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主人公は蚊帳の外で、  作者: 鶴次
第二章 シロ
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第十六話 不穏な影

最後の方、視点が変わってます。

「またかよ!」

ギンは5,6人ほどのパーティーらしき冒険者たちを蹴散らしてゆく。

以前襲った勇者ご一行は精鋭揃いだったようで、今回の冒険者たちはほぼ何の抵抗もできずに全滅してしまった。

最後の一人の首を噛み切ったギンはそのまま死体を食べ始める。

「うわ、やっぱそういうことするのな……」

全力でこの場を立ち去りたいが、ギンから離れることはできない。

ギンからできる限り距離を取り、左手と右手のクロちゃんで顔を覆う。

「あぁ、俺のほのぼの異世界ライフが遠のく……」

ばりばりぼきぼきぐちゃぐちゃとなんともスプラッタな音が響く。

目を閉じ、耳を塞ぐも完全にシャットアウトできるものではなく、脳内でショッキングな情景を想像してしまう。

その時、耳元で何かが聞こえた。


――……なぁんでぇぇ え、どおし、て……いだぃい!あづいィ!――


「!!!!」

(なんだ! 今のっ!?)

驚きのあまり体勢を崩した俺はギンの体にめり込む。

すると眼前にギンが食い散らかしている冒険者たちが広がった。

「うわわぁ!」俺は慌てて後ずさる。

「も、もしかして、こいつらの声……とか?」

(じゃあ俺と同じ幽霊仲間ができるのか?)

8割の恐怖と2割の好奇心であたりを見渡す。


死体を覆う黒い靄みたいなのがぽつぽつと見えた。

「あ、あれが……」

黒い靄がゆっくりと立ち上がり、ギンをめがけてゆっくりと歩いてくる。

ギンには黒い靄が見えないようで、呑気に死体をかじっている。

「う、おい! なんか来てるぞ! こっち来てるぞ!」

ギンを揺さぶろうにも揺さぶれない俺の手は空振りばかりしている。

黒い靄がギンへと手を伸ばす――

と思ったら靄はするすると解け、何本もの黒い手が現れた。


「クロちゃんかよ!」

どうやらクロちゃんたちが固まってできた靄だったようだ。


「何してんのさ、クロちゃん! めっちゃびびったんですが!?」

怨念たっぷりの幽霊仲間が現れたかと身構えたが、どうやら黒い靄はクロちゃんたちの集合体であった。

今、クロちゃんたちは解散してあちらこちらで風に揺られてうねうねしている。

右手のクロちゃんに問いかけても答えはもらえない。

(……クロちゃんは喋れないし、聞いても仕方ないんだけど)

「ほんとに君は謎多き女の子だよ」


(にしても、あの声の主たちはどこに行ったのか……)

陰りゆく森にギン以外の生き物の気配はない。

(やっぱあれはこの冒険者たちの声だったんだよな? え、何でいないの。もう成仏したのか?あんなに恨みがましい感じだったのに。意味わかんねぇし、マジこえー……)


何も知らないギンは5人ほどいた冒険者たちを腹に収めると、ゆっくりと歩き始めた。

食べる前より、その足取りはしっかりしたものになっている。

「食わなきゃ生きていけないことはわかるんだが……なんだか複雑な気分だ」

寝床を探すギンの上で俺は唸っていた。




朝焼けに染まる森に足音が響いた。

「アイリス、ここで間違いないな?」

「クソが! 誰がてめぇみてぇなナルシスト野郎にっ!!」

男が指を鳴らすと、瑠璃色の小鳥の足環からバチっと電気が走った。

「せっかく綺麗な姿なのに言葉遣いで台無しだよ、アイリス」

男は肩に乗っている小鳥に向かって話しかけた。

「ぐっ、畜生! ……あぁ、ここだ! ここにいたぜぇ……」

肩の小鳥は忌々し気に言葉を洩らす。


そこへ腰に短剣をさげ、比較的軽装備の少年が男に尋ねた。

「ここに奴がいたんですか、イーサンさん」

男は頷くと首に下げていた親指ほどの小さな笛を吹いた。

直後、目の前の草むらが大きく揺れ、イタチのような小動物が飛び出してきた。

男は肩にのぼってきたイタチに声をかける。

「カトレア、追えるね」

カトレアと呼ばれたイタチは地面に降りるとあたりを嗅ぎまわり、動き始めた。

「さあ、行こうか。どうやらあまり遠くには行ってないようだよ」

「……イーサンさん、僕たちの同行を許可してくださり、ありがとうございます」

先ほどの少年を含めた4人の若者が男に礼を言って後に続く。

「いいのさ、セガワ君。そのかわり……」

「はい、わかっています。独眼のアージェンルーヴ捕獲の協力ですね」

「そ、頼んだよ」


朝露に足を濡らしながら15人ほどの小隊が森をかき分け進みはじめた。



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