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啓示・終末へのカウントダウン  作者: 合沢 時
8/12

予兆 壬生 2

 貴之が、かつてのロケ地であった廃病院に着いたとき、まだ午後四時を過ぎたばかりだというのに、廃病院とその周辺は、既に薄暗く感じられた。

 貴之は、愛車のパジェロミニを廃病院の正面玄関あたりに止め、懐中電灯を手に取ると車を降りた。車から一歩外に出ると、ウインドブレーカーを羽織っていても、肌寒く感じた。


 貴之は、懐中電灯を点けると、正面玄関から廃病院の中に入っていった。

 さやかと杏里がロケのために歩いて行った道筋は、番組の記録を調べて把握している。貴之は、その道筋に従って、歩を進めていった。


 さすがに建物の中に入ると、外とは比べものにならぬほど、深い闇が行く手を遮っていた。懐中電灯も、四・五メーター先を照らすのが精一杯であった。

 化け物や幽霊などは、いるはずもないと思っている貴之だが、自分を取り巻くこの異様な雰囲気は、もしかすると、暗がりの中から、得体の知れない何かが飛び出してくるのではないかいう疑念を抱かせるには充分だった。

 廊下の壁を懐中電灯の光が照らすと、そこに『さやか萌えぇ』とか『杏里LOVE』などの文字が浮かび上がった。どうやら、あのロケ以降に書かれた落書きらしかった。あのテレビ番組を見た直後に、ここを訪れた廃墟マニアかジューシーラブ×2のファンが残していったものだろう。


 貴之は、更に注意深く歩を進めていった。幸いにも、あのロケ後に破壊行為を行った者はいなかったようで、廊下の床には、歩く妨げになるような物は無かった。

 かつて手術室があった場所まで来ると、貴之は懐中電灯で、隅々まで照らしてみた。さやかが、ここで、もう一人の自分を見たと言っていたのだ。その話を聞いたとき、杏里が何かに映った自分を見たのだろうと言った。そして、貴之も杏里の言ったことが正しいと思った。しかし、この場所に姿を反射する何かが存在しないことには、その説は成り立たない。

 果たして、貴之が隅々まで懐中電灯で照らした結果、その手術室の中には、手術台と配線がむき出しになって壊れている心電図モニターらしき物以外には、一切何もなかった。

 

 背後で、ゴトッという音がして、貴之は反射的に懐中電灯の光をそちらに向けた。光に照らし出されて、二体の人影が浮かび上がった。貴之は思わず後ずさった。


「あ、すいませーん。脅かしちゃいましたぁ? 」


 間延びした若い男の声がした。

 改めて光を声のした方に向けると、若い男女のカップルが光の中に浮かび上がった。二人とも光に照らされて、眼を細め少し眩しそうにしているのが見て取れた。そのような様子からも、二人が人外の者ではないと判断し貴之は安心した。


