表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甦りはアンデッドで  作者: 敏之助
魂生の間
1/10

魂生(こんせい)の間

 ふと気が付くと、市役所や大きな病院の待合室のようなところにいた。2mくらいのソファ椅子が、規則正しく並んでおり、所々に人が座っている。そして、ずっと奥まで続いている。どこまで続いているのか、果たして終わりがあるのだろうか。


『ここはどこだろう。こんな大きな施設はみたこともない。それに・・・』何か違和感を覚えた。そう、音がしない。普通、待合室であれば、人の声や歩く音、何かしらの音が聞こえる。


 図書館のような場所で話すことが難しい場所でも、エアコンの音くらいは聞こえてもいい気がするが、ここは無音。何も聞こえない。ここに来る前、自分は何をしていたのだろうか。自分自身に問いかけてみた。


『確か、俺は入院していたはずだ・・・たしか・・・』


 会社の健康診断で、不整脈やら、癌やら、複数の病気がみつかって、手術は不可なので、抗がん剤で治療を行っていたはず。病院の朝食を食べたあと、突然苦しくなって、看護師や医者がバタバタし始めて、別の部屋にベットごと運ばれて、腕や体にチューブやら機械がとりつけられて・・・。金属がぶつかりあう音や、医者が何か叫んでいる、それに看護師が答えている。機械のアラーム音も聞こえている。


 それもやがて聞こえなくなった。視界もぼやけて・・・。そこまでの記憶しかない。多分、意識を失ったのだろう。


 で、気が付いたら、みたこともない大きな待合室。全てが白色。2mくらいのソファ椅子だけが、薄いクリーム色。部屋全体は明るい。しかし、上をみても照明が見当たらない。というか、天井そのものがない。ただ、白い空間が上にも延々と続いている。


 唯一、自分からみて左手側だけに壁がある。真っ白な壁。ドアらしいものはなく、白い壁が延々と奥へと続いている。


『俺は、夢でもみているのだろうか。こんな広い場所は見た覚えがない』


 突然、目の前にひらひらと飛んでいる何かが現れ驚いた。最初は目の焦点が合わず、何が飛んでいるのかわからなかった。


『蝶?』かと思った。確かに蝶のような羽がついているが、色がついていない。トンボの羽よりも、透き通った羽がパタパタとしていた。その姿にさらに驚いた。


『よっ、妖精!?』人の形に羽がついていた。しかし、驚きは、すぐに嫌な気持ちに変わった。


 確かに妖精っぽくは見えるが、着ている服装が、スーツにネクタイ姿のオッサンだったのだ。

『やはり、夢だ。しかも悪夢に違いない。妖精ってのは、もっと可愛らしいものでなければならない。それが、それが・・・。よりにもよって、サラリーマンのオッサン。あり得ん。あってはならない。だからこそ、悪夢。』


 悪夢なら冷めてくれと、願ったが、ふと気づいた。夢ならば、その夢を見せているのは、俺の脳。俺の脳がサラリーマンのオッサンの妖精を見せているのだとしたら、俺の脳はどうなったのだ。もしかして、俺がそれを望んでいる!? こんな黒歴史が俺の中にあったのだろうか。いや、そんなはずはない。そんなことがあって良いわけがない。だから、夢。夢なら俺の脳は・・・。わけがわかならい自答を繰り返していた。そんな俺の葛藤とは関係なく、目の前に現れたサラリーマン妖精は、


「人生お疲れ様でした。そしてようこそ魂生(こんせい)()へ。」

事務的な声で語りかけていた。事務的というよりは、電話の音声ガイダンスのようで、感情をが感じられない。そして、一方的に

「まずは、椅子に座って、案内担当が来るまで、この魂生のしおりを読んでお待ちください。また、騒がないようにお願いします。」というと、目の前に一冊の分厚い本が現われた。


 不思議と本も浮かんでいる。本に目を奪われたのは一瞬だったが、その一瞬でサラリーマン妖精の姿は消えていた。


『なんだったのだ、あれは。なんか見てはいけないものを見てしまった。また、考えてはいけないことを考えてしまった。今見たことはすべて忘れてしまおう。』そう結論し、混乱はひとまず治まった


 本をみると、表紙は、何かの皮のような感じで茶色。文字は書かれていないが、何か彫ったような感じで凹凸がある。見ようによっては、神殿の入り口のような形にも見える。


『確か、こんせいのしおりって、言ってたっけ。こんせいってなんだ。それに・・・』ふと最初の言葉を思い出した。


 ―人生お疲れさまでした― 


『人生お疲れ様・・・。人生・・・』


 言葉の意味を考える。最後に覚えている光景を思い出す。あの光景から考えてみて、意識が戻ったとしたら、病院のベッドの上のはず。だとしたら、やはり、これは夢の中なのか・・・。夢と思いたい。だが、そうではないのだと突然感じた。病気に勝てなかったのだと・・・。


 そもそも、入院した段階で、勝敗は決まっていた。やまいに勝てないことはわかっていた。覚悟もしていた。覚悟はしていたと思っていた・・・。

 

 悲しく、寂しく、情けない思いが込みあげてくる。家族に何もしてあげられなかった後悔。浮かんでくる子供たちの顔。自分に対しての怒り。家族に対する申し訳ない気持ち。もっと一緒にいたかったという悔しさ。

 

 自分は覚悟をしていた。覚悟をしていたつもりになっていた。だが、つもりだっただけなのだと。悲しいし、寂しいし、悔しい、辛い《つらい》し、情けない。泣きたかった。声を出して泣きたかった。

声を出して泣いているつもりだが、自分の耳から声が聞こえない。涙が流れている感じも伝わってこない。だから、余計に苦しくなった。


 死とは、こんなにも寂しく、辛く、悔しく、情けないことなのだと知った。


 突然、

「ほっほっほっほっ、お若いの、ようやく死を理解されましたかの。」と声が聞こえた。


連載、甦りはアンデッドで 第一話、お読みいただきありがとうございます。

初めまして。作者の敏之助と申します。


1話は、さほど面白みもないかもしれません。次第にハチャメチャになっていきますので、

末永くお付き合いいただければ、幸いです。


つたない文章で色々とご指摘もあるかと思いますが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。

まだ、主人公も独り立ちできず、模索しながら話を進めております。

―――はやく、独り立ちしてくれないかなぁ―――


アンデッドとして甦るのは、もうちょっと先の話になります。

仕事しながらなので、更新については、隔週の土曜日を予定しております。

次回更新は10月17日午前0時となります。

(実は3話も完成はしておりますので、延期はないはずです。)

今度とも、よろしくお願いいたします。

                                 敏之助

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