審問の扉で大騒ぎ
サクラの意識が和利の中でバタバタしていたと同じころ、審問の扉の前でも一つ問題が発生していた。
審問の扉前で、門番らしきものが立っている。サラリーマン妖精に比べると大きく、背の高さは1mちょっとぐらいだが、体格はしっかりとしているが、背中には当たり前のように羽が生えている。あまり想像したくはないが、マッチョな妖精。
背広姿ではなく、プロテクターのような防具に身を包んで、頭にはヘルメットのような帽子。顔を覆う透明なフェースガードもつけている。いかにも門番という感じなのだが、手に持っているものは、剣や槍ではなく、網。持ち手が付いている網。まるで虫取り網のようなものを持っている。なぜ網なのかというと門番の仕事に関係がある。
本来、審問の扉には、案内担当に誘導された魂だけが近寄ることが出来るのだが、案内担当に誘導されず、彷徨ってしまった魂(はぐれ魂という)が審問の扉を通過しようとすることがあるため、はぐれ魂を捕獲するための網である。門番の仕事はそのはぐれ魂を捕獲し、所定のフロアへ戻すことが仕事であった。門番に捕獲されるはぐれ魂のほとんどが、元科学者やある程度学識のある魂、興味本位で扉を見てみようとする魂ぐらいなので捕獲は簡単だ。
審問の扉の門番は5体が常時待機。うち4体が捕獲兼フロア送還担当。1体がリーダー的役割で、これを一つの班としている。万一、なんらかの理由で2体が魂の総監等で審問の扉をを離れることになった場合、リーダー的役割が門番詰め所へ報告し、予備の2体を連れて審問の扉に戻る規則となっている。ま、2体が同時に離れることなど滅多に起こることではない。が、今は15体が審問の扉の前で控えている。
なぜそんなことになったのかというと、審問担当より、ある魂を絶対に審問の扉へ通すなという通達が届いたのである。しかも、大審問官の絶対命令付きの上、案内担当に至っては、以前、魂の取違事件を起こした担当が連れてくる魂とだけしか記載がなく、門番としては、どんな警備体制をとればよいのか不明だったため、現状で詰め所に待機中だった三班、計15体を審問の扉の警護とした。が、その肝心の魂と案内担当がいつまでたっても現れない。
各班のリーダーらしきものが集まって相談している。同じような姿、恰好なので、区別がつかないが、腕にそれぞれ、赤、青、黄の腕章をつけている。おそらく、班で腕章の色が違うのであろう。
赤の腕章のリーダーが、
「これ、上に報告しにいくべきじゃねえか。」
他のリーダーを見ながら提案したが、青の腕章のリーダーが、
「いや、大審問官が審問している魂だろ。どうせくだらん長話で審問が長くなっているだけだろう。」
「お前バカだろう。まだ審問中なら、そもそもあの通達必要ないだろう。」
すぐに黄色の腕章のリーダーがツッコミを入れる。
「そりゃそうかって、てめぇ、今、バカっていったよな。」
「おう。バカにバカっていってなにが悪いか、バカ。」
「おいおい、今、そんなこと言っている場合じゃねえだろう。」
赤の腕章のリーダーが止めに入る。各班の門番たちは、またか。といった顔で様子を見ている。恐らく、赤の腕章のリーダーの班の門番たちだろう。
「うちのリーダー、ああやって止めに入るのはいいんだが・・・」
「気が弱いからなぁ・・・」
「貧乏くじ。」
門番たちが、頭を抱えていた。どうやら、赤の腕章のリーダーが上に報告に行くこと決まったようだ。
「えっ?」
だが、今回は赤の腕章のリーダーも食い下がった。
「いつもいつも俺にばっか負担させやがって、たまには、お前らのどちらか行けよ。」
これには、他のリーダーも驚いた。おそらく、彼らの知る限り、初めての反発だった。最初は面食らっていたが、
「「おめぇ、わしらの言ううことに反発するつもりか。」」
声を揃えて命令するが、
「そんな脅しに屈するか。俺だってお前らと同じリーダーだ。」
三体がごちゃごちゃ言い争っている中、赤のリーダーの背後に近づくものがいたが、誰も気づいていない。
