異世界人はカレーを求む
カレーライスは日本食です。 @短編その60
追加修正しました。
ついに60にまで増えたか・・・目指せ!なるたけ毎日新作うp。
よくあるじゃん?
異世界に転生とか転移したりした奴が、やたら米!!とか味噌とか醤油とか探したり、堪能したり。
うぜえ!!
と思っていた時期が、俺にもありました!!
でも転移した今なら分かる!!
今俺は・・・めっちゃカレー食いたいっ!!!!!!!!!←超強調
16歳のある日、俺は異世界に転移したんだよ。
まあ、俺はいじめとか受けちゃってたり、コミュ障になっちゃってたり、家族にも爪弾きされてたり・・・味方なんか一人もいなかった。唯一の心の拠り所だったニャアコ・・猫だ・・も、老衰で死んじゃった。
もう無気力に、行きたくもない学校へ歩いていたんだ。行くだけでもすごいだろう?ひきこもりなんかしたら負け、とか思っていたから。家にいたらニャアコのことを思い出してしまうから、というのが理由だったけどな。
で、突然のホワイトアウト。
気がついたらまっ白な部屋にいて。
綺麗な男女の『転移(転生)の神様』とやらがいて。
『あなたにも加護があります・・・なにが贈られるのかは私たちにも分かりません』
何かその世界で生きるのに便利な加護をくれると告げられた瞬間真っ暗になって・・・
で、この世界に来たわけだ。
異世界転移だってさ。元の世界の現状に、何も希望が持てなかった俺は、ここで心機一転。
生まれ変わった気持ちで生きることにした。
頑張って人と関わって、今までの性格を叩き直し、ギルドに加入してしょぼい依頼から地道に達成させて・・・
この世界に来て3年。19歳の俺は、ごく普通の冒険者となっていた。
別に特別なスキルや加護なんかいらないし、英雄とか勇者なんか俺の成す事じゃない。
でも地道に、地味に、頑張って・・・もうここでの生活が俺の基盤となった。
元の世界に帰る機会が出来たとしても、絶対に帰らない。あんなクソな奴らばかりの世界なんか。
この世界に何故呼ばれたのか、俺にはさっぱりわからないが、役に立てるならとは思っている。
今の所兆しさえ無いので、なんとも言えないけれどな。
たまには元の世界を思い出す時もある。
主に飯時に、特に。
無性に食べたくなるメシがある。
日本の味と化したカレーライス。インドカレーでもスープカレーでも無い。キーマなど以ての外だ。
肉は牛が望ましい。そしてニンジン、じゃがいも、玉ねぎの家庭的なカレーだ。
家族とは仲が悪かった、いや無視されていたけれど、カレーは旨かった記憶がある。
先に家族は食事を終えていて。呼ばれる事もなくなったのは、いつからだったかは忘れたけれど。
ガスコンロ台に鍋が置かれていて、鍋の中には1杯分のカレーが残っていて。炊飯ジャーにも1杯分のご飯。
このカレーだけは旨かった記憶だけが、家族の記憶だ。たった一人で食べるカレー。
そんな胸糞悪い思い出だったが、カレーには罪はない。だって旨いんですもの。
「・・うまいカレーが食いたい」
そうなんだよ。
とにかく、この世界がさらに好きになれるように、俺はカレーを探究しようと決めた。
でもどうやって作るんだ?手作りした事がないから、スパイスがわからない。
だってスーパーのルーだからね。
でもスパイスの名前を知っていたからって、この世界と元の世界のスパイスが同じ名前ではないし。
ああ、カレーが食いたい・・・
でもカレーならなんだっていいってわけじゃない。
カレースパゲッティはまずい。旨いと思った事がない。ラーメンもイマイチだ。
どっかのカップヌードルのは食べられるが、好んでは買わない。
カレー炒めも好きじゃない。薄い。カレー味付ければ誰もが好きなんて思うなよ。
味カレーというスナックは、まあ許す。アレはガキの頃食うスナックで、郷愁の味だからな。
ああ、カレーが食いたい・・・
無性に食いたい。
米っぽい穀物に、にんじん、たまねぎ、じゃがいもはあるんだ。あとはカレー粉だけなんだ!!
むかーーーし、なんかの雑誌をパラパラ見てた時、手作りカレー特集が載っていた。でも飛ばした。
あの時の俺、本当馬鹿!!読んでおけばよかった!!!
カレーのスパイスってなにを使うのかが知りたい!!!
もう、麻薬中毒患者並みの欲しがりようだ。食いたい。喰いたいっ!!
