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XANADU  作者: 神宮寺飛鳥
【異世界】
68/123

開戦(1)

 ザナドゥの中枢、そこに“神の座”と呼ばれる場所がある。

 ゲームマスター権限を持つロギアとクロスのみが立ち入る事を許可された聖域であり、この世界に“元々”備わっていた世界との対話の場である。フェーズ4が開始される少し前からロギアはこの座につきっきりとなり、世界と向き合い続けていた。

 この“世界”はずっと眠りについたままだ。神殿の最奥地に広がる光の渦、そこには無限の命と可能性が広がっている。だがその全ての力は未だ封じられたまま、何人たりとも踏み入る事は出来ない。それは神の権限を持つ絶対存在、ロギアですら例外ではなかった。


「まだなのですか……? まだあなたは、この世界に満足していないのですか?」


 ぽつりと問いかける言葉に返事はなかった。そっと自らの手をロギアが見つめると、そこに薄っすらと光が浮かび上がった。世界の中枢から引かれた光の鎖はロギアの腕に複雑に、そして執拗に絡みついている。世界が目覚めない限りこの呪縛から解き放たれる事はないだろう。だからこそ、この不毛なゲームを延々と繰り返している。

 そっと仮面を外したロギアの素顔はアンヘルやグリゼルダと酷似していた。それもその筈、天使とは元々ロギアが自らの手足として世界に干渉する為に作り出した模倣体なのだ。権能は持たずとも、神と同様の外見を持つ。“天使”と違う所があるとすれば、それはロギアには心があり、感情があるという事だ。彼女の表情には悲壮と絶望を綯い交ぜにしたようなほの暗い感情が宿っていた。光のない瞳に映り込む世界の光はやはり濁っているもので、その闇が晴れない限り彼女にとって光はなんの意味も持たないものだ。


「――世界の調子はどう? ロギア」


 背後からの声に眉を潜め、ゆっくりと振り返る。そこには一人の少年の姿があった。本来神にしか立ち入る事を許されないこの場に居る筈のない第三者の存在。少年、ケイオスはゆっくりと光の傍に歩み寄る。ロギアは仮面で顔を覆うと、ケイオスに片手を翳した。次の瞬間、ロギアの背に光輪が浮かび上がり、無数の武具が姿を見せる。


「ケイオス……プレイヤーの分際でありながら座に近づくとは。明確なルール違反ですよ」

「やめときなよ。君と僕が争ったところで誰も得をしないよ? むしろ僕は君にとって有益な存在だと言える。僕はこの世界が目覚め、答えを出す瞬間を確かめたいだけなんだからね」


 それでもロギアは構えを解こうとはしなかった。彼女が纏う無数の武具は全て勇者達が顕現させた世界に分け与えられし“権能”の末端である。彼らが精霊器と謳うこの一つ一つが彼らが扱う以上の性能を誇るのだから、ケイオスにどうこう出来るような代物ではない。少年は肩を竦め、自らの手に精霊器を取り出した。それは指輪型で、彼の右の薬指に嵌められている。


「争うつもりはないんだ。僕も世界の様子を見に来ただけだからね。それに君の権能がいくら強力だとしても、僕を殺しきるのは難しいと思うよ」

「リング・オブ・イノセンス……確かに特殊な精霊器ではありますが、それも私にとっては障害にすら成りえない。分を弁えなさい人間。“世界”はあなた風情が干渉できるものではない」

「僕は干渉するつもりはないんだよ。ただ見ていたいだけなんだ。だから君にだって協力する。このままバウンサーと勇者をぶつけるだけじゃ、世界はきっと変わらないと思うよ? 君だっていい加減辟易しているはずだ。この無限ループにね」


 仮面の向こうで目を細めるロギア。ケイオスは手を下ろして頷く。


「彼らに真実を告げてみてはどうかな。少なくとも彼らの中に一人か二人、真実を背負った上で世界を救えるくらいの器がいる。彼らなら或いは永遠を打破し得るかもしれない」

「無駄な事です。人の志など砂よりも脆く儚い。誰もが己の祈りに縋りつき、邪悪と寄り添って生きている。人は弱い。だからこそ、真実は誰にとっても救いとは成り得ないのです」

