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Ⅰ*20 オークの村の人間族~アクセサリーを(半強制的に)作ろう!

改編作業に伴い、前30・31話を統合いたしました<(_ _)>


拙い(本当に内容も文章の誤字脱字もw)作品ではありますが、ブックマークや高評価が頂ければこの阿呆めはますます調子に…いいえ、やる気が持続致します!

 なので、まあまた明日読んでやっても良いんよ? というそこな読者様。なにとぞ、ブクマと高評価めをお願い致す次第です! では。<(_ _)>



 そして夜が明けた!



 ……いや、明けたのか?



 ダンジョンの中だと時間間隔が狂いそうになる。俺は単に腹時計や地上と行き来をしてた為にまだ正常だろう。



「そういやさ? ダンジョンのモンスターって時間間隔ってあるの?」

『そりゃあるわよ。私達、オークはまだ表層に住んでるし…この燐燈(ランプ)。光虫の(カプセル)なんだけど、コレって正確にはモンスターじゃなくてダンジョンの亜生物ね』

時限式(クロック)モンスターと言ってな。一日中ずっと光ってるわけじゃない。昨日もオークルマール様が帰った後に村の灯りが弱くなって薄暗くなったろう?』

「あ~…確かに?」



 ピンキーが微妙にその光源を気持ち悪がった俺にわざとらしくそのランプを近づけ、アユルがそれを止めさせた。



 俺は家に居れてもらえず家の外、広場での雑魚寝(毛皮は貸して貰えた)だった。



 が、泥酔からの爆睡というありきたりなコンボをキメたデカドゥの爺さんも一緒で兎に角イビキが酷かった…。


 なので、俺はマトモに眠れず。村の中をウロウロしてたらイートウさんに二度ほど注意を受けてしまったんだ。



 俺の目は完全に闇を見通せるようになったが、流石に明るい暗いの判別は出来る。


 恐らく体感時間で五・六時間ってとこかね?

 それがオーク達にとっての消灯時間…夜というか寝る時間なんだろうな。



『アタシ達は暗くなって危ないから村の外に出ないけど…必ず寝るわけじゃないからね~』

『…………(コクコク)』



 セロリによるとオークの眠りは意外と浅いようで、続けて四時間寝るかどうか。らしい、なので日に二度寝る事が多いんだとか。


 昼寝がデフォとは何とも羨ましい話だな。



 隣のパセリもコクコクと頷き肯定してくれている。



「ところで、ロリィー(・・・・)とアユルがお目付け役で一緒に来るのはいいとしてさ。なしてセロリとパセリも付いて来たん?」

『ロリって言うな!!』

『だって、また何かムーどんが面白い事して見せてくれるんでしょ?』

『……(コクリ)』

『流石に戦闘不可(レベル・ゼロ)のセロリを連れてくるのは危ないから止めたわよ。まあ、パセリは女の子だけど、イートウと同じレベル6だから。レベルだけならアユルより高いのよ』

『実際に強いぞ。女だったのが惜しい、と父上は常々言っているからな…』



 俺達は現在、第一階層に居た。



 目的は俺が置いて来た素材アイテムの回収。



 何故か臨時パーティを組んでしまっているが、構成は…オークの女家事手伝い、レベル0。オークの戦士、レベル5。オークのピンクロリ、同じくレベル5。オークの女戦士レベル6。そして、種族不明(人間希望)の無職、レベル2の構成である。偏ってんな~。


 以外にもピンキーのレベルが5と高いのは意外だったな。



「あった!」



 見つけた。俺が残したアイテム達よ! 一日振りだな?



『よく溜め込んだわね…殆どドードーからの素材ね』

『うわあ~!フカフカ~(集めた羽毛の塊に突っ込むセロリ)』

『…………(それを羨ましそうに見るパセリ)』

『ちょっと、止めなさいよ! 汚れたら売れなくなっちゃうでしょ…』

「待て待て、まだ使い道があるんだから売んなってば!」



 *ムドー達はアイテムを回収しました。



 *ドードーの骨(27)

 *レベル1の羽根(61)

 *レベル2の羽根(18)

 *羽毛の塊(17)



 五人で分けて持っても結構な量だな。人数がそれなりに居て良かった。



『それにしても、全部綺麗ね…。剥ぎ取りの技能(スキル)でも使った?』

「いんや。地上でこう…斧でスパンッ! …と?」

『はい? そんな事できる訳ないじゃないの。羽根だって毟らないと駄目に決まってる』

「あるぅえ~?」



 ピンキー達には何故かモンスターの死骸からアイテムを得る方法が通じなかった。



 仕方ないので、移動開始。


 