「あなたも、心霊マニアの人ですか? 」


 若い男の方が訊いてきた。


「いや、僕は違う」


 貴之は否定した。


「じゃあ、もしかすると幽霊? …なあんて、そんな訳ないですよね。幽霊がパジェロミニを運転してくるわけがないし」


 そう言って、男が笑った。


「君たちは何者なんだ。こんな廃墟の中でデートでもないだろ? 」

「俺たちは、心霊マニアなんですよ。今日もあることを確かめにここに来たら、あなたが先にこの中に入っていくのを見かけたんで、後を追ってきたんです」

「僕を脅かすつもりだったのかい? 」


 貴之が照らす光の中で、若い男は胸の前で激しく両の手のひらを車のワイパーのように振った。


「とんでもない。脅かすつもりなど、毛頭ありませんよ。俺たちは、自分が驚くことを見つけることを趣味にしているんです。人を脅かして楽しむようなことはしません」

「君たちは、よくここに来るのかい? 」

「今日で三回目ですね」


 貴之は、この若いカップルに話を聞けば、何か分かるのではないかと思った。手術室には手術台の他に何も無かったが、その前には何かあったのかもしれない。


「君たち、夕食はまだだろ。僕がおごるから、話を聞かせてもらえないかな」


 貴之は、そう切り出した。




 貴之と若い二人のカップルは、三十分後、ファミレスのボックス席にいた。

 東亜テレビのADという肩書きは、若いカップルから話を聞くのに役立った。


 貴之から肩書きの記載された名刺を受け取った二人は、もしかするとテレビに出演できるかもしれないという淡い期待を抱いたのか、何でも快く受け答えしてくれた。

 二人は、廃病院から十キロほど離れた所にある大学の心霊サークルに所属しているらしかった。


「それでですね。この俺の彼女の礼子が霊能力があるんです。あ、これ、ダジャレなんかじゃないんですよ。礼子には、正真正銘、霊能力があるんです。な、そうだよな? 礼子」


 ノボルと名乗った男の言葉に、礼子という女の子が頷いた。


「礼子さんと言ったね。きみは霊というものが見えるのかい? 」

「いえ、いつも見えるわけではありません。見えるときもあるし、見えないときもあります」


 礼子という女の子が、か細い声で答えた。彼女は、大学生というには、体つきもまだ幼い感じがした。セーラー服でも着せれば、中学生と自称しても十分通用しそうであった。


「見える時って、何が見えるかい? 」

「ぼんやりとした人の形です。影、といってもいいかな」

「はっきり見えるわけじゃないんだ」


 礼子が、小さな声で「はい」と頷いた。


「それで、あの廃病院には霊がいたのかい? 」

「そこなんですよ。壬生さん」


 運ばれてきたスパゲティミートソースを頬ばりながら、ノボルが横から口を挟んだ。


「礼子が言うにはですね」


 そこまで言ってから、ノボルが口の中のスパゲティを咀嚼するためか、一旦沈黙した。貴之はノボルが喋り出すのを辛抱強く待った。

 礼子は尋ねられたことには答えるが、自分から進んで話すようなタイプではないと短時間のうちに理解した。ここは、ノボルの方に喋ってもらった方が、色々な情報を聞き出させるに違いないと貴之は考えていた。

 口の中のスパゲティを食べ終えたノボルが、コップの水を一口飲んだ。


「あ、すいません。礼子が言うにはですね。テレビの特番で、ジューシーラブ×2の二人があの廃病院の中を進んでいる映像が映っている間中、ずっと霊気を感じていたそうなんです」

「霊気? 霊気ってどういうこと? 」

「礼子は、霊が見えるときもあるけど、見えないときもあるって、さっき言いましたよね。でも、見えてないときでも、霊がそこにいるという感覚だけは分かるんだそうです。あの番組中、礼子はずっと霊気を感じていたと言うんです。な、そうだよな? 礼子」