「なんか、楽しいそうじゃのう。爺も混ぜてくれんかの。」
「「「うるさい、なら、お前が行け。」」」
三体同時に叫ぶと、声がした方を見て、何かが引いていくのを感じた。人間であれば、恐らく血の気が引くといった状態だ。そして、後ろに4,5歩後ずさると、頭を下げた。他の門番達も各リーダーの傍に近づき、頭を下げている。屈強な門番達だが、一回り小さくなったように見える。大審問官がおそらく180センチくらいの背の高さがありそうなので、余計に彼らが小さく見えるだけなのかもしれないが。
赤色の腕章をつけたリーダーが、
「大変お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ございません。大審問官殿。」
大審問官と呼ばれた爺さんは、ニコニコしながら、
「そこまで畏まらんでもよいよい。報告もこの爺が来たから必要なかろう。それより、門の警備をしっかりとな。」
叱られることもなく、許していただけたことで、門番達は安心して一息つこうとしたとき、
「わたしん所にも、きちんと報告はしてくれるんだろうね。大審問官。」
全員の視線が大審問官に向いていたため、その声の主が近づいていたことに誰も気づけなかった。声の主の姿をみて、門番達はさらに小さくなり、身動きが取れなくなっていた。
初老の女性らしきものが近づいていた。古代中国の漢服だが、姫様とかが着用する漢服ではなく、諜報活動等を行うものが着用する身動きが取りやすい漢服である。生地の色は薄い灰色。本来は黒や紺色なのだろうが、実際に諜報活動するわけではないので、色は明るめの色の生地となっている。ただ、その名残なのか、の帯の色は藍色となっていた。服装もビシッと着こなしているため、威厳が漂っており、眼光、声にも鋭さがあるので、門番達は委縮してしまったようだ。
大審問官も一瞬、苦い顔をしたが、
「ほう、珍しい。受付・案内部署の総監がここに何用かのう。おっ、この爺のお気に入りの魂の見送りかの。残念じゃが、あれはやらんぞ。」
「ふん」
鼻で一蹴すると、
「誰があんたのお気に入りに手を出すもんか。お前さんの見送りなら、喜んで見送ってやるぞ。どうじゃ、今からでもその門に飛び込んでみては。」
ほれっ、ほれっと手を門の方に振りながら、挑発しているように見えるが、大審問官は目を細め苦笑いしながら、
「相変わらず、手厳しいのう。もうちょっと優しくしてくれてもよかろうに。」
一瞬だが、鋭く睨に、
「お前さんを甘やかすと、面倒ごとになるんだよ。」
総監は一息吐き、眼光の鋭さを解き、声も穏やかに口調に変えて、
「ここは、私も爺もいるから、3班も必要なかろうて。当番の班だけ残して、あとは詰め所に戻りなされ。」
その穏やかな声で、ようやく門番達も呪縛から解放された。青の腕章の班だけが、審問の扉前に残ると、他の班は安心した顔で引き揚げていった。
門番達が自分の指示通りに動く様子を見て、総監は大審問官(爺さん)の傍に近づき横に並ぶと小声で話しかけた。
「爺、あの魂は危ないかもしれんぞ。それでも人界に戻すつもりか。」
爺さんの眉が一瞬だけ動いた。
「さすが、耳が早いの。」
爺さんはチラッと総監を見るが、総監は爺さんを見ず、何も語らず真っすぐ前を見ている。続けて話せという意思である。それを察した爺さんも視線を前に戻し、
「人界には戻さんよ。というより、戻せん。最短でも400年後は長すぎじゃよ。」
「お前さんの力なら順番なんて関係あるまい。」
総監は、爺さんの顔を横目でみているが、爺さんは前を向いたまま無言だった。
「まぁ。下界では最近、災害や事件も増加、生まれ変わりの順番を入れ替えているなんて噂も聞いてはおるが、事実か?」
「・・・・・・・」
「それに、下界に僕もおって、それを頼って、稀に下界に降りているという噂もあるが・・・。」
「・・・噂じゃ。」
爺さんは総監と目を合わそうせず、前を向いたまま、ぼそっとつぶやいた。
