第五話 旅立ち?
ひょっとして一話一話がかなり短いのではないか……と思い始めた。
少しふらつきながら立ち上がる狼を眺める。
「あぁ、これからどうなるんだろ。
体無くなっちゃったし。成仏とかするんだろうか…。」
狼のひくひくさせている鼻にガンを飛ばし、仰向けに寝転がる。
朝焼けに染まる空を黒い手が遮った。
頬にひんやりとした感触がする。
「君だけだよ。幽霊になった俺をかまってくれる奴は。
出会った時、一目見てピンときたよ。君はマイフレンドだってね。」
黒い手をひしと掴むと、黒い手はするりと離れていった。
(何もしなかったら近寄ってきてくれるのに、こちらから行くと離れてしまう。女子って難しい)
上半身を起こし狼の方を見ると、重い足取りで森の奥へ向かいだそうとしていた。
その弱弱しい後姿に叫んだ。
「食い逃げとか卑怯だぞ! 今度会ったら絶対どうにかして殴ってやる!」
俺は息を継ぐと、さらに声を張り上げた。
「……俺の肉を食っときながら、そこらでのたれ死ぬなんて許さんからな!」
伝わらない言葉をぶつけ終わると溜息を吐き、腕を組んだ。
「ほんと、これからどうなるんだろ。俺……」
足元に漂う黒い手に向かって「どうしよっか、クロちゃん」
などと呟いていると急に体のバランスが崩れ、空中にひっくり返った。
「え!?」
驚く俺にはお構いなしで霊体は森の奥へと引っ張られる。
「まさか……」
俺を引っ張る先にいるのはあの狼。
どうやら俺はあの狼に憑いてしまったようだ。