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Ⅰ*21 オークの村の人間族~急に仲良くなるオークの男達



『…………。ねえ? アンタ、意味わかってないでしょ』

「え……はい?」



 俺は下らない事で見栄を張らないナイスガイだ。


 わからない事は素直に「わかりません」と言えるジャパニーズなのだ。



『『はあああああ~』』



 緊迫していた空気が霧散し、皆が皆盛大な溜め息をついて崩れる。


 てかなんで皆してそんな真剣な顔してたんだろ?



「え、なに? じゃあ要らない?」

『あっ!?』



 俺がピンキーの手元からヒョイとタリスマンを取り上げると鬼気迫る表情で毟り取られた。



『べ、別に要らないとは言ってないでしょ!』

「……売るなよ?(転売禁止)」

『う、売らないわよっ! ふ、フン…まあ、アンタがそこまで言うんなら貰っといてあげるわ。一応ね? まあ、絶対に無いけど? うん。そうよ』

「なんそれ?」



 何故かピンキーが顔を赤らめながら大事そうに俺のタリスマンを胸に抱いた途端…。



『あ゛ぁ~!? ピンピンがムーどんの一番取ったあ~!!』

『ちょっ!?』



 急に始まったピンキーとセロリのキャットファイトは中々の迫力。


 ほほう。オークはパンツ……いつの間にか影が出来ている事に気付いたので顔を上げるとパセリが俺の目の前で仁王立ちしていた。思わず後ずさると、微笑むローリエ。 しまった!回り込まれた!



 …………



 ☞ドードーの骨飾り(未付呪,工匠レベル2)

 分類:アクセサリー

  磨かれたドードーの骨と緋色の羽根をあしらったネックレス。ストーンは無の魔石(極小)。

 特殊効果:無し



『わあい! ムーちゃんありがとっ!!』

『わあ~キレ~』

「ギュッ…(無言で俺を抱きしめるパセリ。喜んで貰えたのか?)」



 結局、三人娘にも強請られて作ってやった。まあ、<無の魔石>は換金性がありそうだが数はあったからな。ドードーの骨を使った分なんか大袈裟なモンになっちまったが…逆にセロリ達は嬉しそうにジャラジャラさせているから…コレでいいか。



 さて、やっとこさ静かになったが、この場に残ってる他の女オーク達はどこかソワソワしている。別に強請ってくれても簡単なものなら作ってやってもいいんだが?



 …いや、どうやらソワソワしてるのは遠巻きにしている男のオーク達も同様らしい。別に自分用のアクセサリーが欲しいってわけじゃないみたいだが…はは~ん?



 俺の近くで羨ましそうにセロリ達の首飾りを眺めている女達はチラチラとその男達の方を見てもいる。良し、ここは俺が動くべきだな?



「ちょっと、喉が渇いたなあ~? 俺、ちょっと水飲んできてもいい?」

『(ぽぉ~…)』

「おい! いいのか!?」

『ふえゅ!? み、水ね? 良いわよさっさと行ってきなさい!』



 どんだけ嬉しかったんだよ。ぼやっと眺めちゃって…まあ、そこまで気に入ってくれたんなら良いけどさ?



 俺はアクセサリーに必要なアイテムだけを持ってその場を離れた。


 この村の端っこ…というか入口から見て村の裏になるのかな? 小さな滝と泉があるんだ。この村の生活用水になっているし、決まった時間に男女別に行水したり水浴び場になっている。



   ※



 俺が泉のほとりの平岩に腰を掛けてから数分としない内にゾロゾロとオークの男達が鬼気迫る表情で歩いて来た。



 あっという間に囲まれてしまった。


 その中の一人が俺の前にズイと身を乗り出す。一瞬、ヤバイ。ボコボコにされる、と正直思った。



『頼むっ!』

『妻の為の飾りを作ってくれないか!』



 揃って頭を下げられて思わず俺もポカンとしてしまったぜ。



「あ~こうやって直接話すのは思えば初めてかもな? 俺はムドーです。よろしく」



 俺達は泉の飛沫を若干感じながらもその場に車座に座って挨拶を交わす。


 この場にやってきたオークは八。皆、この村の戦士で妻帯者だという。聞けば、この村で独身なのはピンキーとアユル。それにあのオーク三人娘だけらしい。


 まあ、この限定的な空間の集落じゃあ大方もう決まった相手がいて家族を構成しているもんか。



「そういや、小耳に挟んだんだけど。男でもこのビーズ編むんでしょ? それを自分の奥さんにあげた方が喜ぶんじゃない? 俺が作ったもので良いのかい」

『うむぅ』


 

 俺がオークの男達から受け取った大量の革紐とビーズらしきもの。有象無象の磨いた小石に獣の指の骨のようなものが皮袋一杯に詰まっている。ちゃんと穴が開けてあるな。白い粉を掘り込んで模様がついているものまであったよ。



