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XANADU  作者: 神宮寺飛鳥
【三軍会議】
34/123

笹坂美咲(1)

 笹坂美咲と篠原深雪は……なるほど。確かに見れば見るほど“姉妹”であった。

 顔のパーツを一つ一つ照らし合わせてみればそっくりと言っても良いくらいなのだが、印象はかなり異なっている。それはきっと、美咲が常に笑顔を振りまいていたからだろう。

 表情の違い、それが二人を姉妹という言葉から遠ざけていた。美咲は常にオーバーリアクション気味で、明るく声を張り、相手の目を真っ直ぐに見つめていた。こんな例え方をするのは自分でも照れくさいが、そう……彼女はまるで太陽のような人だった。比べてみればこの深雪という少女はまるで対極。月のような静けさを持っている。

 こうして大人しく腰掛けてアイスコーヒーを飲んでいる姿だけ見れば、物静かで上品な印象を受ける。それどころか他人を寄せ付けないような、声をかける事を躊躇わせるような美しさがあった。美人なのは同じだけど、美咲とはやはり似ても似つかないように思える。


「……美咲に妹が居たなんてね。知らなかったよ」


 いや、そもそも俺は美咲の何を知っているというのだろう。

 何も知らないんだ。俺は彼女と一ヶ月にも満たない時間を共に過ごしただけだ。それも現実じゃない、ゲームの世界で。なのに何かをわかったつもりになるなんておこがましい。我ながら馬鹿馬鹿しい感情だ……理解している。なのにこの重苦しい気分はなんなのだろう?

 俺は彼女……篠原深雪を連れて駅ビルに入っていた。全国チェーンのファミレスに入り、ドリンクバーを注文した。既にランチタイムは過ぎているせいか、店も客も小休止と言った雰囲気だ。窓一枚隔てた外の世界では相変わらず太陽が頑張っており、白い日差しが人気のない道を照らし出している。こんな炎天下に外をうろついているバカなんて俺くらいのものだろう。


「私も同じです。あなたみたいな変な友人がいるだなんて、夢にも思っていませんでした」

「あ、俺の事友人だって認めてくれたの?」

「ええ。同時に容疑者でもありますが」


 冷めた言葉をナイフのように放り投げながら彼女はストローに口付けた。まるで俺のせいで美咲がいなくなったような物言いだが、あながちハズレではないのかもしれないと考える自分が頭の片隅にあって、彼女の言葉はいちいち俺の中の何かを波立たせていた。


「私が彼女の血縁者であるという事も、信じてもらえたと考えて良いですね?」

「……ああ。だけど君、随分と他人行儀な言い方をするんだね」


 自分の姉の事を名前で呼び捨てにしてみたり……なぜか深雪の発言の節々から、姉に対する壁のようなものを感じずには居られなかった。その指摘は恐らく的外れではないのだろう。深雪は露骨に表情を変え、話題を変えるように口を開いた。


「……それで、XANADUとはなんなのですか?」

「その話をする前に、まず君はXANADUをどこまで理解しているのか聞かせてくれ」

 肩を竦め、それから彼女は小さく息を吐いた。

「インターネットを介したゲームだと聞いています」

「誰から?」

「美咲本人からです。私と美咲は離れ離れに暮らしていましたが、時折連絡はとっていました。メールや電話で……少しその話を聞いたんです。織原さん、あなたの事も」

「俺の事も……?」

「美咲が男性の話をする事はあまりなかったので、記憶から掘り出すのは簡単でした。それから“りんくる!”のフレンドリストを見て、あなたがその織原礼司ではないかと予想し、コンタクトを取ってみる事にしたんです」


 僅かな情報から推理して俺のところまでやってきたのか。頭の回転もさることながら、行動力が凄まじいな。もし俺が本当に犯人だったら彼女はどうするつもりだったのだろうか。


