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Ⅰ*03 異世界初日~いざ逝かん、ダンジョンへ

ストーリーや設定改編作業に伴い、本来の第三・四・五話を統合すますた<(_ _)>

短い話やあまり要点の少ない話も統合していきます!



「ふぃ~…行けども、行けども草ボーボーだなあ。もしかして道から外れちまったか? …むしろその道とやらも怪しいけど」



 俺はあのやたら弦の長いギター弾きの言ったダンジョンを目指して鬱蒼とした雑木林を進んでいた。痛っ。茂みの枝が引っ掛かる。しかも微妙にトゲトゲしている。



「このままじゃあ日が暮れちま……お? 奥になんかある? 建物だ!?」



 俺は木々の隙間の奥に何やら人工物を見つけて慌てて駆けだす。木の根に足を取られて思わず転んでしまったが構うものか。こんな無様な姿も誰も見ちゃあいないしな。



   ※



「……こりゃあ、もしかしてとんでもない場所に来ちゃったかも」



 そこには村があった。いや、この広さと大きさだと街かな? 



 ただし屋根のある建物は殆ど無かった。なんなら壁すらない瓦礫の山、もしくはひび割れた壁と朽ちた木のドアの破片や窓枠だけだ。



「レトロ感溢れる、屋根が無いタイプのプライバシー皆無のRPGって笑える雰囲気ではないなあ…」



 森に飲み込まれた廃村と言って相応しい光景だった。最近流行りの和製ホラー映画みたいな不気味さを感じるが、不思議と恐怖よりも神秘? …いいや、物悲しいんだな。



 俺はこの場所にどんな人達が生活していたとか、なんならこの世界のことすら知らないが、それでもそう感じてしまったんだよ。



   ※



「…駄目だ。何もありゃしない。家の中にゃあ人の代わりに木が生えてら」



 暫く廃村の中を探索するが何も役立ちそうなものは発見できなかった。まるで火事場泥棒みたいだが、こんな状況じゃあそんな余裕は無い。



「しっかし、ダンジョンってモンスターが出るんだろう? 危ないんじゃないのか、そんな近くで暮らすなんて。 あ。でもダンジョンで稼げって言ってたし、鉱山の近くに鉱山街が出来るようなもんか…」



 まあ、普通は鉱山からモンスターは湧かないわけだが。



「この荒れよう…恐らく何十年も放置されてるんだろうなあ~。この先に件のダンジョンがある訳か…ん?」



 何かが焦げるような匂いがしたと思ったら何かがパキンと折れるか爆ぜたような音がこの静かな廃村では嫌でも響く。



「ッ!?」



 まさか誰か居るのか!?


