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 それからも「ムサシ」対四人の対戦訓練は続いた。


 こっちも相当技能(スキル)が上がったように感じるが、「ムサシ」も上がった。いつももう一歩まで行くのだが、毎回ドロー。


 それでも訓練の成果が出ているのか、その場でへばり込むことはなくなり、全員が食事を摂ってから、就寝できるようになっていった。


 そんなある日、あたしは「ムサシ」に言われた。

「今日の対戦訓練は中止だ。『トスイ』一緒に来てくれ。『セイソ』『ハマカ』『トウカ』はこの部屋で待っていてくれ」


 何だろう? あたしには全く見当がつかなかった。


 ◇◇◇


 「ムサシ」と「トスイ」はそう時間が経たないうちにきた。いつになく真剣な顔つきだ。


 「ムサシ」がゆっくりと口を開く。

「州の政庁が連邦軍に制圧されたそうだ」


 場に衝撃が走る。いや、あたしには初めはピンと来なかった。だが、すぐに理解した。ここは帝国軍の拠点だ。帝国軍の敵である連邦軍が州の政庁を制圧したということは、帝国軍が支配していたこの州への連邦軍の侵攻が本格化したということだ。


「総司令部から政庁の奪還指令が出た。これからここにいる部隊での奪還作戦に入る」


「あ、あの……」

 「ハマカ」がおずおずと手を上げる。

「敵の兵力は?」


「うむ……」

 「ムサシ」が目をつぶり、腕組みをする。


「分からん」


 緊張感が一気に崩れ去り、代わって脱力感が襲った。


 ◇◇◇


「いや、これは冗談で言ってるのではなくてな。政庁には事務員と僅かな数の警備員がいただけで戦闘員はいなかった。そこに凄い数の連邦軍が押し寄せたもんで、相手の数も確認しないで逃げ出したそうだ」


「それで、あたしらに奪還しろと」

 「セイソ」がため息まじりに言う。

「無茶苦茶だね」


 「ムサシ」も言う。

「ああ、無茶苦茶だ」


 ◇◇◇


「せめてもうちょっと正確な敵の数が分かるといいんだが」


「あたしが見てくるよ」

 そのあたしの言葉に場はまたも凍った。

「速さの加護を持っているんだ。見てくるだけなら大丈夫さ」


「なっ、『トウカ』。あんた」

 「トスイ」の顔は青ざめている。


「ふむ」

 「ムサシ」が目をつぶり、腕組みをする。

「よしっ! 『トウカ』。行ってみてきてくれ。ちゃんと装甲服着用して行くんだぞ」


「ああっ、分かった」

 あたしはすぐにその場を飛び出す。


 後で「ハマカ」に教えてもらったが、やはり「トスイ」はこの州の帝国軍に対するレジスタンス組織にいたあたしのことをいろいろな意味で心配したらしい。


 それに対する「ムサシ」の答えはこうだったそうだ。

「今のあいつなら心配ない。連邦軍やレジスタンス組織に捕まるような実力じゃないさ。まあ、あいつ自身の意思でレジスタンス組織に帰るなら別だがな。でも、そうなったらそうなったで、あたしはいいと思っている。あいつのおかげであたしらの技能(スキル)も相当上がった。そんときゃ装甲服は餞別だ」


 だが、その時のあたしはそんな思いにはまるで気づいちゃいなかった。連邦軍の陣容を探ることで頭がいっぱいだったんだ。


 ◇◇◇


 いる、いる、いる なんだこりゃあ。


 ぱっと見だが、こっちにはいない「空撃(エアストライク)」使いが十六。「ムサシ」ほどじゃないにしろそこそこ強力な「砲撃(ボンバードメント)」使いが六。「雷撃(トーピード)」使いに至っては軽く五十は超えてそうだ。


 どうしようかとも思ったが、これが現実である以上、あるがままに伝えない訳にはいかないよな。


 そう思ってあたしはその場を去ろうとした。


 !


 あたしの後をつけている奴がいる!?


 ふっ、他のことならともかく、速さの加護を持つこのあたしについてこれる奴などそうはいない。


 面白い。完全に振り切って、目にもの見せてくれよう。


 !


 おかしい。振り切れない。ピタリとついてきている。そんな馬鹿な。そんなことができる奴は帝国軍にも連邦軍にもレジスタンス組織にも、いやっ、いやっ


 ◇◇◇


 あたしを追いかけてきた影は、あたしの前に回り込んだ。あたしはその姿を見て、ついてこられたことに納得がいった。


 「セッカ」。あたしと同じレジスタンス組織の戦闘員。幸運の加護を持っている。今回はその加護をフル活用して、あたしの針路を読んだのだろう。


「『トウカ』。生きてたんだね」

 そう言った「セッカ」の目には涙が溢れていた。


「あ、ああ、生きていたよ」

 それがその時、何とか絞り出したあたしの言葉だった。


「良かった。本当に良かった。『トウカ』が死んでたら、ボクは……ボクは……」


「……」

 涙ぐむ「セッカ」にあたしは何と言ったら良いか分からない。


「『トウカ』帰ろう。レジスタンス組織に一緒に帰ろう」


「……」

 

「『トウカ』。どうして黙っているの?」


「……」


「ひょっとして、組織が『トウカ』のことを裏切り者と疑っているんじゃないかと心配してるの? 大丈夫。そんなことはこのボクが言わせない。『トウカ』のことを一番よく知っているこのボクが言わせない」


「そうじゃない……」


「?」


「もう帰りたくないんだ。組織には。裏切り者と思われているかどうかは、もう関係ない」


「……」

 「セッカ」は少しの間、沈黙したが、またすぐに口を開いた。

「分かった。見たと思うけど、もうこの州には連邦軍がたくさん進駐してきているんだよ。帝国軍には『ムサシ』という凄い『砲撃(ボンバードメント)』使いがいるそうだけど、絶対に勝てない。もうすぐこの州は解放される。そうすればレジスタンス組織も解散になるよ。そうしたらまた二人で暮らそう」


 

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