「でも、本当にモンスターが襲ってこなかったな」

『そりゃそうだよ! ホラ!』

「…なにその腕のタトゥーは?」



 セロリがここぞとばかり見せてきた左の二の腕には確かに太い線・細い線のバーコードのようにも見える白い紋様があった。


 伺えば、ピンキーやアユル。セロリにもある。思い返せばイートウさんにもマンサさん、ジョドー少年にもあったな。



「……なんか、俺だけ疎外感がパない」

『当り前でしょ。アンタ余所者なんだもの』

『このテュテュリス様の加護の印象があるからこそ我らオークが他のモンスターから普段、襲われることもないんだ』



 ほおー。


 って、普段って事は…襲われる事もあるって事か?



「その言い方だと完全に安全ってわけでもないのか?」

『当り前だ。そうであれば女達を村に押し込めて窮屈な想いなどさせていない。ん? 丁度良い。アレ(・・)を見ろ』

「へ?」



 アユルが指さす方を見れば、徘徊(ワンダリング)中のドードーが三匹、奥の通路からトコトコ歩いて来た。



「ん? なんだアイツだけ様子がおかしいぞ?」



 三匹の中の一匹。他の二匹が道中すれ違ったモンスターのように俺達に完全に興味を示さなかったのに対して、ソイツだけは足を止めてコチラの様子を伺ってギョロギョロと睨みつけてきた。しかも体色がやや赤い。



『アタックドードーの変異体(ストレンジャー)だ』

「すとれんじゃあー? 俺やピンキーみたいなもん?」

『あんなのと一緒にしないでよ…。変異体(ストレンジャー)は魔獣の突然変異なの。それなりに数が居るわ』

『奴らは百匹に二・三以上は必ず出現する。そして、問題なのは…その個体は迷宮の主、此処ではテュテュリス様の定めた戒律(ルール)を守らない。言わば、魔獣の失敗作さ。しかも、勝手に別のモンスターを襲って喰らう事でレベルが上昇してしまう。放っておくと危険だからコイツらを狩るのも戦士の仕事……来るか?』

「ギョオオオオオオ!!」



 アユルが目つきを険しくした途端、その赤いドードーが奇声を上げながら突っ込んできやがった!