総監はとぼけている爺さの前に移動すると、
「では、創主様と大喧嘩した、これも噂か!?。」
鋭い眼光で爺さんを見ている。
思わず、爺さんは目を逸らしたが、威圧感に負けて思わず、
「そ、・・・それは、創主様が・・・喧嘩したといわれれば、それは事実じゃ。わしは喧嘩したとは、思ってはおらんが・・・。」
どうにも煮え切らない解答で誤魔化そうとする爺さんに対して、総監は、もっとも効果のある言葉を発した。
「創主様に、下界に連れて行けと言われたであろう。」
言われたのであろう、という憶測の言葉ではなく、言われたであろう。と事実を告げる言葉を突き付けた。
「すべて知っておったくせに、わざと噂とか言って、何か、責めにきたのか!創主様に歯向かったわしを苛めに来たのか。」
「これが、世に言う、爺さんの逆切れか。」
目で笑いながら、総監が茶化す。
「世に言うか!!。というより、ここでは、わし、ナンバー2じゃぞ。わしの威厳ってそんなにないのか。」
この魂生の間では、創主と呼ばれる存在がとトップ。受付・案内担当の総監のみ、創主様と呼んでいる。大審問官も一時期は創主様と呼んでいた時期もあった。ナンバー2が大審問官。その下に、3体の総監がいる。受付・案内担当総監。全てのフロアを取り仕切るフロア総監。審問の扉やフロアの警備関係を取り仕切る警備総監。審問総監については、大審問官が兼務となっている。その下に監督官があり、その下には、リーダーや班長、主任といった役職が存在はしている。
総監は、真面目な顔をして、
「爺さんを苛めに来たのでもなく、いじりに来たのでもない。ただ、創主様が心配されておる。あの魂を人間として戻すのではないかと。それについては、先ほど否定したが、間違いはないか?」
「間違いはない。戻すことは考えおらん。」
爺さんが明確に答えたことで、表情を少し和らげた総監だが、
「では、あの魂が人間だった時に言っていた言葉、まさかとは思うが、その願い叶えるつもりではないだろうな。」
爺さんは首を横に振りながら、
「それはない。そもそも、そんな技術なぞ持っておらんわ!。もしあったとしても、そんな鬼のようなことできるか!。」
強く否定する爺さんに対して、疑問に思ったことを総監は聞き返した。
「鬼とはどういうことだ。お前、何を知っておる。」
「あくまでも、仮定の話じゃ。あれの望み通りになったとしての仮定のはなしじゃからの。」
念を押したうえで、ゆっくりと話し始めた。
「あれが、今の下界に望み通りに戻ったとする。今は良いじゃろう。知った顔も下界におるでの。じゃが、月日がたてばどうじゃ。」
「ま、いずれは知り合いはいなくなるな。」
「当り前じゃが、そうなる。じゃが、まだ下界があればよい。人なり、動物なり、虫なり、関りは持てよう。しかし、星はいずれ滅びる。いや、この宇宙、魂生の世界、そして次元もいずれは滅びるかもしれん。もし滅びた時、あれはどうなる。」
「・・・・・」
総監は目を閉じて無言で爺さんの話を聞いている。
「恐らく、あれだけは残ってしまう。それこそあれだけ。孤独じゃ。何もない空間に。死ぬことも許されず、誰とも関わることなく永遠に彷徨うことになるであろうな。」
総監はゆっくりと目を開けて、
「地獄の方がましか。」
総監の言葉に爺さんも頷いた。
総監は何かを思いついたように、爺さんに尋ねた。
「ならば、下界の生物が滅びるときに転生の門を使えばよかろう。」
総監自身、妙案だと言うように爺さんをみたが、爺さんの表情は曇ったままで、
「あれは、本当に転生の門だと思うか、いや転生の門と言っていいものなのか。」
逆に爺さんに質問されたが、答えることが出来なかった。爺さんは続けて、
「あれは、こちらからは行けるが、向こうから、こちらに来た魂をわしは見たことがない。そもそも、異世界に繋がっているのかもわからん。ただ、わしらが勝手に転生の門と呼んでいるに過ぎない代物じゃよ。」