 俺は慌てて音がした方へと走る。そこは半壊した家屋だが、数少ない屋根の残った建物だった。



「……なんだ、誰もいないじゃんか」



 中を覗くが誰も居なかった。だが、そこは他の家屋跡とは明らかに異質だった。



「なんでここだけ…こんなに綺麗に片付いてるんだ? 他は蜘蛛の巣やら壊れた棚やらガラクタでゴチャゴチャになってたのに。それに……」



 俺は隅にある竈場に近付く。そこには大きなひしゃげた丸鍋がデンと乗せられていて、蓋を開けば…残念。流石に食い物は入ってはいなかったか。



「コレ、なんだろ…すっかり焦げてしまってるが肉かなんか…か?」



 蓋を戻すと俺は屈んで鍋の下を覗く。



「おいおい…まだ微妙にあったかいぞ? さっきの音はこの炭になった薪が割れた音か…」



 その瞬間、建物の外でガサガサと物音がしたような音がして俺は思わず地面に伏せて匍匐前進の構えをとってしまう。



 ちなみに俺のスニークスキルは自他共に認めるゼロだ。



「そうだった…ここはもうダンジョンの近くんなんだ。…仮に誰か住んでたとしても俺と同じ人間(・・)とは限らない、よな」



 そう。そして仮に人間だとしてもこんな人里離れた場所で隠遁生活をしてる奴だ。友好的である確率は正直言って期待薄だろう。



 俺はズリズリと腹と手足を引きずりながらその家屋から脱出する。



 うん。実は腰が抜けて暫く立てそうになかったからなんだよ。情けないことにな。



   ※



 なんとか立てるようになった俺は周囲をキョロキョロと警戒しつつ、廃村の中を進んで行く。


 やがて、段々と家屋跡の数が少なくなり、崩れた井戸を通り過ぎた辺りで俺は目先に開けた場所を見つけた。



「この村の終わり、か? ……いや、メイン(・・・)にやっとこさ着いたって感じかな」



 俺の目の前には鬱蒼とした木々の間に現れた丘…いや崖か? 高さは三メートル以上はある。それが俺をこれ以上この先に進むのを拒んでいるのだ。


 …否、それもまた違うか。



 この先の()はあからさまに示されているし、疑いようも無く俺を迎え入れようとしている。



「これが、確か“チュートの洞穴”とかあのギター弾きが言ってたダンジョンの入り口かあ~…結構雰囲気あるなぁ~」



 その根が張り巡らされた土壁にはポッカリと人ひとりが通れるほどの大きさの横穴が開いている。



 やはり、モンスターが出そうなオーラがプンプンだ。…正直言って怖いが、ここまで来たんだからもうちょっと近づいてみるか。



「はへえ~…ザ・洞窟ってタイプのダンジョンか。ダンジョン初体験者の俺には出来れば大理石の遺跡とか、もそっと綺麗で見晴らしの良いダンジョンが理想…? 入り口の近くになんかある…って、誰か倒れてんじゃね!? マジかよっ!」



 なんとその洞穴の前の草むらに誰かがうつ伏せに倒れていた!


 俺は我を忘れて半ばパニック状態で駆ける。



「お、おい! 大丈b……うわあぎゃあああああぁあああ!?!!」


 

 それは死体だった。いや、薄々嫌な予感はしてたんだ。



「あわっ! あわわわぁ…俺、初めて死体を見ちまったよぅ!? イヤ、爺ちゃんの葬式で棺桶開いて顔を見たから初めてじゃあないのか? アハ、アハハ…ってそうじゃないっ! 野晒しになってる死体を始めて見て動揺してるんだ!俺はっ? ハア、ハア…落ち着かねば、俺…っ! ぶふぅぅぅ~…!!」



 俺は全身から冷や汗が噴き出し、汗だくなりながらもう一度それに近付いた。



「ううっ…完全に白骨化してるから、死んだのはだいぶ前なのか? ……兜の額がパックリ割れてる。骨までかよ…剣か斧でやられたのかなあ~? コレが致命傷かあ…警察呼ばなきゃだろう」



 モンスターの仕業か? それとも山賊とか?


 どちらにしろ誰がどんな目的でやったのかは知らないが、ダンジョンの前にこんな死体を放置してたら効果抜群だろ。少なくとも俺はこのダンジョンに入りたくなくなったわ。



「もうちょっとだけ調べてみるか…? ヨッコイセ。…あ~ヤダなあ~。視線が合っちゃった…」



 俺はもう少し詳しく調べる為に仕方なくその遺体をひっくり返した。


 まさかの第一村人との触れ合いがこんなカタチになろうとはなぁ~…。



「…へ、返事がない。ただの白骨死体のようだ。…一応、言っとかないとな? ナンマンダブ…ナンマンダブ……んん?」



 その遺体はカチ割られた薄い板金製のヘルメットに手足は肌を隠すように長いロングブーツ…ゲームだとかだとグリーブとか言うヤツかも…それと肩まである皮手袋だ。それと胴体はスカート付きの革鎧で覆われていた。


 だが、俺はその遺体を眺めながらふと妙な違和感を感じたのだ。



「……この仏さんの革鎧だけ、やたら真新しいような? まあ、死因っぽい傷のあるヘルメットは仕方ないとしても…手足の装備はボロボロの穴だらけなのに…うわ。この長手袋、擦り切れてら。えっ? …いやいや、ちょっと待ってくれよ? …………。…マジかぁ~」