「少し無用心じゃない? 美咲の写真を送りつけてきたのもそうだけどさ」

「あれは彼女の写真ではありません。“彼女達”の写真です」


 言われて見れば確かに、あの写真には美咲以外の剣道部員らしき少女達が並んでいた。数は全部で七人くらいだったか。画面中央に美咲が陣取っていたので直ぐに美咲に目が行ったのだが……なるほど、あれは確かに美咲の写真ではなかった。


「あの写真の中から美咲を発見して反応するという事は、実際に美咲と会った事がある、或いは美咲の外見を写真などで知っているという事です。直接接触した事があるのであれば余計に怪しいわけですから」

「はあ……そこまで考えてたのか」

「ここで二人で会ったのも別に無警戒というわけではありません。人通りのある場所で待ち合わせすれば顔を合わせた瞬間に危害を加えられる可能性は限りなくゼロに等しく、その状況は現在も続いています。私はあなたを信用してこうして向き合っているわけではありません。心配せずとも、あなたが何かしようとすれば大声を上げて助けを求めます」


 面と向かって初対面の相手にここまで言えるのはすごい。JJもズバっと物を言うタイプだけど、あいつはリアルではコミュ障だから……気の強さなら深雪に軍配が上がるだろう。


「それに私の鞄の中に改造したスタンガンが入っている可能性もあります」

「えっ!? そんな物騒な物が入ってんの!?」

「可能性があると示唆しただけです。過剰に改造を施した防犯危惧は軽犯罪法に触れる可能性もありますし……持っていますと宣言するのはバカでしょう」

「でも今持ってる可能性があるって……」

「示唆しておけば、あなたがバカな事を考えないかもしれない。そうすればあなたは痛い目を見ずに済むし、私も余計な労力を使わずに済んで一石二鳥と言うわけです」


 両手で持ったグラスから無表情にコーヒーを啜る。俺は深々と溜息を吐いた。


「肝に銘じておくよ……。とりあえずXANADUについてだったね。説明するよ。といっても、俺が今の段階でわかっている事だけ……ね」


 こうして俺は自分が知る限りの情報を包み隠さず彼女に伝える事にした。

 XANADUが謎のVRシミュレーションゲームであるという事。まるで本物の世界のような場所で俺達が戦ってきた事。美咲はそこで双頭の竜と戦い命を落としたという事。それから美咲がどうなったのかは知らず、生き残った仲間達でいなくなった彼女の事を探しているという事……。

 深雪は俺の話を一字一句聞き逃さないくらいの勢いで真剣に聞いてくれた。時に話を聞きながら手帳に何かをメモする場面もあった。全てを話し終わる頃には一時間近くが経過していて、久しぶりに長話をしたせいで俺は随分とぐったりしていた。


「ただのネットゲーム……というわけではないのでしょうけど……。ですが正直、そのゲームと美咲の失踪に関連性があるとは思えません。突拍子のなさ過ぎる話です」

「それが普通の反応だと思うよ……。実際、遠藤さんもただの女子大生の家出かもしれないって言ってたしね。あの人プロなんだから、そういう可能性があるっていうのは……」

「――いいえ。彼女がそんな事をするはずはありません。だって彼女は……」


 俺の言葉を遮ったわりに、歯切れ悪く深雪は口を閉じた。その続きを無理に聞き出すつもりはない。ただ、実の妹が言うのだからそうなのだろう。だとしたら美咲は……。


「結局の所、すべては与太話……非現実的な妄想だとしか思えません。私はこんな話をする為にここに来たわけではなかったのですが……徒労でしたか」

「役に立てなくてごめん……。だけど俺も美咲の失踪の真相を知りたいんだ。もしあのゲームが関わっているのなら、美咲が居なくなった原因は俺にもあるかもしれないから……」

「ゲーム、ゲーム……ですか。高校生にもなってそんな幼稚な妄想を垂れ流して恥ずかしくないんですか? もう少し現実的に考えてください。彼女はデータではないんですよ」


 ぐうの音も出ないほどの正論だった。そうだ、美咲は生身の人間なんだ。データみたいにサクっと消したり復元したり出来るものか。実体のある人間が失踪したからには必ず現実的な力が働いている筈なのだ。深雪の言葉は正しい。少なくとも俺よりも遥かに……。