「世界との対話もいいけどね。彼らの事をもっと見つめるべきだ。彼らは世界と共に成長する力を持っている。心配せずとも目覚めの時はもう近いと思うよ。きっと、ね」


 笑顔を残しケイオスは姿を消した。光輪を収めるとロギアは小さく息を吐き、背後に渦巻く世界の中枢へと目を向けた。




「……あ。よかった、目が覚めたみたいだね。気分は大丈夫?」


 ミユキが目を覚ましたのはリア・テイルにて彼女に与えられている一室のベッドの上であった。自分が横たわっているという事、そして誰かが自分を見つめている事に気付いてゆっくり身体を起こす。


「あなたは……」

「そういえばちゃんとお話するのは始めてだね。私の名前はマトイ……レイジ君達と一緒にこのゲームをプレイしている一人です。篠原深雪さん、ですよね? はじめまして」


 額に手を当てながら上体を起こす。気分は正直最悪だった。異の中がぐるぐるしていて吐き気がするし、なんだか身体中に血が巡っていない気がした。肌は汗ばんでいるが、なぜか少し寒気を感じる。身体を起こしているとだるい事に気付き、人前で気恥ずかしいという事も諦めてベッドに倒れこんだ。


「私は……」

「倒れちゃったんだよ。その……ひどい話を聞いたからね」


 そこで再び絶望の淵へと追いやられる。気を失ったまま、目覚めた時には全てが夢だったならよかったのだが、この悪夢は一向に覚める気配を見せない。もう怒ったり悲しんだりする事もこの二年でやり果てたような気がしていたが、まだ卒倒できるようなかわいらしさが残っていた事に自分でも感心する。

 今日あの瞬間まで、どこか全てを諦めていた。だがレイジに出会った瞬間、希望が胸の中にわいてしまったのだ。それがまたあっさりと摘み取られたりしたものだから、気持ちがずいぶん弱ってしまった。我ながら何とも女々しい事だと失笑していると、マトイは用意していたお茶を差し出してくる。この二年で随分と馴染んだ香りだ。受け取って一口ふくむと身体がすっと楽になる気がした。


「ありがとうございます」

「うん。えっと……意外と平気そうだね。もっと泣いたり喚いたりすると思っていたから……」

「それはもう散々やりましたから。嘆くのにも飽きてしまいました」

「そ、そっか……ごめんね、変な事言って! ただ、強い子だなぁと思って……うん、すごいねミユキちゃん。私がそうなっちゃったら、一体どうなってたか……本当にすごいよ」

「あの……どうして無関係なあなたが泣きそうになっているんですか?」


 見れば椅子に腰掛けたマトイはスカートを両手で握り締めながら瞳を潤ませていた。気まずそうにミユキが問いかけて漸くその事実を自覚したのか、マトイは慌てて涙を拭う。


「ごめんなさい! なんか私涙もろいみたいで……ごめんね、今辛いのはあなたなのに……」

「いえ、別に……。それに、あなたの情けない顔を見ていたら、なんだか泣くのもバカらしくなってしまいましたから」


 顔を真っ赤にしてあたふたしているマトイに微笑みかけるミユキ。しかしそれも一瞬の事、直ぐに憂鬱な表情に戻ってしまう。彼女にとってこの状況は一切の光明すら見えない闇の真っ只中だ。ログアウトの糸口は示されたが、そのためにはあの姉の顔をしたバケモノを殺さねばならないのだから。

 それでもミユキは気持ちを切り替える。悲しみも苦しみも理不尽も、彼女の人生には有り触れたスパイスだった。自分を客観視し、俯瞰し、他人事のように考える事で心を守る……そういう術には長けていた。そうでなければこの二年でとっくにどうかしてしまっていただろう。