 礼子が頷いた。


「そこで、心霊マニアとしては、あの廃病院に霊がいるのかどうかを確かめる必要があったわけです。ですから、あの番組の翌日に、すぐ行ってみました」

「なるほど…。で、どうだったの? 霊はいたのかい? 」

「残念ながら、いませんでした。今日も含めて三回あの場所に行ってみましたが、全部空振りでした。礼子が何も感じないと言うんで、そうに違いありません」


 ノボルが、そう言って笑った。何の屈託もない笑顔だった。


「ノボル君は、礼子さんに霊能力があることを、なぜ絶対的に信じているのかな? 」

「信じることになったきっかけですか? 」


 貴之は、大きく頷いた。


「礼子と俺がつき合うようになってから、礼子が、俺の背後霊というか守護霊のことを教えてくれたんです」

「つまり、礼子君はノボル君の守護霊が見えたの? 」


 礼子が「はい」と小さな声で言った。


「それがですね。俺の守護霊は、俺の曾祖父にあたる人みたいで、礼子が教えてくれた顔の特徴や服装が、俺の鹿児島の実家に飾ってある曾祖父の写真と一致していたんです」

「今も、その霊はノボル君の後ろに見えているのかい? 」


 貴之の質問に、礼子が首を横に振った。


「いえ、いらっしゃいません。ある日突然、お姿が見えなくなりました」

「君が、霊が見えなくなったってことかい? 」

「わかりません」


 礼子が、小さく頭を振った。


「ところで、君たちはあの廃病を、今日を含めて三回訪れたと言ったね? 」

「はい」

「過去二回の間に、あの手術室にあった物が、何か無くなっていたりしてないかな。例えば、鏡のような人の形を投影するような物が」


 貴之が、二人に一番尋ねたかった質問である。彼らが、番組が放映された翌日に現場に行ったのなら、現場はロケ時のままであった可能性が高い。


「いえ、あの場所には手術台があるだけで、他には何もありませんでしたよ」


 ノボルが断言した。礼子もノボルの言葉に頷いた。


「でも、また何でまた、あの廃病院のことを調べているんですか? やっぱり、あの病院には何かあるんですか? あのジューシーラブ×2の牧野さやかに関わるような」


 ノボルが、目を輝かせながら身を乗り出してきた。

 どうやら、いくらマスコミが実名を伏せていても、世間では、さやかが起こした事件は周知の事実らしい。


「いや、そう言う訳じゃないんだ。あの番組は何の関係も無かったことを裏付けるために調べているんだ」


 貴之は、そう誤魔化した。


「関係あったのかもしれませんよ。だって礼子があの番組を見ていて霊気を感じ続けていたんだから。なあ、礼子」

 ノボルが礼子の方を向いた。礼子が、こくりと頷いた。




 ファミレスの前で二人と別れてから、貴之は東亜テレビに向かって車を走らせた。

 あの番組で流された廃病院で撮影された映像は、番組の尺に合わせて編集されたものである。貴之は、あの番組を録画していたが、何度見ても、その映像には何も違和感を感じなかった。

 あのロケ現場で撮影されたビデオテープは、東亜テレビの一室に、他のビデオテープと一緒に保管されている。その編集前のビデオテープを見れば、何か分かるのではないかと、貴之は考えた。

 あの手術室に、ノボルたちが言うように、姿を映すような物が何もなかったのならば、さやかはあの時一体何を目撃したのか。貴之は、それが知りたかった。


 東亜テレビに到着した時は、既に午後八時を回っていた。貴之にとって、今日はオフの日である。貴之が休みを取っていることは、一部の者しか知らない。従って、休みのはずの貴之が局内にいても、誰も変に思わないはずだ。それでも、関係者入り口に常駐している馴染みの警備員以外には、できるだけ知り合いに会わないようにと細心の注意を払いながら、貴之は目的の部屋に向かった。


 局内の廊下は、さすがに不夜城のテレビ局だけあって、多くの者たちが行き来していた。その中には、貴之の見知った者もいたが、貴之を気に止める者は誰もいなかった。


 一人だけ、貴之に気がついた者がいた。

 貴之は、すれ違い様、自分に視線が向けられているのに気付いた。貴之を見ていたのは、さやかと同じジューシーラブ×2にいた杏里という娘だった。ジューシーラブ×2というアイドルグループは、さやかのあの事件後に解散している。ジューシーラブ×2に所属していたメンバーは、それぞれ個人で芸能活動をすることになったと聞いている。

 マネージャーらしき人物の後ろをついて歩いていた杏里が、貴之に気がついて、ハッとしたように視線を送ってきたが、何も言わずに通り過ぎていった。


 貴之は、その杏里の後ろ姿を見送った後、再び目的の部屋に向かって歩き出した。

 目的の部屋に着くと、貴之は自分のIDカードを取り出した。東亜テレビのスタッフオンリーの各室は、一部を除いてカードキーで鍵を開けることができる。IDカードがそのキーになっており、開錠をすると、誰がキーを使用したかという記録が残る。その記録が残るのは嫌だったが、他に手だてが無い以上、IDカードを使って鍵を開けるしかなかった。

