表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
産業創世記 ギデオン  監獄の住人  Industry Genesis GIDEON Citizen of Prison  作者: 初書ミタ
第1章 監獄の住人 citizen of prison
9/12

エピローグ

エピローグ

屋外では、すでに戴冠式の準備が整い、聖ウエストミンスターの

広場には大勢の貴族が集い、リボンや風船の飛び交う中

大英帝国のいかなる大物貴族でも替えがたい、そのオリエンタルな

気品は周囲の注目を集めていた。


しかし、貴族たちはその艶やかな姿形とは裏腹に有色人種ゆえか

ユダヤ人ゆえか、オスマンの威光を持ってしても消せない

特有の扱いを受けていた。


おざなりに、スルタンシャリフからの祝辞が読まれ

ホーフユーゲンであるハッペンハイムが彼女をもてなした。


「父と子の祝福により、汝、ジョージ3世を国家の守護者とし

偉大なる大英帝国の繁栄を 祈らん。」


(ふぅ、ここの様子は理解しがたいわね。オスマンの名代である私を

何か別の生き物を見るように。彼らはオスマンの権勢を恩義を忘れたのかしら)

いえ、たぶん肌の色のせいね。ハッペンハイムには普通ですし。


オスマンの名代である彼女シオンナスィは特権がある。

当然であるが、大帝の使者だ。王と会話できる。


シオンは静かに切り出した。


「国王陛下、昨今のゲットー襲撃と大火災、ユダヤ人に

災厄が降りかかりました。大英帝国として公的な援助を

お願いしたく思っております。」


新国王ジョージ3世

「昨年からの大恐慌、我が国の財政は逼迫しております。

シオン姫、ご協力したいのは山々なのですが、無理なのです。」


ホイッグの頭領ラッセル公が叫んだ。

「我が祖 初代ジョンラッセルがかつての親友との

約束を果たすときが来ました。」


「国王陛下、かつて罪なく処刑された我が一族に当代の王は言われました。

この償いはすると。いま償っていただきたい。」(ライハウス事件)


トーリーの頭領ハンタギュー卿は侮蔑的に返す。

「故に、我々は肌に色のついたものに寛容すぎるのです。」


「寛容、あのゲットーが。我々の生活をご存知ですか。」


大英帝国に来たときはじめて着た三角形の奇妙な帽子、

よれよれの一張羅。変形したぼろぼろの木靴。


それらが後押しして勇気をくれた。


「どうしても信用いただけないなら、私が質となりましょう。」


ハンタギュー卿

「よろしいので、オスマンと我が国に何かあれば、ご家族に災いが

大帝に御迷惑がかかりますよ。それに言ってはなんですが、

我が国のゲットーはフランクフルトやパリと比べれば天国です。」


ジョージ3世

「私は見てみたい。ユダヤ人の暮らしを。姫の邸宅をお邪魔しても

よろしいですか。救国の英雄の,

親友にお会いできた事は至福の喜びです。」


シオン

「お待ち申し上げております。迎えのものが参りました、それでは。」


ギデオンはキリスト教徒であり、ユダヤ人である。


それ故に、ここにユダヤの王、イエスを架刑に処したとされる存在が

下等な有色人種であり、敵であるイスラムの民である事を鑑み、

華麗なるウエストミンスターから、薄暗い監獄へと彼女の身柄を

移した。


産業創世記 監獄の住人 終わり





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