「もう大丈夫です。マトイさんでしたね。ありがとうございました」

「……うん。だけどね、ミユキちゃん。大丈夫なわけ、ないんだからね? それはちゃんと、誰かに言ってもいい事なんだからね? 私に何が出来るわけでもないから、偉そうにこんな事言っても、その……鬱陶しいだけかもしれないけど……。でも、わかって。ミユキちゃんは、ちゃんと辛いって言ってもいいんだからね……?」


 手を取りながら真剣な表情でそんな事を言うものだから、その姿が過去の姉の姿と重なって見えてしまう。あの人もこんな風に誰かの為に泣いたり笑ったり出来る人だった。人の目を真っ直ぐに見て、手を握り締めて……体温で想いを伝えてくれる。思い出したのだ。そんなバカでひたむきでお人好しなあの人の事が、新底愛おしかった事を。


「……レイジさんもそうですが、あなたも姉さんに……ミサキに似た物を感じます。不思議ですね。全くの初対面の筈なのに……」

「それは……きっと、ミサキさんがそれだけ人の心を変える魅力的な人だったって事だよ。私も少し前までは、なんていうか……うじうじしただめな奴だったんだ。あ、今でも駄目なやつなのは全然変わってないんだけど……それでも全力を振り絞って生きようって思えたのは、レイジ君のお陰なんだ。そのレイジ君はミサキさんに自分を変えてもらったって言ってたから……ね? それってつまり、お姉さんの想いが、お姉さんの居ない所でも皆の中に生きていて、息づいていて、伝わってるって事なんだよ」


 まるで自分のことのように嬉しそうに語り、マトイは笑顔で告げる。


「きっとすごく魅力的で、素的な人だったんだね。あなたのお姉さんは」


 暫く無表情にマトイを見つめた後、ミユキはジト目で急に呟いた。


「あの……もしかしてマトイさん、レイジさんの事が好きなんですか?」

「とっ唐突だね!? えっ!? 今あなたのお姉さんの話をしていたはずなのに、どうしてそういう事になってしまうのかな!?」

「いえ……なんとなくですけど。まあ、勘です」


 ズバリと“勘”と言われてしまうと何も返せなくなってしまう。だがミユキはこうした人の気持ちに敏かった。JJと同じく、彼女は幼い頃から人の好意や悪意に接する機会が多かったからだ。

 姉は能天気でどーしよーもないお人好しだったので、それこそ周囲に敵も味方も無造作に増殖させた。とにかく男にモテたのだ。明るくて優しくてノリがよくてアホだが情に厚く、何より美人だった。男に対しても壁を作らず、やたらとボディタッチが頻発する為、勘違いしたり男心をやられてしまう者が続出した。そういう連中の好意に全く気付かないのもあの姉の凄まじいところで、ミユキは幼心にこいつは悪魔だと思っていたものだ。


「え、急にどうしたの!? なんかすごく呆れてる!?」

「いえ、あのアホの事を思い出して……。まあ、恋愛ごとっていうのは張本人にとってはわからなくても、周囲から見るとわかりやすい事も多いという事ですよ……」

「そ、そういうものなんだ……私、これまで人を好きになった事とかないからわからないけど……って、なんか今の言い方だとレイジ君が好きだって認めているような気がするけどそういう事じゃなくてね!?」

「好きになった事がないんですか? 惚れやすそうな顔してますけど」

「どんな顔!? えーと、うん……だって、私ね……私……」


 握り拳を作り、椅子をふっとばしながら立ち上がるマトイ。そうして力強く宣言した。


「初恋したらそのまま結婚まで行くんだって、子供の時から決めてたから!」


 完全な呆れ顔で笑い飛ばすミユキ。マトイは少し顔を赤くした後、いそいそと椅子を戻した。


「小さい時からの夢なんだ。素敵なお嫁さんになるのが」

「……またこの類のアホですか……。アホしかいませんねどいつもこいつも……」

「や、やっぱりアホかな!? 友達に言ったらすっごいバカにされて、それから出来るだけ言わないようにしてきたんだけど……うぅ……」

「まああなたの乙女思考はどうでもいいですが……十中八九レイジさんは姉さんにホの字ですから、難しい戦いになると思いますよ。あの人の中で姉さんはどんどん美化され続けていて、現在進行形で大きくなっているはずですからね」