 俺はヒョイとその白骨死体だった(・・・)モノの片腕を持ち上げる。



「……腕の骨かと思ったが、ただの白いペンキを塗った木切れじゃあねえか!?」



 なんと白骨死体はハリボテの案山子だった。…驚かせやがって。



「誰の悪戯だよ? 骨だけだから軽いと思ったけど…鎧の下もタダの木枠だし。色すら塗ってないじゃん。田舎の遊園地のお化け屋敷だって、もうちょいやる気あると思うぞ?」



 俺は呆れながら案山子を揺さぶってみる。



「そうと決まれば…丁度良い。この装備、失敬させて貰おうぞ」



 相手が死体じゃないと分かれば遠慮は要らんな。それはそれでバチが当たらんとも限らんが、人間とは浅はかな生き物なのだよ。それにこんな環境じゃあ四の五の言ってられないしな。



「えっ!?」



 俺がその革鎧を脱がすのに思ったよりも手間取り、ええいままよ!と俺がミスター案山子の首と両手を残酷にも容赦なくもぎ取り、ズポっと上にブツを引き抜いた時だった。



 *革鎧?を手に入れました。



「なんじゃこら! 急に安っぽいSEと一緒に目の前に文字が出てきやがったぞ?」



 まさか所謂、ひとつのインフォメーション・メッセージってヤツか?



 まあ、適当に言ってみただけだが…それならまんまゲームの世界じゃないか。いつの間に俺の知らないところでMMORPGの開発が行われて居たんだ?


 そうなら運営スタッフ今すぐ出て来い。願わくば美少女NPCに囲まれた地点からホットスタートさせてくれ。



「というか、“革鎧?”ってなんだよ。まさか、俗に言う未鑑定アイテムかよ? マジでか」



 俺はジロジロと鎧を手に眺め透かすが、結局は“革鎧?”と表記されている。うーん…。



「とりま装備してみるか。まだ新品っぽいし、サイズが合ってるか確認しなくちゃな」



 *ムドーはレベル1のレザー・アーマーを装備しました。

 *ムドーのステータスが更新されました。



「おうっ!?」



 また出ちゃったよ…。ほう、この鎧はレベル1のレザー・アーマーだったらしい。なるほどね!


 なるほどね…なんだけどさ、レベル1のレザー・アーマーって何だよ?


 俺は一旦、ゴソゴソと鎧を脱いで再度手に取った。



 ☞レベル1のレザー・アーマー

 分類:アーマー

 アーマーバリュー:5/5

  装備レベル1の軽装備。極普通の革素材で出来た面白味の無い革鎧。

 特殊効果:無し



「お、装備したことで鑑定済み扱いになったのか。ふーん…まあ、初心者装備って感じでよろしぃーんじゃないでしょうか? ところで、アーマーバリューってなんだ? 鎧の…ばりゅー? サッパリ解らん。普通は防御力+なんちゃらとかじゃあないのか?」



 よく分からないけど取り敢えず改めてレザーアーマーを身につける。だって、武器や防具は装備しないと意味が無いぞって偉い人が言ってた気がするからね!



「別に変化は感じないなあ…サイズが合って良かったけどちょっと蒸れ…って何か変なアイコンみたいなのが出てる?」



 俺の視界の右下に人型のアイコンがいつの間にか出現していた。なんで気付かなかったのか。



「す、ステータス!お…オープン?」



 暫し、時だけが虚しく過ぎ去った。……ええい、泣くな!男だろうっ!?



「試しに指で…うわっ、ピンク色のエフェクトが出て反応しやがった!?」



 俺が自棄ぐそ気味に視界の端のアイコンに指先をやるとアイコンが反応したのだ。やはり、このVRは使い辛いと難癖をつけて運営スタッフにクレームを入れねば俺の気が済まない。