「それでも、私らは繋がっていると思っていままで使ってきたわけだが・・・。繋がっている先が、同じ同じ宇宙、同じ次元だったとしたら、孤独は同じか。」
「そうじゃ。同じじゃよ。」
「しかし、同じ次元、同じ宇宙とは限らんではないか。その時はどうせ、私らの存在そのものもないのであろう。それ以降の責任を負う必要は私らにはないと思うが。」
総監の言葉に爺さんも納得はしながらも、
「しかし、あれで本当に転生できるのであれば、一縷の望みを託してもよいが・・・。」
奥歯に物が挟まったような言い方をする爺さんをみて、
「確かに、あの門を通って戻ってきた話は聞いたことがないし、あの門から現れたものがいるとも聞いたことがないからな。あれで転生できるのかは疑問だが。爺さん、何か気になることがあるのか。」
「いや、わしの意見ではなく、例の魂が言ったことが気になってのう。」
総監は無言のまま、爺さんに話の続きを促した。
「あの門は、魂のシュレッダーじゃないかと・・・。」
その爺さんの言葉に驚きの表情を隠しきれず、
「おい。ちょっと。それは、いや、いやいやいやいや、いくらなんでも・・・。それが本当なら、私らは、とんでもない罪を犯していたことになるぞ。」
総監は何度も首を振り、意味を否定しているが、だんだんと顔が青ざめていった。
そして、頭を抱えながら総監は、
「事実なら、誰が創主様に伝える。私は拒否する。こんな恐ろしいこと伝えられるか。」
そんな総監の姿をあざ笑うかのように、穏やかに爺さんは、
「何を慌てておる。総監ともあろうものが。あくまでもあの魂が言った話じゃ。そもそも確かめようがなかろう。それこそ、わしらが転生の門ではないと知っていて送り出していれば問題じゃが、わしらはあれは転生の門だと信じておる。総監、いや、創主を含め、この魂生の間にいる全てのものがそう信じておる。間違いあるまい。」
少し落ち着きを取り戻した総監は、
「確かに爺さんの言う通りだが、なんか割り切れんな。」
苦々しい顔をしている総監に対して、爺さんは、
「それこそ、先ほどお前さんが言った言葉どおりじゃ。それに、それが事実かたしかめようもないから、それ以降の責任を負う必要はわしらにはない!」
言い切る爺さんをみて、総監も仕方ないことかと諦めることにした。そして、
「なら、あの魂も転生させればよか。」
「いや、それとこれとは話は違う。」
言い切る前に、間髪入れずの反論に、思わず返す言葉が見つからなかった。
だが、爺さんの表情をみると、なんとなく考えていそうなことは理解できた。
『何が違うのかはわからんが、そこまで思っておるということは、おそらく、自分の配下にでもしたいのであろうが、創主様の許可が下りてないのか。それとも話すら出来ていないのであろうな。ま、爺さんが頼むのであれば、やぶさかではないし、ここで貸しをつくっておくのも悪いことではないが・・・。さて、どうするか。』
総監は心の中で今後の展開を自分に有利に進める算段を始めていた。
「ところで、爺さん、審問で、あの魂は、何と言っておったのか。」
「何のことじゃ?」
首を傾げて不思議そうな顔で総監の顔を見る爺さん。
「いや、人間だった時の発言に対して、何と言っておったのかと聞いているのだがな。」
爺さんは頭を指で掻きながら、
「そのことか・・・・。うん。そのことだよな。そうじゃよな。うん。うん。」
どこか言いずらそうに、視線を宙に浮かせて、言いずらそうにしている。
「爺さんの力になってもよいかと思っているのだ。もったいぶらずに教えな。」
爺さんは小さな声で、
「だから・・・・・・・・・いる。」
と呟くが、総監には肝心の部分が聞こえていなかった。
「はっきりと言わんか、この爺が。」
再度促すと、渋々ながら、
「・・・・・じゃから、わしがここにきておる。」
ぼそりとつぶやいた。
総監はその言葉の意味が理解できなかった。