 気まずい沈黙が続いていた。お互いあてにしていた手がかりも結局は解決に結びつきそうもなく、これから何をどうすればいいのかさえわからなかった。ちらりと深雪に目を向けると、悔しさと虚しさが入り混じった複雑な表情を浮かべていた。唇を噛み締めたまま窓の向こうの光に目を細めているその横顔は、俺の胸の中のもやもやに鋭く突き刺さる。


「篠原さん、俺……」


 ちらりと深雪がこちらに目を向けた。俺……と言っておいてなんだか、その先は全く何も考えていなかった。きつく目を瞑り、それから意を決して身を乗り出す。


「俺……アイス食いてぇ……ッ!」

「――――は?」


 今まで一度も浮かべた事がない呆けた表情にちょっと気恥ずかしくなりつつ、それを押し殺してメニューを開いた。上下をひっくり返し、それを向かいの席の深雪に差し出す。


「パフェを食べよう!」

「なぜ……ですか?」

「暑いから!」


 正直に言えば……俺だって無敵の人間ではない。深雪に冷たい目で見られれば心は痛むし、恥ずかしくもなる。完全にバカになりきるには俺は少し大人になりすぎた。

 だけど……思ったのだ。もしも美咲だったらこんな時妹になんて言っただろうか、と。恐らく美咲は目の前で妹が憂鬱な表情を浮かべている事を良しとしなかっただろう。だからきっと冗談交じりに……そう、甘い物でも食べて気分転換しようなんて考えた……気がする。


「手持ちに自身はないけど、奢るからさ。何か好きな物注文しなよ」

「え……いや……今はそんな状況では……」

「いいからいいから。考えすぎてもわからないものはわからないよ。そういう時は一度頭の片隅に疑問を追いやって、違う事を考えよう。それでまたもう一度悩めばいいじゃないか」


 深雪は目を丸くして俺を見ていた。何を考えているのか表情から推測するのが難しいので心臓がバクバク言っている。キモがられるだろうか……いや、元々大分胡散臭く思われていたようだから、トドメの一撃をぶっ放した可能性もある。だけど……自分の思うようにやるんだ。嫌な事が通り過ぎるのを待っているだけじゃだめだ。状況は自分の手で、好転させる。


「じゃあ……抹茶パフェ……」


 不機嫌そうな表情のまま呟くのを見て俺は全身から気が抜けそうになるのを堪え、速攻で注文を済ませた。それから空いていた自分と彼女のグラスにドリンクを注いできてようやく一息。烏龍茶を飲みながら溜息を吐いた時だ。


「あなたは、笹坂美咲という人の事をどう思っていたんですか?」

「急な質問だね……さっきまでと話全然変わってるし」

「気分転換をしろと言ったのはあなたでしょう? 自分の言葉には責任を持ってください」


 仰る通りで……。咳払いを一つ、俺は美咲の事を思い返す。


「美咲は……なんていうのかな。年上のお姉さんって感じだった。多分実際歳は二つ三つくらいしか離れていなかったんだろうけど、俺には美咲がすごく大人に見えたんだ」

「大人? あの姉さんが?」

「美咲は確かに底抜けに明るくて子供みたいに無邪気な人だったよ。だけどその胸の中ではいつも誰かの事を思い遣っていた。自分が辛くても、怖くても、不安な時でも笑顔を振りまいていた。俺はそんな美咲の明るさに甘えて……いつも助けられてた」


 あの雨の中、消えて行く美咲の身体の感触を今でもはっきりと思い出せる。

 彼女は血を流しながら、きっと死の苦痛に苛まれながらも笑顔を作ってみせた。目の前で己の無力さに涙を流す俺を救う為に。あんな状態で他人の為に笑えるなんて、尋常な精神力じゃないと思う。俺は結局、何もかも美咲には負けっぱなしだったんだ。