 ポオンと言うどこかこの空間とはかけ離れたSEが鳴って俺の視界に文字が羅列しだす。



 ▼ムドー

 ▽レベル1

 ▽クラス:無し

 ▽種族:無し

 ▽武器:無し

 ▽鎧:レベル1のレザー・アーマー

 ▽ヘルスポイント:8/8

 ▽アーマーバリュー:5/5

 ▽マインドパワー:2/2



「げっ…」



 なんと出現したのは恐らく自身のステータス画面だった。



「まんまゲームじゃあねえかって…ちょいっ! なんだ種族・無しって!? 俺はフリーターである事に誇りを持っていたが、この世界じゃあ…無職である事は仕方ないから、クラスとやらが無しなのはまだ解る…が!なんで種族が無いんだよ! え? 誤訳? せめて人間とかヒューマンの表記があってしかるべきだろう」



 俺は自分で自分のステータスにツッコミを入れるという最高に孤独で下らないことをしていたが、構わず向ける視線を下の項目へと移していく。



「鎧は今装備してるヤツが反映されてるのか。ということは服とかサンダルとかは装備としては意味が無いってことか? 後は~その下からいわゆる能力値かな? ヘルス…普通にえいちぴいで良いだろう、そこは。結局、アーマーバリューってのが解らないが、HPの下にあることから鑑みるにやはり防御力関連だと推測してみる」



 俺は革鎧を指で突きながら項目を読み進める。



「マインドパワーは…まあ、MPだよな。マジックとかマナじゃあないんだ? 精神の力って設定なのかね。目下、この世界に魔法が存在したらだが、な…」



 どうやら俺は脳筋キャラ確定ではまだないようだ。だが、何故か自分が魔法を使うビジョンがコレっぽちも頭に浮かばない。折角の異世界なんだからもっとワクワクさせろッ!? 最初から回復と火の玉の出る魔法を既に修得した状態でスタートさせてくれ!頼むよっ!! 冷気や雷撃も可。



 表記されてるのは今のとこ以上のみだ。攻撃力とか、素早さとか、運の良さとかお馴染みの能力値は確認できない。まあ、きっと見ても引くほど低いんだろう。なんだ、この変な自信は?


 ……だが、総合すると?



「俺…すっげえ弱くない? そりゃあ普段喧嘩もしない模範的な一般ピープル(前科無し)だし? 格闘技もハンドパワーも嗜んでないけどさあ~…HPが8、て。レベル1スタートだとしても弱いんじゃあないの? 酒場に入り浸る魔法使いのお爺ちゃんかよ。だが、呪文は未だ覚えていない。泣ける」


 

 兎に角、此処でウダウダ言ってても仕方ない。


 このステータスが百点満点ではなく、十点満点である事を祈ろう。



 …それに、ダンジョンは色んな意味で、もう目の前だ。



(バキャッ)

「あ…」



 俺は自分のステータスの凄まじさ(ある意味で)に興奮し過ぎるあまり、大事な防具である革鎧を俺に提供してくれた第一村人を踏んづけてしまい完全にトドメを刺してしまった。



 ゴメン。ヤッちゃったよ? 因みに経験値は入らんかった模様。



「アレ? この案山子、他にも何かぶら下げてら」



 案山子の残骸から俺はズルズルとそれに穿かせていたであろうズボンを手繰り寄せる。ズボンのベルトには確かに何かが簡易的な留め具のようなものでふたつほどくっついていた。



「…下げ袋と、なんだコレ? あ。思い出した! コレ、皮でできた袋状の水筒じゃないか? 砂漠の人(極めて適当な記憶)とかが持ってるヤツ…ってどっちも何か入ってるし!?」



 何かこの先役立つものが入っているやもと俺はイソイソと中身を確認する。



「………クソが」



 袋の中身には小石。水筒の中には砂が入っていた。どうやら案山子のウエイト代わりだったようだ。



 俺は自身の表情筋が死んでいくのを感じながらそれらを逆さまにして中身を捨てる。



「役に立つものは入ってなかった…が。別段、コイツらは単体でこれから役に立つな」



 *道具袋(小)を手に入れました。

 *皮の水筒(半ガロン:空)を手に入れました。



「おお、中身を抜いたらまたメッセージが…慣れないな。というか、流石に袋や水筒にレベルとかは無いんだな…って半ガロン? ま~たややこしいなあ…。ガロンって何の単位? テンガロンハットの十分の一、さらにその半分ってこと? 少なっ!?」



 俺はしげしげと物珍しいその皮の水筒を眺める。飲み口は黒っぽい金属製。蓋は紐のついたコルクだ。横から見ると…涙型ってよりは●イズリーの柄みたいな形だ。中身が抜けて今はペッチャンコだが、結構デカイ。俺のヒップに近い面積がある。結構入るんじゃないか?



