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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第二章 シロ
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第二十七回 イーサンとの対話

この辺りから主人公の蚊帳の外っぷりが発揮されてしまいます。

主人公の一人称視点で物語を書いていますので、主人公がわからないことはわからないままで話が進んでいきます。

後々説明を出したり(説明しないものは話の本筋とあまり関係なかったり)しますので、今のところは軽く流しながら読んで下されば……と思っています。

「ぎゃぁああああああぁぁぁあ! いっだぁあああぁぁぁ……くない?」

フジさんの口から“転移”の単語が聞こえた後、視界が真っ白になり浮遊感が襲った。

勇者召喚の時のことを思い出し無意識に叫んでしまっていたが、徐々に戻ってきた視界にはちゃんと形を保った貧相な体が映っている。

「ちゃんとつながってる! 俺の体!」

嬉しさのあまり自分で自分の肩を抱こうとしたが、右手と左腕がないことを思い出し、上がっていたテンションが平常値まで下がる。

冷静になるとギンとフジさんの視線に気が付き、咄嗟に入れそうな穴を探してしまう。

そこで自分がこの世界に来た始まりの場所に立っていることに気が付いた。

白い神殿風の建物に待機していたであろう10人ほどの神官がシロちゃんを見てイーサンに話しかけた。

「イーサン様、この白い少女は……?」

「ん? あぁ、この子は……私の姪っ子だよ」

「え、シロちゃんってイーサンの親戚だったのか!?」

イーサンの答えに驚きを隠せず叫んでしまった俺をフジさんが訂正する。

「嘘に決まってるでしょ。ほら、あれ」

フジさんの指さす方を見ると、イーサンの右人差し指にはめられた指輪が紫色の光を放っていた。

イーサンに話しかけた神官の目は指輪と同じ色になっている。

「あぁ、そうだったのですか。」

神官はそれだけ言うとすたすたと去っていった。

「せ、洗脳?」

俺のつぶやきをフジさんは律儀に拾ってくれる。

「そうね。ただ、何でこんなことを……?」

フジさんがまた悶々と考え始めるとイーサンと勇者御一行に動きが出た。

「イーサンさん。この女の子は……」

ハンマーから抜け出そうと剣を出しまくり、ヤマアラシ状態になっているシロちゃんを見て、世川が尋ねる。

「少し気になることがあってね。国王には後で自分が話すから、君たちは明日の旅立ちに向けてしっかり休むといい」

「はい。あの、今日は火葬に連れて行ってくださり、本当にありがとうございました」

世川は丁寧にお辞儀をしたのち、シロちゃんの方を向いた。

「君も、昨日はいきなり攻撃してごめん。あの時は余裕なくって……それじゃ」

勇者御一行はシロちゃんを咥えているハンマーをイーサンに託すと神殿風の建物を去っていった。

彼らを見送ったイーサンはシロちゃんに目を向けるととびっきりの笑顔で言った。

「じゃあ、これから僕の研究室まで来てもらおうか!」

こんなに人を不安にさせる笑顔を見たのは初めてだった。




蠟燭が鉄格子の向こう側で鎧を着込んだイーサンをうすぼんやりと照らし出している。

「君のその剣、聖剣だよね」

「お腹すいた」

「私は魔物使いをしているのだが、前々から完璧な使役獣がほしくてね。自分でつくることにしたんだ」

「食べたい」

「体は手持ちにある素材で作れそうなのだが……。今私に必要なのは、つくった体に魔力を流し、コントロールするためのコア。これが難しくてね。そこで……」

「ごはん」

「そう、君の聖剣ってわけだ! 聖剣が聖剣たる、魔王すら封じることが可能な『核』、その作り方を教えてもらいたいのさ!」

「食う!」

自分の世界に入ったイーサンは太い鉄格子に噛り付くシロちゃんに気づいていない。

案の定、全く会話の噛み合わない2人である。

「こんなのじゃ埒が明かないわ。君、この娘の中に入って」

しびれを切らしたフジさんが美少女特有のものすごい目力で俺に指示を飛ばしてくる。

そそくさとシロちゃんに近づく俺の背後で「情けない」とギンの呟く声が聞こえた。

(なんとでも言え。自分が情けない人間だってことは小学生の時に自覚したさ)

鉄格子で鉄分補給しているシロちゃんに手を伸ばす。

シロちゃんにめり込んだ右腕から伝わってくるひんやりとした感触にクロちゃんを思い出す。

(あぁ、クロちゃんと過ごしていた日々は静かで穏やかだったなぁ)



シロちゃんに憑依した直後、お口の中に鉄の味が広がってくる。

「うぇ、不味い……」

格子から顔を離しつつ、格子の向こうでいまだに熱く語っているイーサンを見る。

「イーサンと交渉して。話してほしいことは私が喋るわ」

後ろからフジさんの毅然とした声が聞こえてくる。

「どうして自分で取り憑いて話さないのさ」

「……無理よ。この娘に取り憑いたら自我なんて吹っ飛んでしまうわ」

「え、それどういうこと……?」

フジさんの方へ振り返るが、フジさんとは目が合わない。

「さすが独眼のアージェンルーヴ、と言いたいところだけど……もう長くはないわね」

フジさんはギンに向かって話していた。

「無理に逆らわない方がいい。苦しむわよ」

フジさんはそれだけ言うとこちらに目を向ける。

フジさんの影で「ふん、こんな残滓に飲まれる、ものか……」と顔を背けるギンが見えた。

(俺放置で話が進んでいく……)

フジさんがイーサンの方を向くよう俺に指示を出す。

「さぁ、イーサンに伝えて。『お望み通り、核の作り方を教えてあげる。この前魔王、お前たち人間が“庭園の管理者”と呼んだ者が』と」


今日はあと2話投稿します。

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