未完結のなんと愚かなことか
「あーもうこれもここで終わりか、続きは...??ない...ここまでか...。」
何日経ったのだろう
本棚を埋め尽くし、それでも入り切らない本の山を読み漁り、寝る生活。
何冊も何冊も読んで、わかったことがある。
物語は全て中途半端で完結しないことが殆どなのだ。
もちろん完結したものも中にはあった。だがどう言うわけか、この家にある本はそうではない、中途半端なものが多い。
「どう言う基準で選んだんだ?続いてる数?いやこれは15までしかないけど、こっちは100以上まであるしな...。」
甘ったるい恋愛ものから、元いた世界と同じように魔法を使って戦う物。妖怪?と呼ばれるモンスターに似た何かを題材にした物、さまざまな物を読んだ。
最初は魔法を題材にした本があるのだから、やっぱりこっちにもあるんじゃないかとと思って調べてみたが、やはりないらしい。人が映る黒い板ーーーテレビでニュースを見ていくうち、なんとなくだがこちらの世界のことが実感して来た。
ここは帝国でも王国でもなく、総理という人がリーダー政治を行う国、日本。王とは違い血で継承するものではないらしいという事。基本的に人が血を流すことは良くないとされている事。不思議な事に、ここで過ごせば過ごすほど自然とその常識が体に馴染んでくる。
「どう?読み進められてる?」
「これも完結してないんだけど、続きは?」
「まだ無いわ。来月発売らしいわよ。」
「えーーーーーーなんでよ気になるじゃ無いかーーー。」
「アンタ、目的忘れてないでしょうね...?」
目的?あぁ、そうか目的。なんだっけ、と一瞬本気で考えたところで我に返る。そう、何か糸口を、見つけていたのだ。
「この漫画ってさ、どこまでが事実に基づいてると思う?」
「というと?」
「たとえば魔法が登場する本って色々あったけど、結構的を射た構造のものもあったんだ。」
「そうね。私もそれは感じてる。」
「気とか、霊感って、実際にあるのかな?」
これが糸口だった。漫画を読むに、気や霊感はマナ。土地神や八百万の神なんかは精霊に近い気がする。
「それが言ってたマナに似たものってやつ。正確には違うんだけどね。」
「でも空気中にどこにでもあるわけじゃないんだよなぁ。」
そこがいちばんの問題だった。
元いた世界のマナは空気中に溢れているものだった。
人間や魔王軍、魔物は全て、体内にあるマナだけでなく、空気に含まれるマナを使用して魔法を放つ。
しかし、例外が一つだけあった。それは精霊なのだ。
精霊は自分の知名度や伝説に影響されて力を持つ。そして知名度がそれなりにある精霊は体内のマナだけで魔法を扱えるのだ。
「土地神ってのはもう名前が決められてる。そもそも実態があるものじゃ無いしなぁ。八百万の神は生き物というより物に宿るって感じだし...。」
となると、この漫画のキャラクター達はどうなのだろう。ある程度知名度がであり、厳密に言えば生きている者ではなく、作り出された物だ。
「このキャラクターの姿に変身さえなれれば、マナの量に関しては解決しそうなんだけどな...。」
「あぁ、それならいい方法があるわよ。」
「え...?変身魔法は無理だよ?」
「完全魔法なしでできる方法よ。」
「完全魔法なしで?」
ニヤニヤと笑うメリノスの顔
さてはこいつなんか良からぬことを企んでいるな。
「んーそうね、次の土曜日。都内に出てみましょうか。知識はある程度流し込んでるけど、実際に見たことはないでしょう?」
「流し込む...?なんかこっちの常識が腑に落ちるのってそのせい?」
「えぇ、言葉で言っても絶対教えられないし、知識感覚共有した方が早いから...。」
「え、待ってそれって魔法なんじゃ...。」
「貯蔵量が違うのよ、貯蔵量が。」
ムッとした顔でメリノスを見た。勝ち誇ったような顔。…まぁ、神様だしな、これでも、一応。
土曜日と言われて自然とカレンダーを見る。カレンダーという知識も、漫画から得たのか知識感覚共有から得たのか。
「明後日か...。」
ボソリと呟き、期待に少し高鳴る胸の音を感じた。
何年ぶりかにアカウントIDを探り当てログインしたアカウント...今となっては黒歴史のこの物語。
ゆっくり血反吐吐きなら完結させていきたいと思います...