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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第一章 ギン
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第三話 初めまして

ヒロインの登場です。

1日が過ぎた。

俺を埋めた騎士たちの話によると、市民の不安を煽らないよう俺のことは秘密裏に葬られたようだ。

今朝、神官っぽいおじいちゃんが来て聖水っぽいものを振りかけて去ってから、その後、人はおろか動物も見かけることはなかった。


正直すげぇ暇だった。


霊体なら疲れなさそうだし、異世界物見遊山にでも出かけようとか思ってたけど、どうやら俺はここから動けないらしい。白い建物から引っ張り出されたときのことを考えると、たぶん霊体の俺は俺の肉体からほとんど離れられないようだ。肉体から2メートルほどは自由に移動できるようだが……


溜息をつき、空を見上げた。

木々の間から見える星空は地球のものと比べて星の数が多い。ついでに月も多い。2個もある。

このままずっとここに留まっていなければならないのだろうか、と気を落としていると視界の端にうごめくものが映った。


風に揺れる植物ではない、自ら意思を持って動く、

それは真っ黒な人の手であった。


「うわ、こっちに近づいてくるっ!」

地面から生えているように見える黒い手は骨格を無視した動きでこちらにずるずると近寄ってくる。

「なんか生き物に会いたいとは思ったけどこれは違う!」

我ながら情けない悲鳴を上げて後ずさるも、少ししか動けない俺はついに足首を掴まれた。

「うわああぁぁ! 触られた! なんかひんやりしてる!」

徐々に這い上がってくる手を振り払おうと足を動かしたとき、ふと気が付いた。


(なんで触れられているんだ?)


俺は霊体になってから今まで認識されず、何かに触れることもできなかった。

しかしこの黒い手は俺を掴んでいるし、ひんやりとした感覚まで与えてくる。


(もしかして…)

俺は恐る恐る黒い手に触れた。そう“触れた”のだ!

「と、とったどー!!」

黒い手をかかげると嬉しさのあまり叫んでしまった。


誰にも認識されず、何にも触れられないことは、自分で思っていた以上に寂しかったようだ。

それがかなり不気味だけど俺を認識して触ってくれる人 (ではないが)に会うことができたのだ!

「なんだか涙がちょちょぎれるぜ」

よくよく見るとこの黒い手は俺より小さくてほっそりしている。

「きっと女子の手だな!」


異世界ではじめてコンタクトを取ったのは謎の黒い手だった。


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