 周りの他のドードー達も“え。コイツ急に何してんの!?”みたいな表情を浮かべていやがる。



 しかも、その特攻するドードーはあからさまにセロリ(・・・)を狙っている。



『パセリッ!』

「シィッ!!」



 *パセリはアタックドードーにレベル1のジャベリンを投擲した。

  貫いた! アタックドードーは死んだ。



 セロリを庇うように前に出た巨躯の女戦士が背中から一本の短槍を片手に取って、全力でドードー目掛けて投擲する。


 哀れ、ドードーは槍に貫かれたどころかそのままダンジョンの壁に縫い留められてしまう。合掌。



 その様を見て他の二匹が慌てて「ガーガー」鳴きながら逃げていった。



『というわけだ。こうやって襲ってくる魔獣がいるので女達が村から出ることは少ない。しかも、レベルの低い者を察知して狙ってくるから性質(タチ)が悪いんだ』

『第一階層だと今はドードーくらいしかいないけど、第二階層じゃそうはいかないからね。私達も単体じゃ危ない時もあるくらいだから、基本は二人以上で組んで行動するの』

「はあ~…ダンジョンで生きるってのも大変なんだなあ」



 パセリが貫いたドードーを槍ごと担いでドヤ顔をしてくる。



『やったね! ねえ、ムーちゃん!村に帰ったらまたあのドードーの肝? 食べさせてよ!』

「おいおい…お前、今しがた狙われてたやろがい」

『…………(ジュルリ)』



 いつの間にか俺の顔面間近に迫ってきていたパセリの圧が凄かったので俺は承諾してしまった。まあ、コイツとは約束してたしなあ。



「にしても、たった一日だが懐かしい…」

『馬鹿言ってんじゃないわよ。ホラ、早く帰るわよ。今日は料理番だからって残ってるローリエが寂しがるし』

「…さよか。あ!そうだ、お前ら…面白いもの見してやろうか?」

『…アンタの顔以上に面白いものなんてあるの?』



 俺は思わずこの毒舌銭ゲバロリに正義(チョップ)をお見舞いしてやろうかと思ったが、レベル2の無職がレベル5のロリオークに敵うわけがないので我慢しておく。



「あ~…みんな、ちょっとその辺のスライムボールを一匹捕まえてくれる?」

『『……?』』



 最初は何言ってんだコイツ? みたいな顔をしていたが、結局は俺の言う通りにしてくれる皆優しい。



「ほい」


 俺は首を傾げるオーク達に腰の道具袋から取り出したストローリーフ(加熱済み)を一本ずつ渡す。


『何よコレ?』

『確か…ジョドーに投げ矢を作った時に使っていた枝か?』

「実は本来の用途はこう(あくまでこの場では)なんだ」



 俺は手に持ったスライムボールに遠慮なくそれをぶっ刺した。


『ムーどん!?』

『アンタ、何してんの…』

「昨日、お前ってば<スライムボールの抜け殻>に興味あったろ? それの作り方を教えてや…」

『早く教えて』



 食い気味に聞かれたのでシンプルに返す。



「吸うんだ」

『……は?』

「吸うんだよ。下品な音を立てて…」

『アンタ、わざと言ってるでしょ?』

「仕方ない。先ずは俺が実践しよう。(すぞぞぞぞぞぞ…)」

『『ッ!?』』



 何故か急に黙るオーク達。


 どぅした? たかがスライムを飲んでるだけだぞ?



「ぷふぁ! という感じでだな…」

『待ってよ!? なにスライム飲んでんのよ!?』

『まさか…本当に昨日言っていたことを実践して見せるとは…』

「意外とそんなに悪いもんじゃないんだけどな」

『し、仕方無いわね…』

『おい、本気か?』



 少し揉めたようだが、結局は皆で一斉にスライムを試飲することになったようだ。



『『ぶべばぁ!?』』



 が、見事に吐いてしまった。おい、スライムの中身を粗末にするんじゃない。



 ちなみにパセリだけは全く平気だった。思ったよりもスライムの味が気に入ったのか、俺に何本かストローをねだってくるくらいだ。


 勿論、俺は笑顔で「同士よ」と言いながらストローを渡して熱い握手を交わす。



「コレで下準備は終わった。次の部屋へと移動する」

『ゼェゼェ…あ、アンタ。あの皮の数分だけコレを飲んでたの? 神経を疑うわ…』



 意外と食わず嫌いなんだな、オークってヤツは?



   ※



『こ、こう? ムーちゃん…?』

「そう、その穴を覆うようにスライムボールの皮を張り付けるんだ」

『この玄室は…確か眠りの霧の仕掛けがある場所なのでは?』

『結局、何がしたいのよ?』

「まあ、見てろって。セロリ、ちょっとこの壁の出っ張った部分を押してくんない?」

『ココ?』

『おい待て! 眠りの霧が…!?』



 セロリが部屋の入口付近にある壁の彫刻をガコっと押し込む。


 そうだ。


 この部屋こそ第一階層にもう一カ所ある催眠ガスのトラップ部屋だ。



(ボシュウゥ~)

『なんだあ!?』



 部屋の中央の床から急に出現したスライム風船(催眠ガス入り)に度肝を抜かれたオーク達。


 どうやら、俺のちょっとしたサプライズは成功したようだな。



 あ。セロリ、はしゃぐ気持ちはわからんでもないが。その風船で遊ぶのはちょっと…?



   ※



『なるほど。コレは強力だな…』

『すご~い!』

『……!(コクコク)』

『どうりでヘナチョコなアンタがこうして生き延びれた訳ね』

「ヘナチョコなんて言葉、久し振りに聞いたんだけど?」



 現在、俺達は早速作ったスライムバルーン(催眠ガス入り)の効果を実証中だ。



『アンタ、この為にダーツなんて作ったんだ?』

「そりゃあ近くで割ったら俺も半日寝ちまうからな~(しみじみ)」

『コレならアイテム製作能力に乏しいオークでも作成可能だな…是非とも第二階層でも試用してみよう』

「でも第二階層の魔獣ってドードーよりもレベル高いんだろ? 多分、抵抗するんじゃないかな~」

『確かに。だが、試してみる価値はある!第二階層には主に<バウンドウルフ>、<アシッドビースト>が棲息している。バウンドウルフは基礎レベル3だが常に群れで行動するし、アシッドビーストに至ってはレベル5だ。我々を攻撃する可能性のある変異体(ストレンジャー)が出た場合は戦士でも数人が必要になる。だが、このスライム……』

