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鈍色のパラディン  作者: チノフ
二章~王都立身編~
64/67

幕間~????~

鳴らせ、鳴らせ、太鼓を鳴らせ。


謳え、謳え、英雄達を謳え。




直接闘うのは男の仕事だ。女子供は戦場を彩るのが仕事だ。


この戦、恐らく負けるであろう。それに最早隠れる場所もない、最後の戦故女子供も戦場にいる。


こちらの数は少ない、相手は多い上に○○○○の眷属だ。


我らは加護を失って久しい、残った物はこの肉体と武具のみ。


対して奴らの加護は生きている。燐光を纏った姿はなんと美しいのか。畏怖さえ抱かせる。


だが逃げる訳には行かぬ、ここで引いたら我らは我らではなくなるのだ。



闘争を恐れた巨人族など生きている価値もない。





              ~~~




投槍にて戦端が開かれてから随分立った。


敵の首を力任せに叩き落し、大戦斧を担ぎ直す。

敵は多い上に強い。既に数人、こちら側の戦士がやられた。

個々の戦闘力では僅かに我らが上回るだろう。

だが相手は常に二対一に持ち込んでくるせいで十全の力を発揮できない。


そうしているうちに視界の端で一人の味方が腹を貫かれた。

こちらが見ているのに気付いたのか、漢らしい笑みを浮かべて叫んだ。


「長!我はこれより冥府に参ります。お先に!」


そう大声で叫ぶと己の傷等気にせず、敵の命を一つでも奪おうと武器を振るいながら駆ける。駆ける。

死力を振り絞り駆けぬけ。膝から崩れ落ちるように倒れた、駆ける最中で傷つけられた体はぼろぼろだ。もう二度と立つ事は無い。

部族の中でも若い青年だった、勇猛果敢で女子供には優しい。立派な青年だった。

知らずのうちに一つ目から涙がほろり、と流れ落ちた。何故有望な若者が先に死に、己のような老兵が生きているのか。

悔しい、やるせない。そんな思いが沸いて来る。


だがここは戦場だ。その思いは敵にぶつければいい。


思いを込めて吼える、太鼓の音に合わせて吼える。三度目の咆哮は生き残り全てが吼える。


我ら例え最後の一人になっても闘ってみせよう――!


手始めに目の前に寄ってきた二人の首を一息で跳ね飛ばした。





            ~~~





起こされるまでもなく目が覚めた。

枕元には起こし損ねたデイジィが立っている。

前にもこんな事があった気がする、あれはいつだったか。

あの時も似たような夢……自分であって自分ではないような夢を見ていた。


「おはよう、めりーくん。今日は予選の日だよ」


「ああ、おはよう」


そうだった、大会の予選は既に始まっていて。スケジュールでは今日から一日一回のペースで戦う事になっている。

時間はまだ余裕があるが準備は早めにしておくにこした事は無い。


「デイジィ、鎧をつけるのを手伝ってもらえるか」


「勿論そのつもりだよ、アンジェは今日も朝から用事があるみたいだからね」


もうこの数ヶ月で鎧をつけるのにも慣れた。

兜を脇に抱え、武器を握る。どこか懐かしい感覚が過ぎったが忘れる事にした。



もう夢の内容は覚えていない。

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