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鈍色のパラディン  作者: チノフ
一章~駆け出し冒険者編~
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20話

活動資金を得た二人はその後も冒険者関連の施設をいくつか周ったが、どれも<ベティラード>の冒険者施設を大規模にしたようなものばかりで目新しい物は無かった。

屋台で食べ物を摘みつつ<ベティラード>に無い場所を頼む、と言われたカールが次に案内したのは魔石屋※1 と魔道書店だった。

魔石屋には見学歓迎と書かれていたが本職の魔法使い二人が実際に魔法を込めてる所を見た事があるので素通りし、次に向かった魔道書店でもあまり目ぼしい物は無かった、メリッサは魔力適性はあるものの、魔力量が少ないので魔法に頼る戦闘スタイルは取れない。上位職になれば自然と習得出来るものもあるので急いで覚える必要は無い、とは師匠の教えだ。


「王都に行けばまた違うんだけどね、都市っていっても<グラディウス>は田舎だから・・・」


「それでも服屋や雑貨店等は<ベティラード>より数も多いし、質もいいではないか。」


15時を過ぎたあたりで特に見たい所が無くなった二人は大通りを城へ向かって歩いていた。道の両脇では露天商が必死に呼び込みをしている。


ふと、一つの露店が気になったので近づいてみるとそこは装飾屋だった。高価な宝石類は置いてないが手作りなのだろう、彫金を施したアクセサリーや手編みの紐等が置いてあった。少し悩んだ後、白と赤、青と黒の飾り紐を購入した、勿論アンジェとデイジィに贈るためだ。

待たせていたカールと合流し、今度こそ城へと戻った。




            ~~~



「まだ二人は帰ってないそうだ。何かあったら侍女に言ってくれたまえ。」


城に戻ると政務の勉強があるカールと一旦別れて客室に戻ったメリッサはする事がないので一旦ベッドに寝転んだ。

夕食まで寝るのもいいだろう、たまには怠惰に過ごしても罰は当たるまい。そう思ったメリッサはゆっくりと意識を落としていった。



            ~~~



太鼓の音が鳴るたびに雷が轟く。

ふと、ぐるりと周りを見回した。

単眼の巨人達は我らが怨敵を視線で射殺さんとばかりにその一つ目で見つめている。

思いだした、我らは○○○○達を打ち倒し、勝利せねばならない。

相手は高次の存在だ、相手にとって不足はない。

さあいこう、さあ戦おう。

我らが勇者達よ、これが最後の戦いだ。

さあ往かん、さあ争おう。

太鼓の音が止む。

一番槍は族長である我の仕事だ。譲ってやる物か。

戦端は我が投槍にて開かれる手はずだ。

右手にずっしりとした頼もしい重さを感じる。

さあ行くぞ、○○○○を打ち滅ぼして我らの――――




            ~~~



「めりーくん、ご飯の時間だよ、起きて。」


デイジィの優しい声ではっと目が覚めた。


「あ、ああ。おはよう・・・なんだろうか、夢を見ていた気がする。」


「どんな夢?」


「詳しくは思い出せない、だが戦っていた、死力を振り絞って戦っていた。」


「ダンジョンに潜ってればそんな機会いつでもあるよ。今日はクレメンテ様とカールも一緒に食事するそうだからいそご、アンジェはもう向かってるよ。」


デイジィが手を引いて部屋を出ると侍女が待っていた。案内させていただきます。と頭を下げる姿は洗練されていて美しい。

そのまま着いていくと食堂へ到着した。侍女が扉を開けると既に3人は席に座っていた。


「待たせてしまったようで申し訳ない。」


「構わんとも、料理が出来上がるまでの間君について聞いていた所だ。」


さ、座りなさい。とクレメンテに促されてメリッサとデイジィがアンジェの隣に座ると次々と美味しそうな料理が運ばれてきた。各人己が信仰する神に祈りを捧げて食事に手をつける。


「さて、メリッサ君。食事をしながらで構わないから聞いて欲しい。山道の落石を除去してくれた件、感謝する。あの道が塞がれてしまうと流通が滞ってしまうでな、それに除去するにしても人手も時間もを割かねばならん所だった。助かったよ。」


「言い方は悪いですが単純に邪魔だったので退けただけです。どうぞお気になさらず。」


「そうか、君は謙虚なのじゃな。礼、というにはちと寂しいが君が健啖家と聞いて料理は多めに作らせてある。マナーなんぞは気にせずしっかりと食べてくれたまえ。」


「心遣いに感謝します。」



             ~~~



豪勢な料理を堪能し、カールとクレメンテと分かれて部屋に戻ると既にベッドメイキングされていた。


「いつもだったらここで授業だけど今日はお休みにしましょ、それより街に出たんでしょ?目ぼしい物でもあった?」


「いや、確かに人は多いし冒険者施設も充実していたが<ベティラード>とそこまで変わらないように感じたな。」


「男の子はそうかもね。私達は服とか魔道書とか沢山買ってきたよ。」


ほらあれ、と部屋の一角を指差すと大量の荷物が置かれていた。

全部服と本だとすると相当な量だ。


「やっぱり都会は品揃えが違うわ、良い物たくさんあるからついつい買っちゃうのよね。」


「まぁ二人が楽しめたようなら何よりだ。」


と言った所で懐の物を思い出した。


「高価な物ではないが、目に付いたので買ってみた。よかったら使って欲しい。後、腕相撲で勝ってな。賞金をもらったんだがこれもプールしておいてもらえるか。」


飾り紐と袋を取り出しアンジェとデイジィにそれぞれ2本ずつ、銀貨の入った袋はデイジィに渡す。

二人ともありがとう、と言って受け取り、大事そうに懐に収めた。


「ちょっと被っちゃってるけどこっちのお土産のほうが凄いわよー」


「めりーくん髪伸びてきたからね。切るのもなんか勿体無いしって事で。」


これ。と言って見せられたのは白と黒の髪紐だ。

アンジェとデイジィの髪の毛と魔石を含ませた糸を織り込んだ髪紐は頑丈な上に簡単な魔力媒体になるらしい。杖を持てない前衛が魔法を使う時にはこういったものや指輪、首輪等を使うそうだ。


つけてあげるから後ろむいて。と言われるがままに髪の毛をいじられる事10分強、アンジェとデイジィは悩んだ結果、シンプルなオールバックに決めたようだ。


「これだと目元に髪がかからないしね。」


「にあってるよ。」


「ああ、ありがとう。大切に使わせてもらう」


「明日は早くでたいし、体拭いてさっさと寝ましょ。」


侍女に頼むとすぐに肌触りの良いタオルとお湯の張った容器を持ってきてくれた。昨日お互いの気持ちを確かめ合ったので躊躇はない、二人ともさっさと服を脱いでメリッサに背中を擦るように頼んだ。

二人が終わったら今度はメリッサの大きい背中を二人がかりで擦る。それぞれ全身を拭き終わったら服を着て侍女を呼んで片して貰うとさっさとベッドに入った、明日の出発は早いのだ。結んでもらった髪紐を解いて大切に枕元に置いてから眠りに落ちていった。


※1 モンスターが落とす魔石を研磨したり、魔法を込め、販売する施設。行商人はここで仕入れて各地で売ったりする。(専用のケースに入れておけば魔石内の魔力は消耗しない)

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