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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第二章 シロ
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第十七話 開戦

大木の根元に穴を掘って寝ていたギンの耳がぴくっと動いた。

素早く体を起こすと歯茎をむき出し唸り始める。


寝起きいいな、と呑気な感想を抱いていたが、右目がちりちりと熱を持ち始め、ただ事ではないと考えを改める。

(ギンの古傷がうずいているのか……また人間かぁ)

右目をひんやりしたクロちゃんで覆いながら注意深く周囲を見渡す。

はるか遠くに淡く光るものが点々と見えた。首をぐるりとめぐらすと、計12ほどの光が確認できる。

「もう囲まれてんじゃん! しかも、じわじわ距離詰めてきてるし!」

なんで気が付かないんだよ、と自分のことは棚に上げて呟いている俺の下でギンが動いた。

一番大きな光を放つ方向へ鋭く吠える。

咆哮が轟き、数十m先の光へとぶち当たった。光は激しく点滅するが、消えることはなかった。

今の攻撃で倒せなかったと察したギンは次に空へ向かって再び吠える。

遠吠えに大地が共鳴し、沼地に変わっていく。

沼はものすごい速さでギンを囲む光に到達するもその一歩手前で止まってしまった。

ギンが驚き、目を見張っている。

光は沼を押し返しつつギンへとさらに距離を詰める。

「え、なんか今回もやばい感じか!? お、おい、逃げようぜギン!」

俺がギンに弱気な提案をしていると、近づいてくる光の方がら声が聞こえてきた。

「素晴らしいな。これだけ詰め寄っているのにまだ動けるなんて。さすがアージェンルーヴだ。これは何が何でも捕まえなくて――」

男のイケメンボイスを遮るようにギンが男に向かって狼パンチを繰り出した。

ギンの爪と、男の持つ光る札が貼られた盾が火花を散らす。

ギンの狼パンチは人の首を軽くぶっ飛ばすほどの威力があるが、その一振りでも盾に傷はつかず、光る札を半分ほどしか裂くことができなかった。

ギンの目の前にいる男はこの様子を見て実に嬉しそうに笑っている。

「一撃でこの威力! 結界が破られるな……」

どうやら、このセリフを聞く限りこの男の方がピンチのようであった。

次の攻撃でギンが札を完全にかき切ったと同時に男が「フジ君!」と叫ぶ。

男の後ろから現れた美少女の手が一瞬きらりと光った。

ギンが反撃を警戒して素早く下がる素振りを見せるも、急に止まり動かなくなる。

「ギン、何やって……」

俺がギンに視線を戻すと、見覚えのある細い光がギンの右目を狙っているのに気が付いた。

「これ、横山(仮)のっ」

男の声が響いた。

「一斉射撃!」

ギンのいた地が爆ぜ、激しい閃光で視界が塗りつぶされた。


「おい、ギン! 大丈夫か!」

ものすごい威力に2,3mほど吹っ飛ばされた俺は、慌ててギンの方に振り向く。

ギンまでスプラッタなことになっていたらどうしよう、という焦りは杞憂だったようだ。

えぐれた大地にしっかりと立つギンはいつの間にか重厚な黒い鎧を纏っていた。


「え、何それ、かっこいいな!?」

思わず拳を握り、目を輝かせていると、他所からも熱の入った声が聞こえてくる。

「あの一瞬で泥を鎧に……!? はははっ! すごい、すごいぞ!」

肩に見覚えのある瑠璃色の小鳥を乗せた男は一斉射撃で仕留められなかったのを悔やむどころか、喜んでいた。興奮のせいか鼻息が荒く、なんとういか、非常に残念なイケメンである。

「どうしますかイーサン様。あの鎧は……」

すごくモブっぽい兵が男に話しかけている。

イーサンと呼ばれた男が得意げに答えた。

「あぁ、あのアージェンルーヴが作り出す泥は魔力が練りこまれていて、魔法を弾く。だけど、今はフジ君が足止めをしてくれているからね。奴の魔力が枯渇するまで攻撃を続けよう」

「はっ」

持ち場に戻る兵を見送ったイーサンという男が手を掲げる。


「第二射、よーい」



今日はもう一話上げます。

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