『それが一番だが、俺達オークは手先が器用じゃないんだ』

『イートウの息子が意外な趣味を持っておったとはなあ~? まあ、アイツは女々しいなどと隠しておったようだが』

『そりゃあ、妻もそれなりに期待してる節はあるが…全くもって完成した試しが無いんだ、恥ずかしながら。俺達はずっと村に居るわけじゃないしなあ』



 他の面々もうんうんと頷く。


 現在、俺の前に座っているのがこの村でもイートウのオジサンに次ぐベテランの戦士の三名。年齢もほぼイートウと同じくらいだそうで、ポロさん、タイムさん、アジーさんだ。


 他の五人はアユルと同じくらいの歳に見える比較的若いオークだった。


 ポロさんはなんとセロリの父親。タイムさんはローリエの。アジーさんはパセリの叔父にあたる人物でしかもイートウの妻であるマンサさんの実の兄でもあるらしい。はえー世の中狭い…ってそりゃそうだ。



 聞けば、ちゃんと妻に感謝の気持ちを示す事が重要であり、最も肝心なのはそのブツをどんな手を使っても手に入れることこそオークの男に求められる器量、との談。



『…なに、タダでやってくれとは言わん。これでも俺は戦士だ、見返りはちゃんと用意している』

『ポロ!? お前…それは!』

『長年自分の嫁子供にも黙ってたのに…流石、戦士だな!私だって見合った代価を出すぞ!』

『俺も!』

『俺もだ!』

「お?」



 ☞氷の魔石(中)

 分類:マジックアイテム・パーツ

  このアイテムは単体では使用できない。他のアイテムと組み合わせることで他のアイテムを製作可能。氷属性の冷気を宿した中サイズの魔石。氷属性のマジックアイテムの根幹を為す有用な魔石と言える。



 ポロさんが決死の表情で出したのはゴルフボールくらいの大きさのまるでダイヤモンドカットされた氷そのものの様に見えた。石の表面が濡れているように思ったが乾いている? だが、触れると確かに冷気を感じる。不思議な石だな。



「いいのか? 随分な品に見えるけど」

『いいさ。昔、俺が他のダンジョンに遠征した時に偶々手に入れた品さ。確かに価値はあるんだろが、商人が来た時にもイマイチ尻込みしちまってな。これ以上、俺が持っててもしかたねえしさ…それに、貰い過ぎだと思ったんなら(セロリ)の分もコレで勘弁してくれや』

「わかった。それじゃあ一丁、気合い入れてやるかね!」



 俺はポロさんの大事な品であったろう<氷の魔石>を受け取ると大事に腰の袋に仕舞い込んだ。



「さて、どんな感じにする。首飾りにするかい?」

『あ~…情けねえけどお任にせするよ。あ、ただし魔石は使わないでくれないか? 一応、俺の愛女房なんでな…へへっ』

「なんで魔石は駄目なんだ? まあ、そこまで在庫も無いけど」

『あ~…知らなかったんか。ちょっとついて来いよ』



 俺達は男だけでゾロゾロと歩きだって、岩場の影から村の女達をの様子を覗き見る。


 なんだ、この怪しい集団は?



『ホラ、あのセロリの隣に居るのが俺の妻のエシャロットだ。美人だから一目で判るだろ?』

「ほう。似てるな…」



 ポロさんが指さす方向にはセロリに俺が作ったネックレスを自慢されている女のオークが居た。確かに、セロリと同じくスラリとした美人だな。…恐らくだが、セロリはこの親父(ポロ)さん似だと思う。特に性格が。



 その他の面々にもそれぞれの奥さんを教えて貰い、女達から勘付かれる前に泉に退避した。



「じゃあ、早速エシャロットさんのヤツから…そうだなあの出で立ち、花を思わせるね」

『おお~わかってるじゃねえかよ、ムーちゃん(・・・・・)? 美人だからってちょっかい掛けるなよ? 手を出すならセロリにしろ』

「出さん。 そうだな…あ~“立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花”だったかな? ん~そうだな。この花にしよう! 丁度ビーズも一杯あるし。いっそ簾絵のように…こうこう、こうっと」

『『す、すげえ速さだ!?』』



   ※



 胸元からジャラリとビーズを鳴らしたエシャロットがポロに向って抱き付き、公衆の面前だというのにキスの雨を降らせている。



 アレ? セロリのヤツ、意外と中身も母親似なのかも。



『素敵っ! ポロありがとねっ!』

『へへっ…そう大したことはしてねって』

『へえ~凄い綺麗じゃない。編んだビーズで柄を描いたのね? コレは…ああ、思い出した。地上の花で百合(フラダリ)って名前のヤツね。花売りから聞いた事あるから知ってたわ。 それにしても器用な奴ね…』

