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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第二章 シロ
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第二十五回 思わぬ再会

「お前、体を乗っ取る方法を知っているのではないか!」

ギンが怒りを露わにして言葉を継ぐ。

「我に代われ! その娘殺してやる!」

ギンの目は本気である。

「ま、待てよ、やってみたらたまたま乗っ取れたんだよ! あと、シロちゃん殺しても成仏できるとは限らないぜ」

俺(シロちゃん)が慌てて弁解するとギンもまた口を開いた。

「この娘に捕らえられているのだ。殺してしまえば……」

「もしそうだったら俺はとっくにお前と離れて浮遊霊してるよ! 殺したらその場から動けなくなるだけだろ」

俺の反論にむっとした様子のギンは「ではどうするのだ」と呟く。

そこで俺はシロちゃんのつつましい胸を張り、ギンに答えた。

「だから、何か知ってそうなフジさんに聞きに行くんだよ!」



俺は空中で仰向けにひっくり返っていた。

「森歩くのつれぇ……迷うし。帰宅部部長だった俺には無理だこれ」

2時間ほど森を彷徨った後、俺は諦めてシロちゃんから出ていた。

(もう、いいや。このままシロちゃんの森ツアーを気楽に楽しむ人生を過ごそう)

隣でギンがゴミでも見るような視線を送ってくるが、気にしない。

「人には向き不向きがあるんだよ。人生どうにもならん時は諦めて他のことやるに限る」

左腕は無いので、右腕だけを頭の後ろで組み、日向ぼっこを開始する。

適度に光を遮る森は非常に心地よい。幽霊なので睡眠欲はないが、このまま眠ってしまいそうである。

俺が微睡んでいるところをギンの蹴りが炸裂した。

「もうお前は当てにせん。体の乗っ取り方を教えろ」

ギンの前足が俺の腹を圧迫する。

「ま、待て! わかったから! とりあえず足をのけろ!」

ギンの重い脚から解放された俺は腹を抱え込んでうめく。

(くそっ、俺の気ままな幽霊生活を邪魔しやがって。早く成仏してくれた方が俺のためにもなるな……)

俺はのそのそと起き上がるとギンに説明する。

「いいか、多分相手を乗っ取るには気持ちを同調させる必要がある。その点、シロちゃんなら簡単だ。基本腹減ったとしか考えてない」

「つまり?」

「相手の体に触れてる方が気持ちがわかりやすいから、相手に触れて同じことを考える」

俺からやり方を聞いたギンはかなり嫌そうな顔をしてシロちゃんに前足をめり込ます。

ギンが目を閉じて少し経った後、顔を歪めてゆっくりと足を引っ込めた。

「どうしたんだよ。体乗っ取らないのか? 人と獣だと勝手が違うのか」

俺の質問にギンは顔を背けたまま答える。

「お前、あの中から小娘の声が聞き分けられるのか?」

質問を質問で返される。しかも質問の意味が分からない。

「あの中ってどの中だよ? シロちゃん腹減ったしか言ってないだろ?」

ギンが俺の目をじっと見つめてきた。

生前から人と視線を合わせるのが苦手だった俺にはかなりきつい状況だ。

耐えきれず視線を逸らすとギンがおもむろに口を開いた。

「我が人里までの道を教える。お前が小娘を連れて行け」

ギンの言葉に俺の心が浮立つ。

「まじ! 道教えてくれんの!? これで早く街に着け……

って知ってんなら早く言えよ!」

俺のノリ突っ込みを華麗にスルーしたギンは「あっちだ」と前足をかざした。



俺は空中で仰向けにひっくり返っていた。

「お前、半日も、かからないって、言ったじゃないか!」

俺が息も絶え絶えに抗議するとギンがめんどくさそうに答えた。

「我の足で、だ。ん、おい、小娘がまた別の方向へ行っているぞ」

シロちゃんに引っ張られ景色が移ろって行く。

「あぁ、俺の努力が……」俺が静かに涙を流しているとギンの蹴りが顔面に入る。

「いって! 何するんだ!」

俺が起き上がりギンの方を向くと、ギンはシロちゃんの行く先をじっと眺めていた。

「いる……」

ギンが静かに呟く。

「何がだよ……」

俺が目を凝らしても鬱蒼とした森の風景しか見えない。

ギンの索敵範囲はかなり広いので俺は気長に待つことにした。

シロちゃんがそこらへんにいたスライムっぽい生き物を拾い食いしながら歩くこと10分、木々の奥から何人かの話し声が聞こえてきた。

「これって!」

ギンの口が重々しく開いた。

「……人間だ」


千鳥足で歩くシロちゃんの先に少し開けた場所が見えた。


そこはギンの最後の戦場だった。

あちこちに散らばっていた死体は綺麗に並べられ、それらを囲むように生きた人間が十人弱集まっている。

そして、その中には――


「え、世川たち?」


思いのほか早くフジさんと再会できてしまった。


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