?」
男たちの叫び声と共に包囲の一角がにわかに崩れ始め、そこから姿を現した騎兵の一団が全速力でこちらに迫ってくる。
「っ! 新手か!?」
ウィルドたちが身構える中、近習の騎士が相手の様子に目を凝らす。
「・・・違います! あの軍旗は『草冠に女神』! 殿下、お味方です!」
その声は喜びに打ち震えていた。
次回「救援Ⅱ」は、10月24日(火)20時頃に公開予定です。




