22話
巻いた部分は幕間で補足していきたいと思います。
次の日からまた修行の日常へと戻る。
以前の内容に剣の修練や武技の習得、反復が追加され、
実地訓練と魔素稼ぎの為ダンジョンへは週一で潜るようになった。
ダンジョンでの稼ぎ方はこうだ、まず浅めの階層で大音量の<咆哮>を使い、わざとモンスターを集める。散発的に集まってくるモンスターを1撃、あるいは盾で受け止めてからの2撃で仕留める。連戦しながら数が減ってきたら再度<咆哮>で再沸きしたモンスターを集めなおす。それを1日中繰り返すだけだ。日が暮れる頃には魔石と素材が山のように積みあがっているのでそれを回収して帰る。基本的に学習しないモンスターが相手で、かつ体力に物を言わせた無茶な方法ではあるがその効率は素晴らしく、一度潜れば1000匹以上の戦果を上げてくる、同ランクの冒険者と比べ、数倍の多さなので最初は驚かれたが、数ヶ月する頃には周りも慣れ、名物と化していた。
宿に帰ってからも少し前と変わった。
血と汗を井戸の水で流すのは変わらないが、アンジェとデイジィの部屋の浴室を交互に使うようになり、その日はその部屋で身を寄せ合いながら寝るようになった。
女将は3人の関係の変化に気づいたが、踏み込む事はしなかった。
そして光陰は矢の如く過ぎ去りカールとの出会いから半年、修行を始めてから9ヶ月が経とうとしていた。
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「パーティの結成が認められない?どういうことだ。」
清算中に呼び出されて告げられた内容にメリッサは思わず敬語も忘れてギルドマスターに詰め寄る。
無事Cランクに昇級したメリッサは兼ねてからの約束通り3人でのパーティを申請したのだが、ギルドマスターにより一蹴されてしまったのだ。
「クソジャリ、落ち着け。敬語忘れてんぞ。
いいか、まだ修行は終わってない、約束の日にちまでまだ3ヶ月近くある。
今結成を認めたら3人でダンジョンに潜ろうとするだろう、それは悪手だ。」
「後3ヶ月経てば認めてもらえるのですか。」
「おうとも。俺ぁ嬢ちゃん達と最高の前衛に仕上げるって約束したからな。お前も随分育った、斧槍も大盾も十分以上に使いこなせてるし剣の腕もそこらのBランク程度なら勝てるだろう。だがな、お前が育ってる間に嬢ちゃん達も少しずつだが育ってるんだ。ギルドランクこそそのままだがそろそろ最終職に到達してもおかしくないだろう、その時にお前が1次職のままだと逆に足を引っ張る事になる。それにお前にはまだ足りない部分があるからな。この三ヶ月でそこを埋めてからだ、パーティは。」
「・・・分かりました、明日からもご指導ご鞭撻、よろしくお願いします。」
「おう、ダンジョン潜って疲れたろう、しっかり休んで明日に備えろ。」
不承不承納得したメリッサは会議室を後にした。
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「あ、メリッサさん。清算終わってますよ。」
ロビーに戻るとニーニャの溌剌とした声が聞こえた、彼女とももう長い付き合いだ。毎回大量の魔石と素材を持ち込むメリッサの清算は時間も手間もかかるが彼女らギルド職員はいつも嫌な顔をせず誠意を持って仕事に当たってくれる。
「ああ、ありがとう。いつもどおり口座に入れておいて欲しい。」
一応内訳書を受け取りながら言う、現金をそのまま持ち歩くのは無用心、というデイジィの提案で週一でダンジョンに潜り始めた頃に銀行で口座を作って、それ以来報酬はそこに入れるようにしている。
銀行とはギルド直営の施設で、市民権を所持している人が利用できる。
預ける、引き出す、両替の簡単な機構ではあるが安全が補償されているので利用する人は多い。
ギルドを出たメリッサは腹が減ったので露店で串焼きを1本買って、齧りながら宿へと帰った。
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宿に帰ると一旦血と埃を落とすために水を浴び、皮鎧の汚れを落とす。スラムから出てきて以来の習慣だ。はて、この皮鎧は何代目だったか。強引な狩りをするようになってから皮鎧でダメージを受ける事が多くなった為、何度も買い換えて使っている。
十分水を掃った掃ってから宿の扉をくぐる。この半年で更に身長は伸びたが190を少し超えた所で成長は止まった。巨人族の血なんてアテにならんな、とメリッサは思うが。そもそも先祖返りとはその種の一部分が現れるだけで丸まるその姿になるわけではない事をまだ本人は知らない。
その後はいつも通りに食事をし、勉強してから風呂に入って寝る、今日はデイジィの部屋の日だ。
「めりーくん、今日もお疲れ様。」
髪紐を解いて広がった髪の毛を撫でながらデイジィがメリッサを労う。
二人はもうベッドの上だ。
「パーティの結成はまだできんそうだ、後3ヶ月待てと言われた。」
「3ヶ月かぁ、そうだね。後3ヶ月でめりーくんと出会って1年になるのかぁ。」
「ずっと迷惑をかけてきたがやっと役に立てるようになれる、もう少しだけ待っていて欲しい。」
「いそいじゃ駄目だよ。でもお金も貯まってきたし、そろそろ装備も考えないとね。」
「ああ。今の所皮鎧で不便は無いが高ランクのダンジョンではさすがに通用しないだろう。」
「明日も修行あるんだから早く寝よ。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」




