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Ⅰ*08 ダンジョン入口付近でサバイバル~スリーピング・デンジャー



 ダンジョン入口付近でサバイバル、2日目。



 俺はスライムボールから何とか水分と何らかの栄養素(あったら良いなぁ)を摂取する事に成功する。



 HP:3/8

 AV:4/4

 MP:2/2



「残念ながらヘルスポイントまでは回復してないか…だが、何とか飢えだけは凌げたようだな。……まあ、普通にまだ腹減ってる感は正直ある」



 極度の空腹を水分のみで誤魔化してるようなもんだからな。残ったスライムボールの皮も食えれば少しは腹に溜まったかもだが…。



「さて、行くか…! ん? なんか…おかしいな?」



 俺は違和感を感じて目を擦る。



 今、俺が居るこの第一の部屋は、小さいながらも地上へ続く孔が開いているから陽の光が射している。だが、そこから先の通路からは…本来、松明の灯りが無ければ何も見えないほどの暗闇だったはず。


 だが、今は蛍光灯の豆電球が点いた室内くらいの明るさなのだ。 どうしたんだ、俺の眼は?


 …それとも、ダンジョン自体が微妙に発光してるのか?



 いかにダンジョン生活二日目と言えど、こんなに早く目が慣れるものなのだろうか?



 ならば人間の適応能力は凄いな! 見直した!!



「…いんや、気になる変化ではあるけど。でもこれなら、なんとか灯り無しで進むことができる。……流石に遠いものや文字なんかを見るのは無理だろうな。その時になったら松明を点けるか」



 俺は暗闇の中、通路の側面を肉眼で確認しながら奥の第二の部屋に進む。



   ※



「……良かった。鳥共は居ない。元の部屋に戻ったのか…だが、何があったんだこの部屋で?」



 地面にはスライムボールが二十…いや、三十は蠢いていた。



「昨日は確か十匹くらいしか居なかったのに…何が原因でこんなに増えたんだろう?」



 が、目下の問題よりは今はこの先の進展だ。



「鳥共の相手はまだ無理だろう。だから今は右か左の通路を進んでみるか…最悪、鳥以上に厄介なモンスターが出るかもだが、先ずは逃げよう。全力で…」



 もうこれ以上は俺の尻が持たない…ッ!



「じゃあ、先に右からだな」



 俺は足元のスライムボールを踏んづけて刺激しないように最新の注意を払いながら進む。



「……コイツら、点で反応しない。もしかして、手に持ってた松明の灯りとか…起きた時に俺の身体に群がってたから体温とかに反応してんのかもな~? よし、到着…」



 俺は第二の部屋を右に出て少し歩くと、とある小さな部屋に出た。



「なんじゃここは? 四畳半くらいしかないし、スライムボールがえーと…三匹だけ。というか…地面が土じゃない。ん~…触った感じだとレンガか? 程よく乾いてる」



 ふと気付くと、その部屋の天井と壁になにかビッシリと絵のようなものが描かれている事に俺は気付いた。



 よし!ここは壁画の部屋と名付けよう!(呑気)



「ん~駄目だな、流石に近づかないと判らん。松明を使うのも勿体無いような…どれ、もうちょい近くで」

(カチリっ)

「え」



 俺が数歩その部屋に踏み入った時だった、足元でなにか変なスイッチ音が聞こえたと思えば、突然、真正面の壁から尖ったものが飛び出した。



 何か飛んでくるっ!?


 俺は咄嗟にそう思い地面にダイブした!



(シュコオオオオオ…)

「ん? なんの音d」



 頭上で変な音がする? だが、そこで俺の意識は途切れた……。



   ※



「んん? 何が起こったんだあ…?」



 俺はレンガにへばりついた顔を引き剥がす。顔からパラパラと砂が落ちる。



 恐る恐る立ち上がって正面の壁を調べると、変な顔の獣らしき画の口に直径五センチほどの小さな穴が開いている。



「ここからさっきの針みたいなヤツが飛び出したのか? 一体…あの音は……ま、まさかガスか!? それで気を失ってたのか? …ん。コイツら、なんでピクリとも動かないんだ?」



 俺の足元には何故か動きを止めたスライムボールの姿があった。



「……まさか、ガスで死んだのか? じゃあ、毒ガス…!?」



 ☞スライムボール(レベル1)

 種族:不定形系・最下級

 状態異常:昏睡

  無力化されたスライムボール。戦闘能力は皆無、微かな水気さえあれば生きていけるダンジョンの食物連鎖では最底辺の存在。繁殖力は非常に高い。

 特殊能力:無し



「昏睡? 眠らされてるのか、モンスターまで? ヤバいなこの催眠ガス…というか、どんだけ寝てたんだろ…ダンジョンじゃ時間が判らないもんな」



 俺はもののついでとばかりに無力化されたスライムボール三匹を腰の道具袋に回収すると、恐らくその仕掛けを起動させるスイッチがあろう真ん中らへんを避け。壁を背に這いながら部屋から脱出した。



「……嘘だ」



 俺は第一の部屋の孔から地上を見上げて呆然とする。



 既に地上は夕暮れだった。



「…なにか? じゃあ、あの部屋で俺はもう半日はグーピー寝てたってことか…」



 HP:8/8

 AV:4/4

 MP:2/2



「あ! 良かったぁ~…極度に腹が減ってなきゃあ、寝ればヘルスポイントは回復するのか…だが、あの部屋のガストラップ。モンスターでもあの爆睡振り。あの仕掛けを利用できさえすれば…? こりゃあ、イケるかもしれん!」



 俺はニヤリと邪悪な笑みを浮かべると、再びあの壁画の部屋へと戻った。



「確か、この辺りだったような…?」



 俺は這いつくばってその部屋の入口付近をモゾモゾと動き回った。仕掛けのスイッチを探す為だ。



 この部屋は何故か他の部屋と違って土じゃなくてレンガの床だ。恐らくそのスイッチを踏ませる為にレンガを敷き詰めて誤魔化してるんだろう。


 だが、先の仕掛けの作動時には俺も気が動転していた。だから、どのレンガを踏んだなんて憶えちゃあいない。



「ん?」



 あまり質のよろしくない日干しレンガの中にひとつだけ、真っ白なレンガがあった。触ってみるとどうもレンガではなくそれなりの石材でできたブロックのようだ。


 …しかも。ちょっとだけ他のレンガより盛り上がっている。



「ってまさかぁ~!こんなあからさまなトラップを俺が踏んでしまったと? 馬鹿を…」

(カチリっ)

「あ」



 俺は思わずその石を触っていた手に体重を乗せてしまった。



(シュコオオオオオ…)

「うわあマジかぁ~? ……頼んだぞ!明日の俺!じゃ、おやすグゥ~…」



 こうして、俺のダンジョンでのサバイバル、記念すべき2日目はあっけなく終了する。



 

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