 部屋の中に入ると、貴之は手探りでドアの近くにあるスイッチを押した。灯りがついて室内が明るくなった。室内には、棚が所狭しとずらりと並んでいる。そのため、大きな会議室ほどもある室内が、手狭く感じられる。

 棚には未編集や本編集されたビデオテープが、何千本も保管されている。その中から、貴之は、あの廃病院のロケで撮影されたテープを探した。数多く保管されているテープではあるが、細かく分類分けされているので、比較的容易に目的のテープを探し出すことができた。


 貴之は部屋を出ると、今度は四階にある映像編集室に向かった。東亜テレビは、三階と四階にそれぞれ映像編集室を持っている。四階にあるものが、ドキュメンタリー番組で使われるような映像を編集する場所として使用されることが多い。東亜テレビの規則にあるわけではなく、不文律だが慣習となって暗黙のうちにそれが定着している。しかし、最近は、ドキュメンタリー番組の本編集の作業を、外部に委託発注することが多く、四階の編集室は使われることが少なかった。


 今現在、使われていないことを期待して、四階の映像編集室に着いた貴之は、その期待通りに未使用中であることを確認すると、再びIDカードを使って鍵を開けた。

 映像編集室は、開錠するのと同時に室内の灯りが点くように設定されている。部屋の中に入ると六畳ほどの広さの部屋に、編集用の機材が所狭しと置いてあった。


 貴之は、持ってきたビデオテープをセットすると、再生ボタンを押してモニターで確認した。さやかと杏里が、廃病院の玄関から手術室に向かって歩き、そして、さやかが手術室で失神したところまでを映した部分は、十八分三二秒あった。貴之は、その部分をDVDディスクにコピーした。




 自宅のアパートに戻るとすぐに、貴之はノートパソコンを起動させた。OSが立ち上がるまでに、缶ビールしか入っていない小さな冷蔵庫からビールを取り出し、それを半分ほど飲んだ。

 パソコンが完全に立ち上がると、貴之は持ってきたDVDディスクをパソコンにセットした。ディスクの内容を認識して、自動的に編集ソフトが起動した。


 貴之はパソコンの前に座ると、編集ソフトを操作し、映像をつぶさに見ていった。しかし、何度見ても映像におかしなものが映っているようには思えなかった。


「やはり、何も映っていなかったのかな…」


 ディレクターの加賀の指示で、何人もの編集スタッフが、不可思議なものが映像の中に映り込んでいないかと調べたビデオである。見落としがあったのかもしれないと貴之は考えたたが、どうやらそれは無さそうであった。

 貴之は、コマ送りで映像を見ることにした。全部を見るには膨大な時間がかかるが、それが最後の手段と考えた。これで、何も発見できなかったら、このビデオから何かを発見することは、諦めようと思った。貴之は半分ほど残ったビールの缶を片手に、コマ送りの映像を見続けた。


 それは、さやかと杏里が手術室前に着いたときの場面の部分にあった。

 さやかの身体だけが二重にぶれて映っているコマが2コマあった。

 ビデオの撮影は赤外線カメラを使って行われていたので、映像は少しぼやけてはいる。しかし、すぐ撮影スタッフのすぐ前を行く二人を映した映像なので、ぼやけているといっても些細なものだ。だが、その2コマに映っているさやかの身体は、明らかに二重にぶれているのだ。


 激しい運動をしているものを映したのなら二重にぶれて映ることがある。しかし、あの場面では、さやかと杏里のどちらもが、おそるおそるという感じで歩を進めていたのだ。大きくぶれて映ることなどあり得なかった。その直後のコマには何も変わったことはなく、そこだけが、奇異な部分だった。