『……ママのヤツの方が凄い気合入ってない~?』

『でも、セロリ。私達は結局甘えてタダで作って貰えたんだからあ~。きっとポロさんが向こうで頑張ってお願いしたんだよぅ?』

『む~』

「…………(ジーっ)」



 パセリからの視線を受けて俺は咄嗟に岩陰に隠れる。



「良し。成功だ! ポロさんの顔が緩み切ってるからな」

『よっしゃ! 俺達もポロに続くぞ!』

『はあ~コレで嫁さんから偶にぶつけられる催促の目からやっと解放される。感謝するぞ、ムドー! これから困った事があれば何でも言ってくれ!』

『俺達もだ!』



 俺は他の男達と共にその様子を見て互いに笑みを浮かべて頷き合った。



『何しとる! お前ら!!』

『げっ。イートウ…』



 俺達の背後には疲れた顔のアユルを引き連れて凄むイートウの姿があった。



『まったく、戦士たる者がコイツを連れだして好き勝手しおって…!』

『『…………』』

『コイツが迷宮を破壊した下手人である事を忘れ…ってお前達、その手に持ってるものはなんだ』

『……チッ! 相変わらず固い奴め』



 目敏いイートウにタイムさんが隠しもせずに舌打ちする。



『妻へのプレゼントだよ…』

『なに? そんなものは自分達で用意せんかあ!』

『そんなの無理に決まってるだろ。 見ろよ? あの女達の喜びようを』

『ぐっ…』



 流石にイートウも思う所があるのか、たじろいだようだ。



『ムドー、ありがとうよ。俺達はこれから妻へ愛と感謝を示してくるが、邪魔するなよ?』

『おい、ちょっと待て! そ、それを少し見せて、くれないか?』

『嫌だね! 欲しいんなら、ムドーに頭をさげるんだな? この堅物オークめ!』

『や~いや~い』

『お前らぁ!私を馬鹿にしとるだろお!?』

『ち、父上…落ち着いて下さい』



 掴み掛かろうとするイートウをさらりと躱したオークの戦士達は俺の作ったビーズ編みを手に愛する妻の下へと走り去っていく。とても綺麗なシーンだなあ。



『ぐぬぬ…』

『父上、ここはひとつムドーに頼んではいかがです?』

「欲しいんなら作るよ? マンサさんには世話になってるしな」



 村の方から女達の嬉しそうな声が聞こえてくる。イートウの表情が苦渋に歪む。プライド高いなあ~。



『要らんッ! マンサはそんな浅い女ではない!早く広場の馬鹿騒ぎを治めるぞ!!』



 ズンズンと歩いて行ってしまうイートウさん。何しに来たの、あの人は?



『……ムドー』

「どぅした?」

『ひとつ、頼みがある…』



   ※



 翌朝。俺に向った頭を下げるイートウの姿があった。



 なんでも、自分だけ俺のアクセサリが貰えなかったマンサさんを見て他の女衆から一晩中なじられたようだ。まあ、シカタナイネ?



 でも、大丈夫だよ、イートウさん?


 ちゃあんと息子のアユルから頼まれて作っておいたからさ?



 …それにしても、この村の代表なんだでしょ。苦労してんなあ~俺には無理だな? パスで。



 その日から、少しだけイートウさんの俺に対する態度が軟化した気がする。


 後、単純に俺に話す村オークの面々に対しての愚痴が増えた。



 

【オークルマール先生のQ&A】

Q:村の女達はどんな事で盛り上がっていたんですか?

A:ふむ。良かろう。丁度ここに儂が盗ちょ……記録した音声がある。再生してしんぜよう。


   ※


『うぎぃ~。やっぱりピンピンに一番持ってかれたあ~』

『仕方ないよぅ。だってムドーもピンキーも私達オークよりも同じモンスターに近いって事でしょ? それなら早く仲良くなっちゃうんじゃないかなあ~?』

『……(コクコク)』

『それな~。でもさ!それなら私がムドーの二番になるしかないって事だね!決まりっ』

『むむぅ~流石にそれは勝手だよぉ~! 私だってもっとムドーと仲良くなりたいもん!』

「ギュウウウウウウ…!」

『うぎ。ちょっ…パセリ、潰れる潰れちゃう!!ぎゃああ~(メキメキ)』

『パセリちゃん? そ、そんなに怒らないでぇ~ああああああああ!!(ブギュル)』


   ※


 以上じゃよ。

 …ここから先はちょっと刺激が強くての?


 一応、ホラ。この作品って全年齢対象じゃし。

 心配せんでも、二人の安否は次話で分かるんじゃよ。さらばじゃ。

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