「スライムバルーン(※巻き舌)」

『バルーンの有用性は高い。父上達に進言すれば、少なくとも今よりはお前に対するケン(・・)も取れるだろうさ』

「ダーツが必要になればまた作るよ」

『…ありがたい。投げ矢ならレベルに関係なく使えるからな。最悪、村の女子供でも使える』

「そうなのか?」

『ええ。パセリのジャベリンもそうだけど、アイテムを使う(・・)んじゃなくて、投げる(・・・)んならレベルに関係ないの。まあ、結局は膂力に頼るからレベル差はあからさまに結果としてでるけど…』



 そんな会話をしてる内に、本日四回目の昏睡実験を終え、俺達はオークの村へと帰還する事に。



『ねえ!ちょっと待ってよ。どうせならもう二匹くらいドードー持って帰ろうよ!』

『そうね。私も久々にドードーが食べたくなってきたし…チョット、アンタ持ってなさいよ? 元はアンタのものだし、文句ないでしょ』

「おぶっ」

『じゃあセロリのは……アーちゃん、よろしくね?』

『…………』



 ピンキーとセロリはここぞとばかりに勿体ない精神を出してきて、俺とアユルの顔が隠すようにドードーの素材を押し付けた。


 そして、第二階層への階段のある部屋に居合わせた哀れな昏睡中のドードーに近付くとおもむろにピンキーが両手でドードーの首を持ち…。



(ぼりんッ(※首が一回転した音))

『ピンピン、コッチも~』

『はいはい…』

「グュ!!」



 二匹目は初めて聞いたような静かな断末魔を上げて逝去された。合掌。


 というか、怖ぇ~。


 なんで、真顔でそんなことできんの?



「というか、シンプルな疑問。いいですか?」

『何よ、気持ち悪い言い方して』

「お前らがトドメ刺したドードーだけどさ…なんで消えないの? なんかコツがあんの?」

『はあ?』

「今の二匹もかくやだが、パセリが仕留めたのは完全にダメージによるものだろ?」

『……モンスターがモンスターを殺したら、ダンジョンに吸収される訳ないでしょ?』



 俺は大量の素材を抱えながらもヨタヨタとピンキー達に近寄って〆られてしまったドードーを見る。


 こりゃあ…!?



 ▼名無しの鳥獣

 ▽レベル2

 ▽種族:アタックドードー

 ▽武器:無し

 ▽鎧:無し

 ▽ヘルスポイント:死亡/5

 ▽アーマーバリュー:2/2

 ▽マインドパワー:不明/0



 ああ、なるほどね。道理で俺の言葉が通じないわけだわな。死んでるが、そもそもアイテム扱いになってない。



 だが、こうしてモンスターのステータスを見るのは初めてだな。ふむふむ。死亡状態だとこう表記されるのか…。


 ん? MPが不明ってのはどういう意味だ?



 まあ、またオークルマールの爺様にでも聞いてみるか。



「部外者とそうでないもので違いがある、ということかな」

『『???』』



 結局、俺の話は理解されないまま村へと帰還したわけだが。



『ただいま~!』

『アラ! ドードー? いいわねえ』

『ローリエ!コレお土産だよお。ムーどんのお陰で楽々獲れちゃったよ! ねえ捌いてよう。あ、パセリも手伝って?』

『………(コクコクコク)』

『ちょっと待ってパセリ。悪いけど、アンタのと交換して』

『…?(コクリ)』



 何故かピンキーのヤツ、パセリが貫いたあの赤っぽいドードーとバクったぞ?



(どさりっ)

『はい』

「はい?」

『あげるわ、このドードー。この際だから実際に見せて頂戴。ホラ、今回は特別に私の斧も貸してあげるから』



 ▼赤い害鳥

 ▽変異レベル1

 ▽種族:アタックドードー・ストレンジャー

 ▽武器:無し

 ▽鎧:無し

 ▽ヘルスポイント:死亡/8

 ▽アーマーバリュー:0/2

 ▽マインドパワー:不明/0



 …害鳥て。そげな可哀想な名前にしなくとも?