俺はこの日より、カレー探究の旅に出ることにしたのだった・・・
大きな街に行って、まずは香辛料ショップに行く。商品を見て、いろいろ勉強をする。
気になる香辛料は買っておく。そして、街を彷徨いてカレーっぽい匂いの食堂を探す。
もしかしたら、俺と同じような異世界人がいて、カレーの店をオープンさせていないか。
そんな期待もあったりした。
そして買い貯めたスパイスを使って、カレー粉を作る。
最初のカレー粉その1は、大失敗だった。仕方がない。俺は調理師ではないからな。
その2・・
その10・・
その221。
カレーというよりはインドカリーだ。
既にカレー探究旅は3年を迎えていた。
そして旅の途中で、インド人と出会った。彼は異世界転生者だった。
だが違う。それはインドのカリーだ。
このインドのカリーがイギリスを経て、明治時代に日本にやって来て発展したのだ。
なる程。
俺は日本のカレーの起源にまで、ようやく辿り着いたわけだな。
ハ●やハ●スさんと同じスタートまで来たんだ。
行ける。
だが日本で120年を経ての、家庭カレーだ。120年だ。
地味に地道に頑張るしかない。
カレー探究旅で、俺は知った。俺って結構しつこい。粘りすぎ。
今も家庭カレーを求めている。
このカレーで大儲けなんて考えてはいない。だって、これは俺の補完だ。
どうしても埋められない、心の穴を埋めるんだ。
この俺のカレーレシピで作ったカレーを、俺の家族と食べるんだ。
まだひとりだけどな。
彼女っぽい娘は出来たんだけど・・・
でも俺、カレー旅しているから。ほったらかしだから。
だから帰る度に、貢物を渡して縁を継続しています、はい。
「とろみは小麦粉をバターで捏ねた『バターマニエ』でつけるといいよ」
立ち寄った国で知り合った少年だが、彼も俺と同じ異世界転移して来たそうだ。
それでなのか話も合って、カレー探究旅の話をすると、彼は食いついて来た。
元の世界の彼の家は料亭だそうで、料理基礎っぽいことを色々知っていた。
「シチューやスープのとろみもバターマニエでとろみ出るよ」
「へぇー。よく知ってるな」
「弟が料理好きでさ。そうそう、カレーのスパイスだったっけ」
彼は和料亭の息子のくせに、カレーのスパイスも知っていた。
弟くんが料理好きだったらしく、作るときに付き合わされたそうだ・・・いいなぁ、仲良し兄弟か。
クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモン、ペッパー、ターメリック、クローブ、八角、チリペッパー。
この世界での呼び名まで教えてくれた。え?それって、もう答えじゃない?
ビレー、ドウァセ、カエアワーエ、シッシー、ポトポット、ジジレオ、イリイリ、ヌヌゼゼ、タヲエリ。
全部、持ってる。
あとは配合。何g使うかで味が変わる。
「カレー出来たら食わせてくださいね」
その少年はお礼はカレーだというので、了解した。
そして毎日数グラムの微調整でのカレーが続く。
あんなに食べたかったカレーなのに・・・
毎日作っていたら・・・食いたくなくなっていた。
そりゃそうだ。
でも俺はしつこい。
完成させるという義務感だけで、毎日カレーばかり食っていた。
牛肉至高主義だったのに、鶏肉、豚肉、マトンや馬肉も試した。
マトンや馬肉の臭みが消えて、やっぱりカレーすごいと思った。
漢方にも使うスパイスだから、俺は健康だ。カレーは健康食、正解だ。
こうして配合も俺の好みの味に仕上がった。
俺カレー、完成だ!!!
もう食いたくない。だが、スパイスの名を教えてくれた少年にお礼をする為に、カレーを作った。
「うわぁ!!!カレーだ!!」
少年は大喜びでカレーを食べてくれた。彼の友人も一緒に食べに来てくれて、二人で舌鼓を打つのを見てなんだか嬉しくなった。
少年の友人が『店を出せばいい』と言ったが、俺は一生分のカレーを食った。もういい。
だからレシピを自由に使ってくれと彼らに渡した。
店を開いて繁盛したら、売り上げをくれると言っていたので、ギルド銀行の口座番号を聞いて来たので教えておいた。
それから2年。
久々にギルド銀行の残高を見て、盛大に吹いた。
物凄い金額が入金されていたからだ。どうやらカレー屋が繁盛しているようだ。
俺は一年に2〜3度、カレーを作る。やっと子供がカレーを食べられる年齢になったからな。
家族と語らい、肉やジャガイモがゴロゴロのカレーは我が家のごちそうだ。
子供がはしゃいで、『父さん美味しい美味しい』って喜んで食べる。
妻は『今日はあなたが作ってくれたから、ゴロゴロ出来たわー。食器の片付けもいい?』とご機嫌だ。
俺はこの世界で、ずっと思い描いていた夢を叶えたのだった。
タイトル右の名前をクリックして、わしの話を読んでみてちょ。
4時間くらい平気でつぶせる量になっていた。ほぼ毎日更新中。笑う。
ほぼ毎日短編を1つ書いてますが、そろそろ忙しくなるかな。随時加筆修正もします。
連載もあります〜。