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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第三章 クロ
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第四十二回 おかえり

(ちっくしょぉぉおお! 動けぇぇええ!)

 あらん限りの力を振り絞りシロちゃんを動かそうとするが、シロちゃんは俺の意思に反してカンダとイーサンに攻撃を続ける。

(あぁ、もうだめだ。多分俺には無理だな。ギン、後は任せた)

(ふん。初めからお前なんぞに期待しておらぬわ。せいぜい我の邪魔をせず大人しくしておれ)

 ギンがそう言うと、イーサンに追撃をくらわせようと腕を振りかざしていたシロちゃんが急にバックステップをして距離を取った。

(こんなものか。 もう少しだな)

 ギンの少し弾んだ声が頭に響く。

(今、お前が動かしたのか! どうやったんだ? コツとかある?)

 まさかこんなに早く動かせるようになるとは思わず、テンションが上がってきた俺が気合を入れなおしていると、シロちゃんの舌打ちが聞こえてきた。

「どうせ何もできない虫けらだと放っておいてやったのに……鬱陶しいわね。先に飲み込んであげる」

 どうやら俺たちに気が付いた魔王が左手の剣を引っ込めると、その手をシロちゃんの頭に添えた。

「魔王に取り込まれるのよ。光栄に思いなさい」

(な、何かくる!?)

 思わず身構えるが、しばらく待てども何も起こらない。

「……どういうこと!? 精神汚染が効かない!? 吹けば飛びそうな、こんな弱い思念しか感じとれないのにっ」

 シロちゃんの口から魔王の焦ったセリフが聞こえてくる。

(え、魔王なんかやってた? 全然わからなかったんだけど)

 俺がギンに聞くと(我は今、お前に乗り移っておるのだ。お前が感じ取れぬことは、我にもわからん)と返される。

「くっ、これでどう!?」

 またもや魔王が俺たちに対して何かしてきているようだが、俺にはシロちゃんが気合を入れて仁王立ちしているようにしか感じられない。

 その隙を好機とばかりにカンダとイーサンが攻撃を仕掛けてくる。

「えぇい、鬱陶しい!」

 魔王がシロちゃんを動かして勇者組の相手をし始めるが、先ほどとは打って変わり、繊細さの欠ける戦い方になっている。もしかしたら、俺たちに精神攻撃をしつつ、カンダ・イーサンの相手をしているのかもしてない。

(もしかして、今チャンスなんじゃね?)

(あぁ)

 そう答えたギンはシロちゃんの体の主導権を奪いに行く。

「くそっ、どいつもこいつも邪魔ばかりぃ!」

 シロちゃんの口から汚い言葉が吐き出される。

 すると嘲笑と共にギンの言葉が脳内に響いた。

(未練がましいぞ。過去の残滓は大人しく……)


「散っておけ」

 シロちゃんがそう呟き、迫り来ていたカンダの大剣を最小限の動きで躱した。

(よし! 乗っ取り返した!)

 俺は思わず内心ガッツポーズを決める。

(ギン、早くクロちゃんの元へ!)

「わかっておる」

 ギンはイーサンの飛ばしてきた札をバク転で素早く回避すると、そのままクロちゃんに向かって走り始めた。

 部屋の奥にいたクロちゃんがこちらに向かって手を広げる。

(クロちゃん――)

 シロちゃんの右腕がクロちゃんへと伸びた。

「――クロちゃんっ!」

 足がもつれ、クロちゃんへと倒れこむ。

 重なる瞬間、クロちゃんの嬉しそうな表情が見えた。

「おかえり!」

「ただいま!」


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