「彼女みたいになりたいって思った。憧れたんだ。誰かに憧れて、その人の後を追いかけたいって思ったのは初めてだった。俺に自分を変えるきっかけをくれた……美咲は俺の目標であり、恩人であり……上手く言えないけど……その、凄く大切な人なんだ」


 気付けば語ったり思い出したりするのに夢中になっていて、深雪が頬杖をつきながら俺を見つめている事に気付かなかった。あわてて両手を振りながら苦笑する。


「ご、ごめん……ちょっと……いや、大分キモかったかな……」

「いえ。まるで自分の事のように彼女を語るんだなと……そう思って」

「自分でもバカだと思ってるよ。たった一ヶ月くらいの付き合いでさ……。だけど俺、彼女にまだ謝れてないんだ。助けてくれてありがとうって、皆の為に頑張らせちゃってごめんって……まだ言えてないんだ。だから……もう一度会いたい。会って……それで……」


 それで……どうしよう? 謝ったらきっと、そんな事気にするなよって言ってくれるだろう。君は十分頑張ったじゃないかと、むしろ褒めてくれるだろう。それはわかる。だけどそうじゃないんだ。俺が欲しいのは許しじゃない。彼女の言葉なのだから。

 彼女の言葉でもう一度……語って欲しい。俺も沢山言いたい事があるんだ。変われたよって、俺はもう逃げないよって、胸を張って言いたいんだ。ただ……それだけなのに。


「美咲……どこに行っちゃったんだろうね。待ってる人……会いたがってる人……沢山いるのに。本当、困った奴だよ……」


 溜息を吐いたところで店員がパフェを持って来た。深雪はそれを受け取り、細長いスプーンを手に取って目を閉じた。


「食べましょう。話の続きはそれからです」


 頷き返し、俺もスプーンを手に取った。パフェを食べる深雪の姿は歳相応の少女のようだった。俺は少しの間考える事を中断し、アイスの甘さや冷たさを楽しんだ。

 自分で言っておいてなんだが、一度思考を停止して気分転換するというのは思いのほか気持ちを落ち着かせてくれた。まるで美咲が俺達に落ち着けと言っているような気がして少し笑えた。そんな俺の様子を見て、深雪は肩を竦めて笑みを浮かべていた。もしかしたら……同じ事を考えていたのかもしれない。これも痛い妄想だと言われてしまえばそれまでなのだが……。

 パフェも食べ終え、俺達は揃ってファミレスを後にした。深雪は次の電車で帰るというので、俺は彼女を見送る為に駅までついていく事にした。改札の前でケータイを眺める深雪の背中。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「結局何の役にも立てなくて……ごめん」