「ホの字って……。ていうかだから、別にレイジ君の事が好きとかじゃなくてね!?」


 あたふたするマトイを見て口元を抑えながら笑うミユキ。こんなに笑ったのも、誰かと話をしたのも久しぶりの事だった。深く息をついて目を瞑ると、穏やかな表情をマトイに向ける。


「……下らない話をしていたら少し疲れました。眠らせてもらう事にしますので」

「あ、うん。ゆっくり休んでね。これからどうするのかはきっとJJやレイジ君が考えてくれるから。絶対諦めないで一緒に頑張ろうね! ミユキちゃんは独りぼっちじゃないんだからね!」


 何度も励ましの言葉をかけてからマトイは部屋を後にした。その姿に寂しげに笑みを浮かべ、ミユキはそっと目を閉じるのであった。




「……さてと。レイジ君とミユキちゃんには悪いけど、今後について相談しておきましょうか」


 ミユキをマトイに任せ、オリヴィアが会議室に戻ってくると会議は再開された。音頭を取るのは不在のJJに変わってクピド……という感じではあったが、そこに遅れてJJが戻ってくると、両陣営の参謀が揃って話を進めるという形に落ち着いた。


「あらJJ、レイジ君はもういいの?」

「あー……うん。あいつは暫くほっとけば勝手に立ち直るわよ。何の取り得もないやつだけど、根性と気合だけは一級品だから」

「あらぁ? 随分と高く彼を評価しているのね。男の価値なんて大体根性と気合で決まるようなものよ♪」

「どうでもいいわよ! そんな事よりオリヴィア、戦況はどうなってるの?」

「はい。まず今の私達の置かれている状況ですが……既に連盟の方々には説明させていただきましたが、私は二年前のあの日から、自由革命軍のリーダーを引き継ぎ現在に至ります。しかしそれは二年前の自由革命軍のやり方とは異なり、勇者との協調も辞さないという方針を打ち出しています」


 二年前、革命軍の王であるダンテは命を落とした。その瞬間から彼の王権を受けていた全てのNPCがフリーの状態になったのだ。そこへオリヴィアはダモクレスを手に自らの王権を発動。権力を上書きする事で彼らを支配する事に成功した。それは言う程簡単な事ではなかったが、命を賭した撤退戦、魔物から全ての民を守ろうと奮闘する彼女の姿がそれを可能としたのだ。オリヴィアは亡きダンテと荊の戦士たちの意志を継ぐという意味も込め、革命軍という名をそのまま使用する事に決めた。つまり彼女は今やこの世界の最大勢力の長であると言える。


「我々自由革命軍は生き残ったクィリアダリア軍と旧革命軍の戦力、そして勇者連盟に協力していた諸国の軍勢を統合し運用する事でなんとか魔物に対抗しようと試みましたが、それでも基本は負け戦の連続です。人類側の領土と呼べる場所は、最早このオルヴェンブルム周辺……中央大陸だけであると言えるでしょう」

「元々敵対していた筈の連盟と革命軍の兵力まで統合したの?」

「はい。勿論、互いの間にある遺恨は根深い物でした。しかしそれも一人一人きちんと説得して周れば理解しあう事は不可能ではありません。何より我々は力を合わせなければ決して生き残れない状況にありました。止むを得ぬ場合にのみ、私はダモクレスの力と王権に頼り、彼らを“支配”してきました」


 腰から提げた豪華絢爛な装飾を施された剣、ダモクレス。それは王権を持つNPCにのみ使用可能な限定アーティファクトで、王権を強く発揮するブースターの効果を持つ。この剣を手に支配下のNPCに命令すればその言葉は神の言葉にも匹敵し、彼女の命令に逆らおうという気すら自然と消えて失せる。本人は操られているという自覚すら持たずに忠誠を誓う、絶大なマインドコントローラーとして活躍した。


