第九話 戦闘
この狼は人間を憎んでいるようだ。
狼から伝わってくる感情が焼けるように熱い。
俺は17年間結構のんきに生きてきた。
友人関係は狭く浅く。学校以外は家でのんびりゲームや漫画を堪能する日々。
だらだら過ごしてるだけで金が入ってこないかなーなんて夢を見ながら生活していた。
だから、この狼の声が頭に響いたとき、こいつすげえなって感じた。
俺にはこんな熱い感情を抱き続ける体力(気力?)なんて持ってない。
ずたずたに引き裂かれ、幾重にも重なる死体の上に立つ狼は、残っている兵をにらむ。
俺は死体の中に見覚えのある顔を見つけた。
俺を森に埋めたやつらだ。
よくよく見ると、この隊の人間はあの白い建物にいた人たちと関係があるようだ。
召喚の時の激痛を考えると、こいつらに対して憐みの感情は浮かんでこない。
買ったジャ○プが読めなかったことを思い出して、文句の1つも言いたくなる。
(だけど俺、この気ままな幽霊ライフが結構気に入ってるんだよな。
さすがに「ざまぁみろ」とまでは言えねぇな……)
狼が残った兵に突っ込む。
鎧姿の騎士が2人、ローブを着ている魔導士っぽい人が1人、神官っぽい人が1人。
奥にあと4人見える。
狼は圧倒的な速さで相手を翻弄している。
騎士2人の攻撃を躱し、狼パンチで1人の首を飛ばす。
さすがに動揺も収まり、残った騎士は魔導士とうまく連携を取り、攻撃を繰り出してくる。
(魔法初めて見たけど、よくわからん光の文字が浮かび上がったり魔法陣出したり、ちょっとかっこいいな)
自分も真似してファイヤーだのアイスストームだの唱え、
狼が2人を相手している間に神官が4人を連れて離れていく。
狼がそのことに気が付き、視線を外す。
すかさず狼と交戦中だった騎士が何か叫んだ。
瞬間、騎士の体が光り、その光が狼へと伸びて騎士と狼を繋いだ。
間を置かず、魔導士がひときわ強い光を放つ魔法を繰り出す。
激しい音と光に視界が奪われた。




