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鈍色のパラディン  作者: チノフ
一章~駆け出し冒険者編~
17/67

3話

帰りは出来るだけ真っ直ぐ出口へと戻った。

行きに4時間、帰りに1時間である、帰り道の戦闘はデイジィが請け負うと言ったのだが、妙な所で頑固なこの少年は聞かない、折れたサーベルを容赦なく酷使して入り口まで一人で戦いきり。その間も戦利品を拾い続けた結果。

外に出た時には麻袋の4分の3が埋まっていた。


番所の警備員が血塗れのメリッサを見て慌てて駆け寄るが返り血と聞いて安心し、近くに川がある事を教えてくれた、冊子はデイジィが持っていたおかげで汚れずに済んだのでありがとうと言って返した。



防具を外すのを手伝ってもらい川の水を頭からかぶる。

デイジィは恥ずかしがって丁度来た馬車の中へ逃げていった。

平服も血が染み込んで酷い匂いだったので体を洗うついでに擦る、血が染み付いて取れないが匂いは取れたのでとりあえず満足して破れない程度に絞る、彼の筋肉にかかっては脱水機いらずである。少し湿っているが我慢してそのまま着た。

皮の手入れは分からないので水には漬けず脱いだまま馬車に乗り込んだ。

折れた剣はとりあえず鞘に突っ込んでおいてドッズに相談しようと思う。


帰りの馬車の中ではデイジィが褒めてくれた。

初めての戦闘(厳密にはギルドの試験以来ではあるが)でここまで戦果を上げれるのは訓練してきた人でも早々居ないと。

最初のダンジョンを初日で踏破したなんて風の噂でしか聞いたことが無いと。


しかし褒められた本人にとって最も衝撃的だったのはデイジィの魔法だった。初めて見た攻撃魔法というのもあるが、あの発生速度であの威力である。前衛を目指す気持ちに揺らぎは無いが、やはり魔法というものに憧れてしまうのはまだ自分が子供だからだろうか。



腕を組んで黙り込んだメリッサを見てデイジィは思う。

体力、膂力、集中力は既にBランク冒険者にも見劣りしない。

少なくとも前パーティの<ナイト>とは比較にならない上まだ3度も転職を残している。

反面、武器に関する技術や、知識はまだまったく足りてない。

これはまだ駆け出し初心者という事で目を瞑る。

それに足りてないという事は伸び代があるという事だ。

人格面も素直で真面目、好ましいし、将来性抜群である。

アンジェがツバつけといてくれたおかげだね、と内心で感謝しておいた。




             ~~~



馬車から降りて冒険者ギルドへ向かう、既に夕暮れ時だ。

血塗れの皮鎧を左手に抱え、道中はデイジィに任せていた麻袋も右肩に引っ掛けている。

さすがに冒険者ギルドがある街だけあって多少血塗れだったりする程度では住人は驚かない。

冒険者ギルドに近づいてくると建物の前に見慣れた姿をみつけた、アンジェだ。出迎えに来てくれたらしい。


2人を伴ってギルドに入るとロビーから一斉に視線が飛んできた。

主なのは嫉妬の視線なのだがそんな人の機微なんて分からない少年はそのまま受付へ向かう。左二つは既に他の冒険者が並んでいるので空いてる受付で

ニーニャは居るかと問うと、座っていた女性は少しお待ちください。と言い、奥に引っ込むと変わりにニーニャがすぐに出てきて目の前に座った。


後ろでしきりにどうだった!と聞くアンジェとデイジィはそれぞれお互いの今日の戦果を話すために早々にエールを頼んでテーブルへといってしまった。少し疎外感を感じるが仕方あるまい。


ニーニャに向き直って帰還の挨拶と最初のダンジョンを踏破した旨、素材と魔石の換金をしたい事を伝えるとニーニャは驚いてこちらの顔をまじまじと見てきた。


ダンジョン初日で踏破?

ニーニャは表面上普通に驚き、内心で大いに驚いた。長年ギルド職員をしているが滅多に聞く話ではない。

真偽を確かめる為に出発前に連名で書いてもらった書類に手を乗せてもらう。

この紙は魔石の粉が練りこんであり、書き込んだ本人が紙に触れた状態で嘘を吐くと魔力が反応するようになっているのだ。用心棒に戦わせて迷宮を踏破した、という輩を排する為だ。


紙に手を当てたまま質問に正直に答えてください。


と、言おうとした所で酒臭い息が降って来た。


「よう、坊主。今日初めて潜ってきたんだろ、どうだった」


ギルドマスターである。


デイジィの助けを借りて踏破出来た事

武器が一日で駄目になった事

血濡れになって大変だった事を正直に話した。


紙に手を乗せたままだから嘘は吐いてないという事だ。


「ほーうほうほう。やるじゃねえか、怪我は?なさそうだな。武器のと血に関してははあれだな、戦い方が悪ぃ。ドッズにでも教えてもらって来い。ほれ、ギルドカード貸してみ。」


首から掛けてたギルドカードを渡すとがなり声をあげた。


「おいドニー!ちょっと来い!

こいつの魔素量チェックしろ!

銅貨?ケチくせえ事言ってねえでとっととしろ!」


ドニーと呼ばれた眼鏡をかけた真面目そうな男性職員が自分の仕事を取られて不満げなニーニャと交代で対面に座った、ギルドマスターからカードを受け取りFランクの<ノービス>ですね、と呟いてメリッサの手を取って眼を瞑る。


「えーと、3割・・・いや4割弱ですね」


ドッズに連れられて見に行った訓練所で未だに突き立ってる元鎧を見たから力任せに振り回しても最下級のダンジョンくらいならすぐ踏破出来る踏んでいたからさっきは驚かなかった。


だが今度は驚いた。

坊主は分かっちゃいないがたった1日、しかも初めてのダンジョンで魔素を

こんだけ溜め込んだって事は・・・


「おい坊主。素材と魔石はちゃんと集めてきたろうな?見せてみろ。」


メリッサは立ち上がって足元置いていた麻袋を机の上にドンと載せる。

麻袋の中身を見てニーニャとドニーは息を呑んだ。

ぎっしりと素材と魔石が詰まっているではないか。



「ドニー、これ持ってって計算してこい。ボア皮はどうした?」



デイジィが嵩張るからといって捨てた事を伝えると


そりゃ正解だ、と言いギルドマスターは今度こそ愉快そうに笑った。








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