第十話 続、戦闘
なんか短かったのでもう一話投稿。
本来ならあの魔法は素早い狼に当たらなかっただろう。
しかし――
「やっぱり!」
視界が戻ると、そこには魔法が直撃したであろう左肩から血を流す狼がいた。
騎士からのびる光は繋がったまま。このせいで動けなかったようだ。
「くそっ、ふざけんなよ! ここでこいつがくたばったら、俺また動けなくなるんだぞ!そんなの冗談じゃねぇ!」
俺は狼を繋ぎとめる光に渾身のチョップを振り降ろす。
当たる直前「あ、そういえば触れねぇじゃん……」と思い出したときだった。
振り下ろす手に確かな抵抗と鋭い痛みが走る。
「なっ!?」
鎖が勢いよく引きちぎられるかのような音と共に、俺はチョップの勢いそのまま空中で一回転した。
「こいつ! 俺の捕縛術を破りやがった!?」
「おい、どうにかして持ちこたえろ! まだ次は打てないぞっ!」
焦る2人を睨み付ける狼。
目が回っている俺は頭を振ると、地面が点々と淡く光っているのに気が付いた。
「なんだ?……あいつの足跡か?」
狼が低く吠える。
その途端、狼の足跡が光を増し、巨大な魔法陣を描き出した。
「これは!?」
「あ、足が!」
乾いていた地面に水が染み出し、あたりが深い沼地に変わる。
300mほど離れたところでは足を取られる神官と4人の姿も見えた。
「こいつ、獣のくせに魔法使うのかよ! 羨ましいな!」
俺の僻む声を背に狼は動けない2人を仕留める。
やはり、というべきか狼は沼に足を取られないようだ。
肩の傷を感じさせない、実に鮮やかな手際だった。
狼は残りの5人に向かって走る。
「くっ! 私が時間を稼ぎます! お渡しした転移札でお逃げくださいっ!」
神官が4人に声をかけ、何かを唱え始める。
直後、神官に向かって跳躍した狼が何かにぶつかった。
透明の半球状のシールドが神官と4人を覆っていた。
しかし、今の狼の突撃で大きな亀裂が走っている。
狼が忌々し気に唸ると前足が光り始めた。
ぬかるんだ地面を蹴ると輝く前足を大きく振りかぶる。
ガラスが割れるような音が沼地に響いた。