 レベルが“変異レベル”に変わってる。これが変異体の表記か…。



 ピンキーは俺の前に穴が開いてしまったドードーを放って寄越すと、ぶっきらぼうに手斧も渡してきやがった。



『おい…ピンキー?』

『大丈夫よ。仮にコイツがトチ狂っても私はレベル5。コイツはレベル2。私が本気を出せば負けっこないわ』

『わかった。俺は父上にあのスライム……』

「『バルーン』」

『……それの事を父上に報告してくる』



 素材アイテムを脇に置くと少し恥ずかしそうにしながらアユルは去っていった。


 意外とアイツ、茶目っ気があるタイプなんだな?



「残念だが、上手くいく保証はないぞ? いつもの状況と違うんだ。このドードーはアイテム化してない」

『そこがよくわかんないの。なんで、地上で死んだモンスターがアイテム扱いなの? 死体は死体でしょ?』

「だから、単に首が切れただけって怒んなよ? んにゃら…ドッセイ!!」



 俺はジト目のピンキーを押し退けるとドードーの首目掛けて手斧を振り降ろした。


 そして、首が切断されるというその瞬間にまたあの謎の光が…!

  


「ジャストミートぉ!」

『きゃあ!?』



 *赤い害鳥の死体を破壊しました。

 *ドードーの生肉(2)を手に入れました。

 *鳥の骨(7)を手に入れました。

 *レベル1の羽根(12)を手に入れました。

 *緋色の羽根(4)を手に入れました。

 *羽毛の塊(5)を手に入れました。

 *ドードーの肝(2)を手に入れました。

 *ペリドット(極小,1)を手に入れました。



 成功だ!


 結局、消えてしまったのは俺がダメージを与えてHPをゼロにしてしまった場合だけのようだ。コレならわざわざ生きたモンスターを地上へと引きずっていく手間が省ける。



『なにしてんの!? え! 光って爆発…? アンタ、本当は魔術師なんでしょ!』

「フッ。高度に発達した技術は魔法と見分けがつか…ぐええッ!?」

『アンタ、本当に何者なのよ!? 普通は首を刎ねたとこでこんな事にならないってば。見なさいよ!』

「おい、苦しいってぇ~…」



 危うく俺は興奮したロリオークに絞殺されてしまうところだった…。


 村のオーク達はポカンと呆けた表情でコチラを確かに見てるな?


 やはり、俺ってば無自覚ズル(チート)しちゃってる系主人公だったのかも。


 炊事場では絶賛ドードー解体中だったが、やはり普通に捌いているなあ。パセリなんて血抜き中のドードーを抱えたまま固まってしまっている。



「ケホケホッ…でも、べ、便利でいいじゃんか?」

『便利ってアンタ…どうやって血の一滴も出さずにここまで綺麗に解体できるってのよ? ていうか肉ぅ!? コレどこの部位の肉なのよ!? この肝も一瞬で血抜きされてるし、綺麗過ぎて気持ち悪いくらいよ…』

「肝、だけに?(ニヤリ)」

『煩い!この馬鹿ぁ!!』



 俺がウッカリ返してしまった手斧を振り回されそうになったなので、正直言って危なかった。俺としたことが迂闊ムーブだったぜ。



「ん、なんじゃコリャ? …いつも無の魔石じゃないな」

『ああ!? ちょっとお!それ魔石じゃないじゃない、宝石(・・)!? 返しなさいッ』



 ☞ペリドット(極小)

 分類:マジックアイテム・パーツ

  このアイテムは単体では使用できない。他のアイテムと組み合わせることで他のアイテムを製作可能。宝石と俗に称される有色魔石の一種。金を帯びた緑色が美しい。



「このドードーは俺にくれたんだろ? 嫌だよ~っだあ!(※二十三歳独身)」

「…ッ!? グルルルルゥゥ~!!(※犬歯剥きだし)」



 やべっ。


 ついに“(オーク語)”じゃなくて威嚇する唸り声を上げ始めちまった。


 こりゃあ、相当怒らしちまったみたいだなあ~…どうしよ?


 あ! そうだ!



「……おい、ピンキー。ちょっと待ってな」

「グルルゥ~……ルゥ?」



 やってもいいが、ホイと渡すだけじゃつまらないだろう?