「爺さん、私の頭が悪かったすまんが、あの魂が審問の際に何と言っておったの、と、あんたがここにいるのと、どういう関係があるのか、私にはまったく理解できんのだが。」
爺さんも真顔で、
「うむ。別に総監が頭が悪いわけではないぞ。わしにも理解できんからのう。」
ブチッ! と何か総監から切れる音が聞こえた。表情もこわばっているが、どうにか堪えているようだ。
眉間に皺をよせながら、
「そうか、爺さん自身でも理解できないようなら、ここは創主様にきていただいて白黒つけていただくしかあるまい。」
爺さん、額に脂汗らしきものを浮かべ、引きつった笑い顔で、
「いやいや、こんなおいぼれ爺の為にわざわざご足労していただく必要はあるまいて。それに、そろそろあ奴らも現れるじゃろうて・・・。」
ブチッブチッブチッ。と立て続けに切れる音が聞こえ、今にも怒鳴りそうな顔をしているが、なんとか耐えて、
「なぁ。爺さん、いや、大審問官殿よ。私もそろそろ限界なのだが・・・・・いい加減、本当のことをはなしてくれまいか。」
いつ、爆発してもおかしくない表情で爺さんを見ている。いや、睨んでいる。
爺さん、あえて総監の顔を見ることなく、明るい口調で、
「いやぁ、実は、審問するの忘れて、あ奴をいじって遊んでおった。じゃから、生きていた頃に言っていた言葉の意味も聞いておらんのじゃ。わしとしたことが大失敗じゃったわい。じゃから、ここに慌ててきたわけじゃ。」
罪の意識も何もなく、笑って誤魔化そうとする爺さん。
「はっ、はっはっ。」
引きつった声しか出せない総監。
ぶちん!!!大きな音が総監から聞こえた瞬間、
「この!!もうろく爺!!審問官が、審問せずに遊んでたぁ!!?。そんな審問官初めて聞いたぞ!!sれもこともあることか、大審問官がそれを言うか!!。審問しない審問官がどこにおるか!!。」
怒鳴りながら、ふと、爺さんをみると、さらに怒りが増してきた。
爺さんは、自分を指さしていたからである。
「自分で、自分を指さすな!!この馬鹿たれが!!。おまえ、今すぐ、審問の扉でも、転生の門でもくぐりやがれ、自分でくぐれないなら、私の手でくぐらせてやろう!!。創主様にも、爺は自らの不甲斐なさを悔いて、審問の扉を自らくぐったと報告しておいてやる。せめてもの慈悲じゃ。ありがたく思え。」
総監は爺さんの服をつかむと、審問の扉へ向かって歩く。爺さんは、
「いやじゃ、いやじゃ、まだ、わし、下界でも遊び足りんし。審問ももっとしたいんじゃ。」
まるで、母親に駄々を捏ねる子供のようだ。
「審問したい?、忘れたお前がどの口がそれを言う。ならば、その口から扉をくぐらせてやろう。」
「口からとは、惨いこと言うおなごじゃのう。昔は」
「やかわしいわ!!爺。」
爺さんの話をぶった切る総監。そんな様子を遠くで見ている門番達だが、巻き込まれるのを恐れて、見て見ぬふりをしていた。
「ところで、総監。」
「黙れ、この役立たず爺。」
総監の怒りは収まる様子はなく、爺さんの服をつかんで、扉に近づこうとしている。
「それにしても遅くはないか。」
「何がだ?」
「いや、ほれ、お前さんとこの案内担当と例の魂。」
爺さんの言葉で、総監も動きを止めて、爺さんをつかんでいる手からも力が抜けていた。
「そういえば、遅いな。」
大審問官と総監は、たぶん、現れるであろう方向をじっと見つめていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、主人公が現れない話となっております。
その代わり、爺さんと婆さんの掛け合い、高齢者となっております。
頭の中ではストーリーは随分先まで出来ておりますが、文章にするとなると
結構苦しんでおります。
次話、予定では、25日(金)を予定しております。
もしかしたら、次話は遅れる可能性が出てきましたので、
万一遅れる場合は、23日までに、この後書きでお知らせいたします。
遅れないように頑張ります。
次話、次次話、以降、結構、ドタバタしてまいります。
では、よろしくお願いいたします。