「そう何度も謝らないで下さい。男のくせに情けない」

「すいません……」


 目の前で女子に、それも可愛い女の子に溜息を吐かれると言うのは結構きつい。がっくりと両肩を落としたまま、俺はただただやるせない気持ちでいっぱいであった。


「私はこれから東京へ向かいます。それから美咲の住んでいたアパートに向かうつもりです」

「合鍵か何か持ってるの?」

「いえ……しかし姉妹ですから、大家にでも頼んで開けてもらうつもりです」

「そっか……えっと……気をつけて」


 頷き、それから携帯電話を改札に翳そうとする深雪。しかしそこで動きが止まった。彼女は何故か踵を返してこちらに戻ってくる、少し考えた後にこう提案してきた。


「……織原さん。もし良かったら、私と一緒に東京に行きませんか?」

「えっ!? 俺と一緒にって……?」

「姉さんを探している……少なくともそれは信用出来ると思ったからです。一人よりは協力者が多い方が捜査の幅も広がりますから」


 きりっとした表情で俺を見つめる深雪。そうして真っ直ぐに俺に手を差し伸べた。


「行きますか? 行きませんか?」


 どうやら考える時間はあまりないようだった。躊躇ったものの、俺はその手をしっかりと握り返した。冷たい掌から伝わる柔らかな感触は美咲の記憶を呼び起こす。


「――行くよ。俺も一緒に行く。俺には君を助ける義務がある……いや、そうじゃない。一緒に行きたいんだ。少しでも真実に近づきたい。だから……連れて行ってくれ」


 ゆっくりと頷く深雪。ほっと胸を撫で下ろし、苦笑を浮かべる。


「ありがとう、篠原さん」

「その篠原さんというのはやめませんか? 私、自分の苗字があまり好きではないんです。姉の事は美咲と呼んでいたのだから、私の事も深雪で構いません。織原さんと何と無く名前被ってますし、ややこしいです」

「え、えぇー……。別に一文字被るくらいよくある事だと思うけど……まあいいや。だったら俺も礼司でいいよ。多分歳も同じくらいだろうしね」

「織原さ……礼司さんは何歳なんですか?」

「十七歳。高校二年生だよ」

「では年上ですね。私、高校一年ですから」


 なんとまあ、年下でしたか。それにしては随分としっかりしていらっしゃる。


「その……いい加減手を離してもらえませんか? 何度も握り返されても困ります」

「あーっ、ごめん!? いやなんかっ、美咲と姉妹だなーと思って!?」

「……私の手をにぎにぎしながら美咲の事を思い返してニヤニヤしてたんですか? それって客観的に見るとかなり気持ち悪いですよ」


 ちっくしょう、一つも言い返す言葉がねぇ――!

 こうして俺は深雪と共に再び東京を目指す事になった。ATMで軍資金を下ろし、いざ二人で快速列車に乗り込んで東京へと向かう。狭いシートに詰め込まれながら、深雪は窓の向こうを通り過ぎて行く景色に目を向けていた。


「元々一人で東京に行くつもりだったんだよね?」

「ええ。まあ、ここは道中でしたから……。あなたに会ったのはついでと言えばついでなんです。もとより直接彼女を探しに行くつもりでしたから」

「……お姉さん、なんだもんね。心配でしょ」

「……どうなんでしょう? 心配かと言われればそうなのですが……うまく言葉に出来ません。美咲と私の関係は……ただの姉妹というには、少し歪でしたから」


 深雪はこちらに目を向けずに小さな声で語った。けれど窓ガラスに映った彼女の影は憂鬱な眼差しを景色に投げかけていた。

 彼女の名前は篠原深雪。旧姓は笹坂であったと言った。姓名が変わるなんて事は、人の一生のうちそう何度もある事ではないだろう。まさか彼女が結婚しているようには見えない。であれば、何か込み入った事情があるという事くらいは簡単に想像出来た。

 そこに踏み込む資格は今の俺にはないのかもしれない。もっと美咲の話を聞きたいと首を擡げた好奇心を鎖で閉ざし、俺は小さく首を降った。


「あー、そうだ。東京にいる仲間に連絡してもいいかな? 正直俺一人じゃ何かあった時君を守れる自信がないけど……仲間には頼りになる人たちがいるんだ」

「信用出来るんですか? そのネットだけの繋がりの人々を」


 深雪の言葉はとても現実的だ。俺が美咲の事を何も知らないように、他の皆についてだって知っているわけじゃない。だけど俺は信じている。彼らと共に過ごした時間は嘘ではないと。


「実際に会って確かめてくれればいいよ。信用出来ないと思ったら一緒に行動しない。何かあったら俺が責任を持つ。スタンガンでもナイフでも、後ろからガツンとやっていい」

「……そうですか。言っておきますが、私は本当にやりますからね」


 一応了承と見てよいだろう。俺は頷き返すと携帯を取り出し、アプリを使って全員に一斉にメッセージを飛ばした。東京に着くまでまだ二時間近くある。その間にどれくらい予定を合わせられるかはわからないが、やらないよりはましだと思った。

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