 ◎アクセサリー(首飾り)

  ○ストーン:ペリドット(極小)(1)

  〇台座素材:スライム(1)

  ○オプション:緋色の羽根(1)

  ○紐(1)



   ※



「よし!できた。 なんかちょっとした車のウインドウに飾る魔除け感が出てしまったが…いい感じに仕上がったんじゃないか?」



 やはりスライムボールの抜け殻は有用だなあ。加工がし易い上に、仕上がった後はプラスチックと同じくらいの固さにちゃんとなってくれる。俺のデザインはどこかで見たことがある輪の中に蜘蛛の巣のようなものが張ってあり、その下にビーズや羽根が吊り下げられているアレだ。


 今回拘ったのはその中央にペリドットを使用したので、蜘蛛の巣というよりはちょっと厨二にならない程度に適当な紋様を入れたタリスマン風になってしまったが。うん、やはり、石が涙型だったので台座もそれに合わせて良かったかもな。



 ☞橄欖石のタリスマン(未付呪,工匠レベル2)

 分類:アクセサリー

  美しいペリドットをあしらった涙型の御守り。台座は未知の透明素材で出来ている。

 特殊効果:無し



「ものの数分で作れたが、結局ペンダントじゃなくてタリスマンになっちゃった…っておわ!?」

『『…………』』



 気付けば、俺は女オーク達からのほぼゼロ距離熱視線に囲まれていた。



「……わかったわかった。皆ちょっと落ち着こうね。おい、ピンキー?」

『(ブツブツ…ヤバ。こんなの工芸品どころか人間の街の職人レベルなんじゃない? いくらで売れるかな? ブーツ一杯の鈍銀どころか黄金…!? ブツブツ…)』

「くらあ! 聞こえてんのかぁ~?」

「ヒャッ! ハ、ハピ!?」



 アララ。また聞いたことのない声を出しよるよ、コイツ。どんだけあくどい事考えてたんだ?



「…ホラ、やるよ」

『へ…?』

「やるっつってんの! いわゆるプ・レ・ゼ・ン・トってヤツだ。お前には今後色々と世話になりそうなんでな…おい!何だよ!?黙ったまんまだと恥ずぃだろーが! 黙って受け取れよ…」

『………? ッ!?』

『『!?!!』』



 何故か皆がゴクリと唾を呑み込んで凄い表情をしてらっしゃるが…どした?



 もしやデザインがオーク的にノーだったか? あちゃ~…作り直しきかないんだよなあ。


 まあ、石は何とか回収できっかも。



 

【オークルマール先生のQ&A】

 うほほ~い。良い子の読者の癒し担当のオークルマールじゃよ。

 今回から急に後書きに儂のコーナーが始まるんでひとつよろしくの?

 ちなみに、儂は本編とは別の次元から論じておるので割とメタい事も平気で言うから良い子の読者は気をつけるんじゃよ?

 このコーナーでは本編に出たキーワードの解説がメインとなるが、大抵は読み飛ばしても平気な内容じゃから暇なときに読んでくれれば良いんじゃよ。後、割と儂を通して筆者の単なる見苦しい言い訳や愚痴になってしまう場合もあるからそこんとこもオケかの?

 それじゃ一発目のクエスチョンじゃよ!

Q:本文最後で皆(女達)が黙ってしまったのは何故ですか?

A:ふむ。良い質問じゃな。我らがテュテュリス様の迷宮に棲んでおるオーク達じゃが、オークの女子(おなご)共は身の危険性から村から滅多に出ることが無い…つまり、娯楽に飢えておるんじゃな。

 そこで、その女達を慰めるのが磨いた骨片やビーズを編んだりすることで体飾りを自作する工芸趣味なんじゃよ。だから、ムドーめが悪戯に作ってしまいおった首飾りなぞ、村の女達とってみれば垂涎の品というわけじゃ。そもそも今回、第一階層に素材を取りに行った大きな理由、ソレじゃし。

 まあ、黙った理由はコレ以外にもあってのう。

 ペリドットは橄欖カンラン石の一種じゃが、この世界では宝石。つまり魔石の種類の一つとして扱われておる。ただし、この宝石と呼ばれるものには多分な意味が含まれておってのう。ほら花言葉やら誕生石やら色々とあるじゃろう? この石自体にも似た意味があるんじゃが、体色が緑に近い種族ゴブリンとかオークとかにとってこの緑の宝石は“夫婦”という意味があるんじゃよ。


 それを男から女に渡す……もう、説明は要らんじゃろ? やれやれじゃわい。


 ムドーめ。きっと長生きできんぞい?

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