「……二年前のあんたらしからぬやり方ね。確かにそれくらいしなければ人々を纏め上げる事なんて不可能だろうけど……」

「自分でもこれが正しいのかどうかわかりません。それでも議論の余地はなかったのです。皆の命を守り、世界を守る事が何よりも優先される……そこで私が犯した罪はいつか裁かれれば良い事。私はもう、自らの手を血で汚すことを恐れたりはしません」


 強く真っ直ぐな雄雄しい目であった。二年前にはのほほんとした顔をしていたオリヴィアも、今や立派な一軍の王である。その変化は嬉しく、しかしJJにとってはどこか心苦しい。純粋無垢な少女が必要に迫られて大人にされてしまう様は、どこか自分を重ねずには居られなかったからだ。


「魔物の動き方は二年前と比べると幾らか変化している事があります。魔物はランダムで急に出現するという事がなくなり、代わりに組織的な行動を取るようになりました。魔物が徒党を組んで襲ってくるようになったのです」


 これまで散発的かつ突発的に魔物は出現し、目的意識もなくただ人を襲うだけであった。しかし今は違う。戦術的、戦略的に運用されるようになった怪物たちはこれまでとは比べ物にならない程の脅威度を誇る。オリヴィアがアーティファクトを手にした所で人間は人間、魔物に真っ当に戦いを挑めば敗北するしかない。だからこそ戦術を使い、多数で少数を攻撃する事でなんとか魔物を倒していたのだが、魔物も同じ事を仕掛けて来るようになると急に人類は歯が立たなくなり、次々に領土を奪われる結果となった。只管に続く敗北と撤退戦の連続で人口は激減し、それでもなんとか戦ってこられたのはオリヴィアの優秀さと勇敢さの賜物だと言えた。


「フェーズ2でも黒騎士が組織的に動いているように見えた事はあったけど、あれを魔物全体でやられると人間の戦力じゃどうにもならないわね……」

「革命軍が合流した事により覚醒者の数は激増し、戦力や戦術も大幅に強化はされましたが、それでもまだ魔物に勝利するには至りません。なによりこちら側の戦力を失いすぎました。このままでは世界は滅亡の時を迎えてしまうでしょう……」

「なるほどねぇ。ところで、フェーズ3の最後にバウンサーっていうのが現れたじゃない? 魔王側の勇者というか。それと魔王の動きはどうなってるのかしら?」

「魔王とバウンサーは、この二年間人前に姿を現していません。魔物はともかく、恐らく魔王とバウンサーは勇者が倒すべき存在として用意されているのでしょう。もしも彼らが戦闘に参加していたら我々だけで生き残るのは不可能だったと思います」

「……という事は、フェーズ4開始に伴って奴らも動き出している可能性がたかいって事ね」


 そうJJが呟いた正にその時であった。一人の兵士が勢い良く会議室の扉を開け放ち、息も絶え絶えに駆け込んできたのだ。何事かと目を向ける勇者達の視線の中で男は声を上げた。


「ご報告申し上げます! 先ほど、突然西門の前に不審な人物が出没! 彼らはその……バ、バウンサーと名乗っており、女王陛下および勇者の代表との対談を希望しております!」


 どよめく会議室。シロウは拳を鳴らしながら笑みを浮かべて立ち上がる。


「早速きやがったか。JJ、どうする!?」

「なんで闘る気満々なのよ……向こうは対談したいって言ってるんだから、会って話すわよ。ただ町には入れない方がいいわね。こっちはシロウを護衛につれてくから、そっちも数人、出来れば少人数で同行してくれる?」

「おう。だったら長である俺と……あ? ケイオスがいねえぞ? まあいいか……いつもの事だ。ファング、おめぇが居れば問題ねーだろ。あの時はよく挨拶も出来なかったからな。バウンサーとやらの顔を拝みに行くとしようぜ」


 勢い良く立ち上がり顎鬚を弄りながら笑うカイゼル。オリヴィアを交え、五名は急いで会議室を後にするのであった。

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