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プロローグ

初めて小説書きます。

よろしくお願いします。

魔法王国クスタナリア


この国が美しい緑の都市と言われていたのは、もう何年前の事だっただろうか。

今ではすっかり樹々は枯れ、草花は焼け落ち、綺麗に透き通っていた泉は毒沼のような異臭を放っている。


―魔王軍と戦争状態になってはや5年。一時は順調かに思えた魔王との平和条約の話し合いも、王国王家内部の反乱をきっかけに決別。その後瞬く間に戦禍に飲み込まれたクスタナリアは、王都を残してほぼ全滅。今は辛うじて、王国軍の精鋭魔術師が作り上げた退魔の結界によって魔王軍の進軍を防いでいる。

とはいうものの、王都内は周辺の領での産業で成り立っていたため、ライフラインもギリギリの生活水準を保つほどしか残されていない。もはや王都と呼べるだけの活気も華やかさもない、シェルターと成り果てたその街の住人の顔は見るに耐えないものだった。


そんな王都からやや東。滅ぼされた領の端っこにひっそりと位置するソレカ村。国境になっている大森林の中にある形質上、魔王軍の進軍を紙一重で回避できたに過ぎない小さな村だ。領主もいなくなり、国との連絡手段を絶たれたものの、もともと自給自足だったためか、特に何の変化もなく暮らせていた。


「……くっそ、また失敗か。」


そんな村に暮している青年アルマ。

彼は毎日のようにこうして部屋で爆発音を立てては、身体中を煤で汚していた。

ふざけているわけではない。至って真面目だ。


彼の魔術の能力は一流と呼べるだろう。しかし、元から才能があったわけではない。


5年前。まだ彼が8歳の頃の話。

アルマは王都に住うごく普通の一般家庭で育っていた。これといった特技もなく、成績も常に平均。唯一周りに自慢できることといえば、隣の家に住む可愛い幼なじみがいる。それくらいの事だった。

平凡。そんな言葉がよく似合う、どこにでもいる子供。

しかしそんな日常はあっという間に壊れてしまう。

ある日血相を変えて帰宅した父親に訳もわからず国境がある田舎領のそのまた端の森の中の村へと、母と共に預けられてしまったのだ。

預けられたのは会ったこともない父の遠い親戚だという家。預けられたといっても、この村は自給自足の生活が主。すぐに生活に必要な能力を叩き込まれ、小さな家を建てるとそこで母との二人暮らしが始まった。

はじめこそ生きていくのに必死で、何も考える余裕はなかったが、少し落ち着きを取り戻したアルマの脳内にはあの日の父の顔が焼き付いて離れずにいた。


「ねぇ、お母さん。何でお父さんは僕たちをこんなところに置き去りにしたの?」

「……置き去りにしたんじゃないのよアルマ。お父さんはね。大事な仕事でしばらくお家を留守にしなきゃいけなくなってしまったの。」


少し悩んで母がこう言う。でもそれは質問の答えにはなっていない。それはきっと母もわかっていたのだろう。だがそう言うしかなかったのだろう、とその後に起きた事を見た後でわかった。


その数日後。魔王軍が一気に進軍を開始し、一気にクスタナリアは攻められ、良いように蹂躙された。王都はその形こそ残しているものの機能は完全に停止。王族は職務を放棄し、城の中へ閉じこもった。

最初こそ街の民から抗議やデモなど起こったが、皆生活がギリギリになるとそういった事をしている暇もなくなり、なし崩しで今も王政が続いている。


進軍から4年たった今でも父の消息は不明だ。

2年前に亡くなった母が最後に残した言葉では、父は実は王国軍に勤めていた、と言う事だった。もしかしたらもう戦死してしまっているのかもしれない。


母から父の真実を聞いたあの時から、何もしない王族や、攻め込んできた魔王軍に怒りの矛先を向け、ひたむきに魔術の研究を行なった。

この国では幼少より魔術の教育が盛んに行われたきた。この国を作った第一代国王メリノスが偉大な魔術師だったからだそう。今では神格化され、メリノス教として国内では国教とされていた。

逆に剣術を扱えるものはさほど居ない。

それが仇となったのか、魔王軍が開発したい対魔の鎧により魔法攻撃は防がれてしまった。


そこでアルマはまず剣術を習得しようと試みるも失敗。

なので次はと考え出したのが、身体能力強化の魔術だった。

剣術を扱えるほどの肉体や、剣術についての知識がない今の状況では、魔王軍に対抗できるほどの能力を得るのは難しい。そこで、基礎身体能力を底上げし、デタラメな剣術でもそれを物量で突き通してしまえる程になれればと考えた。ようは“ゴリ押し”だ。


森の精霊や世界に漂うマナを体内に集め、血液と共に体内に循環させて体内から魔法能力を付与して身体能力を上げる。小規模なら完成させた。だがこれではまだ魔王軍に対抗できるほどの力はない。既存の魔法以外で新たに術式を編み出すのがここまで難しいとは。そりゃあ、魔術の教科書が毎年お下がりでも大丈夫なことに納得してしまう。内容は何年も前からほぼ変わらないと言うわけだ。


「もう少し、もう少しなのに。」


次の日もそのまた次の日も研究に没頭した。研究を開始して5年、魔王軍が侵攻してきて、4年が経とうとしていた、13歳の夏。


―そんなある日

天より王都に落ちる一筋の光の塔を見た。


と思ったら次の瞬間、その光の塔からまっすぐに光る球が魔王軍の真ん中へ落ちていった、その刹那、油紙に水を注ぐように、黒い魔王軍の軍勢は消滅していく。


それから2週間後、クスタナリア全土にこう告げられた。


『メリノス様が連れてきてくださった、異世界からの転生者が、勇者となり、我が国に勝利をもたらした。』


と。




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