12話
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「さて、街のどこを案内すればいいだろうか。」
馬を肉屋に預け、馬車を大工に任せて街に入ったメリッサはカールに問うた。
「そうだね…この街の特徴的な場所や施設が見たい。」
「あい分かった。ではまずギルド本部へ案内しよう。」
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街の入り口から木造の大きな建物には冒険者ギルド本部、と大きく書いてある。
「ここが僕達冒険者の拠点であるギルド本部だ、中に入るか?」
「そうだね、せっかくだから見せてもらおう。」
若干建て付けの悪い扉をこじ開け、中に入ると丁度ニーニャが受け付けに戻ってきた所だった。昼だからか冒険者は一人もいない。
「あれ、メリッサさん。今日は訓練いいんですか?」
「ああ、客人を案内する為に休みをもらった。」
と、体を横へずらすと背後に完全に隠れていたカールが姿を現した。
「ニーニャ、こちらカール・・・なんだったか、街を見て周りたいと言うので案内している。」
「カール・グラディウスだ、よろしく頼むよ。」
グラディウス、と聞いて少し驚いたニーニャは慌てて姿勢を正した。
「貴族様でしたか、失礼しました。わたくしこのギルドで働かしていただいてるニーニャと申します、お見知りおきを。」
カールが貴族、初めて聞いた。だからマスターは目上、と言ったのか。
「ニーニャ、テーブルを借りたいが構わんな?」
「勿論です、お飲み物は要りますか?」
「必要無い、少し話したら出て行く。」
「分かりました、ごゆっくりどうぞ。」
深々と頭を下げるニーニャを後ろに、いつも使う席に案内すると座るように促して、話を始めた。
「どんな話が聞きたい?」
「そうだね、この街の冒険者についてと主な産業についてかな、書面では知っているけれど、住民である君から聞きたい。」
分かった、と頷くとメリッサは語り始める。
「この街のギルドには現在100人程が在籍している。そのうちの大半は駆け出しから中堅だ、この街の近くにはCランクまでのダンジョンしかないのでな。僕もまだEランクだ。」
「へえ、もっと上のランクかと思ったよ。」
「師匠の方針でな、月一でしかダンジョンに潜らせてもらえないから上がらんのだ、個人的にはもっと早くCランクまで辿り付きたいんだが・・・」
まぁ僕の事はいい、続けるぞ。と言い
「この街の主な産業は農業がほとんどで、他は冒険者相手の商売だな。観光名所は無いから尋ねてくるのは行商人くらいで、たまに駆け出しの冒険者が移籍してくるな、僕自身他の街を見た事がないから栄え具合は分からない。」
「冒険者相手の商売と言うと?」
「ダンジョンに潜るのに必要な物の販売だな。武器や防具を作る鍛冶屋、皮細工職人、ポーション等の薬品を作る錬金術師等、一通りの職人は揃ってる。無論彼らは冒険者の相手だけじゃなく、街の住人相手にも日用雑貨品を売って商売をしている。」
他にあるか?と続けると思いついたら聞かせてもらうよ。と帰ってきたので一旦外に出る事にした。
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あれが防具屋、皮の匂いが凄いから入るのはオススメしない。
こっちが露店街、自分の店を持ってない職人や行商人が店を出してる。
と案内していく。
メリッサはクレープを二つ買ってこの世で一番旨い食べ物だ、と言って渡した。
舌の肥えたカールにはチープな味に感じたが、確かに甘くて美味しかった。
あの大きな建物が訓練所、冒険者が修練を行うのに使われてる。その周りにあるのは鍛冶職人達の工房だ。
向こう側の通りが歓楽街、僕はまだ未成年だから絶対に言ってはいけないと言われている。
「未成年?てっきり20くらいかと思ったが・・・」
と思わずカールが言うので、まだ15だ。と伝えると驚かれた。
カールは18歳である。
しばらく歩くと少し立ち止まってメリッサは考え込んだ。
この先はスラムだ、決して貴族に見せるようなものではないだろう。
「どうかしたのかい?」
「この先はスラムなんだが・・・ゴミ溜めの様な場所であるし。危険もあるから入らない方がいい。」
と言うとカールは首を振った。
「いや、見させてもらおう。そもそもここに来たのは民の暮らしを見る為なんだ、底辺の生活を知る事で見えてくるものがある。それに、何かあっても守ってくれるだろう?友よ。」
カールは快活に微笑んだ。
友人と言われてキョトンとしたメリッサだったが、理解するとこちらも微笑んで言った。
「任せてくれ、友よ。」




