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 その後、三日間にわたり、あたしと「セイソ」「ハマカ」は「ムサシ」に挑んだが、善戦はするものの、いずれも撥ね返された。


「こっちも『ムサシ』さんの回避に驚かなくなったけど、『ムサシ』さんもこっちの『サンダン』に慣れてきちまったなあ」

 その時、口火を切ったのは「セイソ」だった。


「この辺で何か打開策がほしいところだね」

 「ハマカ」も同意する。


 「サンダン」が通用しなかったのはきついが、二人が前向きでいてくれるのはありがたい。あたしはゆっくりと口を開いた。

「新しい秘策もある。だけど、やっぱり二人の協力がいる」


「やるっ!」

 「セイソ」は即答した。

「話を聞かせてほしい」

 「ハマカ」も乗り気だ。


「うん。その秘策と言うのは……」


 ◇◇◇


 その日も「サンダン」は使われた。


 「セイソ」が撃ち、「ハマカ」が撃ち、あたしが撃つ。


 それを「ムサシ」は回避せんとするが、ある程度は着弾する。それでも、態勢は崩さず、こっちに向かい、46センチ砲撃(ボンバードメント)を撃ちにかかるが……、今だっ!


 炸裂する「トスイ」の20.3センチ砲撃(ボンバードメント)。たまらず膝をつく「ムサシ」。でも、これで安心しないよ。「セイソ」が「雷撃(トーピード)」を放つっ!


 ◇◇◇


 あたしはまた昨晩のことを思い出していた。


「『ムサシ』(さん)を倒すには、『トスイ』(さん)の力が必要なの。対戦訓練に加わってください」

 声を合わせて頭を下げる「セイソ」「ハマカ」そして、あたし。


 それに対する「トスイ」はあきれ顔。

「あんたたちねえ。今まで何回も『ムサシ』さんにのされた後、誰がベッドまで運んでやったと思ってんの?」


「『トスイ』(さん)です」


「あんたたちが毎日対戦訓練に熱中している間にご飯の用意してたの、誰だと思ってんの?」


「『トスイ』(さん)です」


「でっ、でもっ」

 一歩前に出る「ハマカ」。

「ご飯の準備はあたしたちもやります。対戦訓練始める前に済ましちゃいましょう」


 おっ?


 次に前に出たのは「セイソ」。

「『ムサシ』さんに倒されても三人とも自力でベッドに帰るよ。何なら三人で倒れた『トスイ』さんをかついでベッドに連れて行くよ」


 おっ? おっ?


 何だ何だ、「ハマカ」も「セイソ」も凄い張り切りようじゃないか。


「ふーん」

 意味深な微笑を浮かべる「トスイ」。

「『ハマカ』も『セイソ』も今の言葉忘れるんじゃないよ。約束は守ってもらうからね」


 大きく頷く「ハマカ」に「セイソ」。


「さて」

 「トスイ」はあたしの方を向いた。

「『ハマカ』と『セイソ』の覚悟は聞いた。『トウカ』。あんたはどうなの?」


「あっ、あっ、あたしはっ!」


「うん」


「『トスイ』が加わってくれれば何としても『ムサシ』に勝つっ!」


 「トスイ」はまたあきれ顔に戻った。

「あんたねえ。あたしが加わっても『ムサシ』さんに勝つのは厳しいよ。それにあんたはここから脱走したいんじゃなかったの?」


「そんなことはもうどうでもいいっ! あたしは何としても『ムサシ』に勝つっ!」


 「トスイ」はしばらく絶句していたが、やがて、大爆笑した。

「はっはっはっ、あんた、もうどうでもいいって全くもう。分かった。そこまで言うなら、あたしも参戦しようじゃないの。但し、さっき言ったことはキッチリやってもらうからね」

  

 ◇◇◇

 

 「ムサシ」は「セイソ」の「雷撃(トーピード)」を回避しようとしたが、回避しきれず、命中した。更に「ハマカ」が「雷撃(トーピード)」を撃ちに行く。いけるっ! このまま「ムサシ」の反撃の機会を与えず、一方的にこっち側が撃ちまくれば、今度こそ勝つっ!


 よしっ、「ハマカ」の「雷撃(トーピード)」も命中した。次はあたしの番! っと!


 ぬおっ、不意に来た体への波動。「ムサシ」め、自らの態勢が崩れていることに拘らず46センチ砲撃(ボンバードメント)を撃ってきやがった。


 さすがにキッチリ態勢を整えている時よりは数段威力は落ちるが、それでも46センチ。体が運ばれる。


 だが舐めるなよ。この事態はこっちも予測してなかった訳ではないぞ。こうなりゃ乱戦だ。こっちも態勢が整ってなくとも撃つ! もう順番は関係ない。撃てる奴から撃つ!


 敵味方入り交じっての撃ち合いが続き、気がつけばまたも運動場の一角に大の字になってへばっていた。


 いや、あたしだけじゃない。「セイソ」も「ハマカ」も「トスイ」も、そして、「ムサシ」までへばっていた。


「『ムサシ』さーん」

 そんな中、一番最初に口を開いたのは「トスイ」だった。


「ん? 何だ? 『トスイ』」


「どうしましょうか? こんな全員がへばった状態で敵襲されたら、この拠点イチコロですね」


「むう……」

 少し考えた込んだ「ムサシ」だが、すぐに爆笑した。

「わあっはっはっ、すまん。『トスイ』。今のあたしは妙にスッキリしてしまってな。そうなったら、それも仕方ないかという気がしてならんのだわ」


「そんなこったろうと思いました」

 「トスイ」は苦笑する。


「で……だ。『トウカ』」


 む、何か「ムサシ」から呼ばれたぞ。

「何だ?」


「おまえは見事、このあたしをへばらせた。今度こそこの拠点を脱走するのか?」

 

「ばっ、ばっ、馬鹿を言うなっ!」

 あたしはいきり立った。

「こんなもんで勝ったと言えるかっ! 『ムサシ』がへばって、このあたしがキッチリ立っているのでなければ、勝ったとは言わんっ!」


「ぷっ、くくくく」

 くっそう。「ムサシ」め、何笑ってやがる。

「ぶわっはっはっはっ、やっぱおまえ面白い奴だなあ。分かった分かった。おまえが納得いくまで相手してやんよ」


「当たり前だ。馬鹿」


 

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