「ジーパンにベルトしてて良かったなあ…良し、ちゃんと付いた」



 俺は革鎧のスカートとシャツをまくって、自分の腰のベルトに留め具を潜らせる。



「ん? 案山子のズボン。下のポケットにまだ何か入ってる? 細長い…ゴミかな? 枝とか…」



 相手が案山子…もはやその名残は頭部のみだが、遠慮は要らない。俺はロングブーツから脚だった棒と一緒にズボンを完全に引き抜いてモモ辺りにあるポケットをまさぐる。



「なんじゃコリャ…!?」



 ポケットから出てきたのは何やらメッキっぽい金属製の小さな棒だった。長さは十センチくらい。先っぽに赤い色ガラスの玉のようなものが付いている。



「なんかマッチ棒みたいだな」



 *真鍮のティンダーロッド(15)を手に入れました。



「は? てぃんだあ?」



 ☞真鍮のティンダーロッド

 分類:マジックアイテム

 残り使用回数:15/20

  極小サイズのマジックロッドの一種。直接的な攻撃能力は無い。

 特殊効果:点火

 


「おほっ!? マジックアイテム!キタコレ!!」



 なんと本当にマッチだった!しかも、魔法の杖らしい。残り使用回数も15回も残っている。…何故、既に5回分消費されてるのとかは、この際どうでも良いだろう。



「良かったあ~。俺、キャンプとか、外で焼肉とかする時も●ャッカマンが無いと火が点けられないんだよなあ~。あのサバイバル的な…棒で板擦るヤツとか絶対無理だわ。一度やったことあるしな、キャンプで」



 あの無駄な時間といつまでも熾きない燻火…あの虚無感は、もう俺は味わいたくない。



「コレがあればダンジョンの中でも火が熾せる。明かりも大丈夫だろう! …問題は松明か。ってそんな丁度良いものなんてその辺に落ちてる訳ないか? ……あ。あった」



 俺の足元の案山子先輩が「…ええんやで」と俺に語り掛けてくれている。



 俺はそれから案山子の献身的な廃材利用により、●イクラも真っ青なクラフト力を発揮して手製の松明を3本ほど作成する。と言ってもレシピは極簡単。素人の俺が松脂なんてものを採取できるはずもないから、良く燃えそうな案山子先輩のズボンをビリビリ破いて上腕骨だったもの2本と大腿骨らしきものにグルグル巻き付けただけの代物だ。



「流石にこれ以上、何も落ちてなさそうだな。欲を言えば武器か…ダガーの一本でもあれば心強いが。まあ、無理そうなら直ぐにでも引き上げよう」



 俺は早速、松明に火を点けようと尻ポケットに入れていたティンダーロッドの先端を近づける。


 

 無論、何も起きるはずもなく。



「…どう使うんだ? ええい、男ならっ……ファイア!!」



 ……しーん。ですよ。


 わっはっは…虚しい。



「じゃあ。てぃ、ティンダー?」



 俺がゴニョゴニョとそう呟くと、棒の先端の赤い部分が一瞬だけオレンジ色に光ったかと思えば布に火が点いた!



「おお! 凄いぞ、異世界版●ャッカマン!」



 *ムドーは真鍮のティンダーロッドを使った!

 *真鍮のティンダーロッドの残り使用回数は14です。



「なるほど。アイテムを使うとログ・メッセージもまた出ると…」



 兎に角、松明に火は灯された!



 遂に俺がダンジョンへと挑む時が来たのだっ!



「…行ってくるよ。案山子先輩」



 俺は足元の…ある意味では先人に対して軽く頭を下げると、ひとつ鼻息を大きく噴き出してからダンジョンの底なしの闇へと身を躍らせたのだった。



 

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