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花は白と黒に囚われる  作者: 小鳥遊 蒼
V 災厄
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46 真の目的

  にやけそうになる顔を、宰相はグッと引き締めた。

 思い通りに事が進んでいることに、表情を緩めずにいろという方が酷というものだ、と心の中でほくそ笑む。


 竜が現れた時点で、王太子殿下もアルフレッド・デラクール騎士も動くことは読めていた。

 デラクールは真っ先にラナ・セルラノの保護に走るだろうし、殿下に至っては、陛下のもとに赴くだろうことは容易に考えられた。

 誰もがラナ・セルラノを探し、竜を止めるよう説得するだろう。デラクールはその意見には反対するだろうが。

 状況が状況なだけに、ラナ・セルラノも何もしないという選択肢は選べない。そして、王太子とともに()()に向かってくる。


 実際には、どのような経緯でここにたどり着いたのかは宰相の知るところではない。知りたいとも思っていないだろう。

 宰相にとって重要なことは、ラナ・セルラノがこの場にやってくること。そこに、()()として殿下もしくはデラクールが付き添えば尚良いくらいに思っていた。

 自らの手でトラの姿に変え、さらにもとの姿に戻した愚息のことは眼中にない。そこにいることすら気づいていないかもしれない。


 一番隊の騎士たちは、彼らの集団の1番後ろに位置し、宰相を真っ直ぐに見つめていた。ラナ・セルラノを安全な場所に、という指令を無視し、この場に連れてきたというのに、誇らしそうに胸を張っている。

 それもそのはず。安全な場所に、という指令事態が嘘だったのだ。彼らの役目は、ラナ・セルラノを人目につかないよう誘導し、頃合いを見て殿下と遭遇させることだった。

 宰相の命令に忠実に従い、任務を完璧に遂行できたことに鼻も高いのだろう。

 そんな彼らの表情ですら、宰相には嘲笑の材料にしか見えない。自分たちも嵌められているということを知らない彼らの表情は、滑稽でしかない。


 宰相がラナをこの場に連れて来させたかったのは、竜にラナを襲わせるためだった。竜に嫌われているというラナが、竜の前に現れ、逆鱗に触れることで、攻撃させようと目論んでいた。

 こんな場所で攻撃されれば、城もただではすまない。城だけではない。王都を含む近隣の地域にも影響は及ぶだろう。

 それこそが宰相の本当の目的だった。

 宰相の目的は、城を滅ぼすこと。ひいては、パルヴィス国を滅ぼすことが真の目的だったのだ。


 たとえ竜の言葉がラナに伝わったところで、敵対する人間に助けを求めることはないだろうと考えていた。

 途中で宰相の目論見がバレても問題はなかった。なぜなら、宰相は竜に服従魔法を使用している。竜を従えているのは、宰相なのだ。

 怒りに狂った竜を前に、手も足も出ないだろう。指をくわえて見ているどころか、その命が残る可能性の方が低い。


 作戦は完璧だった。

 ここまで来れば、裏切りがばれようが、宰相の目的が勘のいい殿下に気付かれようが問題ない。

 宰相は、再び込み上げてくる笑いを必死に堪えていた。

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