 貴之は、そんな風に映った原因を考えた。しかし、いくら考えてみても原因を思いつくことはなかった。


(ドッペルゲンガー…)


 ロケバスの中で、さやかが尋ねてきた言葉を思い出す。

 貴之は、ドッペルゲンガーのような現象を信じることはないが、真っ向から否定しているわけでもない。心霊番組にも関わったことがある者として、霊という存在がいてもおかしくはないと考えている。実際に、霊が見えるという者もいるからである。


 ただし、霊そのものが、霊が見えるという人間が自分の頭の中で生み出した妄想なのか、それとも本当にいるのかという判断は、貴之には分からない。なぜなら、貴之は、霊というものを見たことが無いからである。写真や動画などの映像に映っているものならば見たことはあるが、映像処理技術か進歩した今日、合成ではないかと、先ず疑ってしまう。


 貴之は、ふと思いついて、上着のポケットからメモを取り出した。メモにはボールペンの走り書きで『ノボル、090・2×××・4×××』と書いてある。あの廃病院に、これからも足を運ぶかもしれないと言っていたノボルに、何か分かったことがあったら連絡をくれるようにとお互いの電話番号を交換したのだ。

 ノボルに連絡をとろうと思い立ったのは、ノボルの恋人の礼子に、この映像を見せようと思ったからだ。霊を見る力があると言っていた礼子ならば、映像を見て何か分かるかもしれない。不可思議な映像が映っていた原因が分からない以上、何かの手がかりを得ることができるかもしれないと思った。


 貴之は、スマホを取り出した。電話をかけようとして思い止まった。自分の腕時計を見る。デジタルの数字は午前3時を表示していた。映像を見ることに集中して、時間がこんなにも過ぎ去っていたことに改めて気がついた。午前3時ならば、いくら夜更かしの好きな大学生でも、夢の中にいる時間であろう。ノボルも寝ているに違いない。

 貴之は、自分も仮眠を取ることに決めて、ベッドにもぐり込んだ。




 貴之が寝ぼけ眼で自分の腕時計を見たとき、腕時計の表示は午前9時13分を表示していた。貴之は、慌てて起きあがると、ノボルに電話をした。ノボルがまじめな学生ならば、もしかするともう講義を受けている時間かもしれない。そうなるとノボルが電話に出ないことは十分に考えられる。果たして、数回の呼び出し音の後、ノボルの「はい、こちらノボルでーす」という間延びした声が聞こえた。

 幸いにも、ノボルは今日の授業は無いと言った。大学の創立記念日だということで、記念式典があるらしい。


「俺ら、一般学生にとっては、創立記念日は、ただの休日ですよ」とノボルが電話口の向こうで笑った。


 貴之にとって好都合だったのは、礼子も休みだということだ。


「ノボル君、君たちに見てもらいたい映像があるんだ。時間つくれないかな? 」


 貴之はそう打診した。


「どんな映像なんですか? 」


 興味をもったらしいノボルのはずんだ声が聞こえてきた。


「あの廃病院でのロケ映像だ。テレビでは放映してない部分だ」

「えー、そんなのがあるんですか? ぜひ見たいです。あ、でも、今すぐには無理です。今から礼子と映画を見るんで。映画が終わってからならいいですよ。映画が終わるのが、十二時過ぎなので、ちょうど昼飯時だし」


 どうやら、昼飯をたかるつもりらしいと、貴之は気付いた。


「いいよ。昼飯おごってあげるから、とにかく会って映像を見てくれないか? 」

「えー、おごってもらえるんすか。悪いなあ」


 少しも悪く思っていないような嬉々とした声で「礼子、壬生さんが昼飯おごってくれるってよ」と、傍らにいるらしい礼子に報告しているノボルの声が聞こえた。


「じゃあ、映画が終わったら会おう」


 ノボルたちと落ち合う場所と時間を打ち合わせて、貴之は電話を切った。

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