表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/38

第8話.笑ってみろよお嬢様

おひさしぶりです!

やっとこさ面倒事が片付きましたね。

これで伸び伸びと生活が送れると言うものですよ。

何はともあれ、これからもこの小説をつづけて行きたいと思います!

相変わらず執筆はカタツムリなのでご了承を!

姫香お嬢様は言動や行動はあんなだが、実のところワガママなことを言ったりやったりということはほとんど無い。

俺の思い描いていたお嬢様というジャンルは、ワガママで気ままで自分勝手で高飛車な存在だ。そんな面倒なのに関わらなきゃならんと聞いた時は吐き気がしそうなほど嫌気がした。

だが、実際には自分のことは自分でやるという人間として基本的な部分は出来ていた。俺に迷惑を掛けるようなこともそれほどない。それほどということは、少しはあるということを解っていただきたい。

そんなお嬢様に異変が起きた。

お嬢様が朝に弱いのは毎日のこと。今日も起床するのに抵抗するまでは問題が無かった。だが、お嬢様は一つのワガママを口にしたのだ。


「私、今日は絶対に学校に行かないから!」


学校に行くのが面倒だとはよく言うお嬢様だが、学校に行かないと言ったのは初めてだ。羽川さんに相談してみたところ中学の時にも何度かあったらしい。その時は羽川さんが力づくで学校へ行かせたようだ。

さて、俺はどうするか。無理矢理連れていくというのはなんか違うと思う。まずはお嬢様が学校へ行きたくないという理由を聞き出さなければならない。

俺はなんで保護者みたいなことをしとるんだろうか?


「お嬢様、失礼します」


再びお嬢様の部屋へとやって来た。さっき来たときと同じように毛布を被って抵抗の意思を見せている。お前は引きこもりか?いや、それに近い種類か。


「お嬢様、お聞きしたいのですが、なぜ学校へ行きたくないとおっしゃるのでしょうか?」


もぞもぞと毛布が動き出しお嬢様の顔が出てきた。もう完全に警戒していた。


「私が学校へ行く理由が無いからよ」


「行く理由ならあります。お嬢様がまごうなき高校生だからです」


「好きで高校生やってんじゃないのよこっちは」


「ですが高校生である以上責任を持って学校へ行かなければなりません」


「そんなことありませんからね。責任を持って学校へいかなければならないなんて法律もありませーん」


なんかイラッとするよ今のこの子。

いつまでも均衡状態を続けているわけにもいかない。学校へ行かなければならないからな。俺もまごうなき高校生だし。


「お嬢様、本当に理由をお聞かせください。何か問題があれば力になります」


俺はできるだけ優しく、そしてはっきりと言った。


「俺はお嬢様の召し使いなんですから」


丁重に頭を下げた。自分のキャラが崩壊しているのは分かっている。こんなに下手に出るのは俺の柄じゃない。

けどな、俺は早く自分の生活ペースで一日を進めたいんだよ。いつまでもお嬢様に付き合っている気はないんです。だから優しくもなりますよ。子供に優しくすると案外素直になるあの現象と同じなんです。


「絶対に話さない。話したらとてつもなく私が可哀想な子になる」


お前は可哀想な子ではないよ。残念な子である。

そう思いつつもまた別の思考も働いていた。もう面倒くさいから無理矢理でもいいかな?と。羽川さんに頼んで車を出してもらえばなんとかなるだろうと。


「話さなければ無理にでも学校へ連れていきます」


「召し使いの分際でやれるもんならやってみなさいよ、バーカ!バーカ!」


携帯でコーリング。


「あっ、もしもし、木下です。こっちはこじれたのでお嬢様を縛る縄と車の準備をお願いします羽川さん」


「え?あれ?本気?マジで羽川?」


携帯をしまう。


「ははっ、俺がお嬢様に嘘なんてつくわけないじゃないですか」


俺は自分でも最高だと思われる微笑みを浮かべた。最近こういうのが上手くなったと自負している。

お嬢様はどの単語に反応したのかは不明だが首を横に振っていた。なんか怯えているようにも見える。


「あの…学校には行くんで羽川を出すのは勘弁してくださいホントに。もうアレはイヤ…なんで」


羽川さん、あなたはいったい過去に何を為さったんですか?キャラまで変わってしまうほどお嬢様は尋常じゃなく怯えているじゃないですか。

ここで羽川さん登場はお嬢様の精神的に良くないと判断した。携帯で「なんとかなりましたんで大丈夫です」と羽川さんにメール。するとすぐに羽川さんから「さすが真貴君です♪」と返ってきた。あの、これほとんどあなたの手柄ですよ羽川さん。てか、いつのまに名前で呼ぶようになってたんですか?休載中?

説得に成功(?)し、お嬢様の支度ができ次第家を出ることにした。朝食はもう食べている暇はない時間帯になっているからだ。

そして、学校へのその道中にて、俺はお嬢様が学校へ行きたくないという理由を聞き出すことができた。


「はぁ?家庭科の調理実習があるから?」


お嬢様は一つ頷いた。

なるほどな。そういうことか。それなら納得ができてしまうというものだ。


「大丈夫ですよ、お嬢様」


「え?」


「調理実習で作るのは誰が作っても食べられるようになる料理ですから」


「ちげーよ!!料理の腕前ごときで登校を拒否するわけないでしょうが!」


違ったらしい。料理ができなさすぎて恥をかくのが嫌だからだと思ったのに。

だったらなんだ?調理実習関係で学校へ行きたくないという理由は?

作って食べて終わりの授業だろうに。それの何が嫌なのだろう。少しばかり思考を巡らすが諦めた。


「調理実習にはね、魔物が出るのよ」


いったい何を言ってるんだこのアホ(お嬢様)は。


「魔物って、何がです?お嬢様の料理によって召喚されるものですか?」


「あなたはあたしを何だと思ってんの?魔物って言うのはね、孤独よ」


そろそろ無視してもいいだろうか?


「調理実習ってさ、なんか共同作業じゃない。協調性って言うかそういうのがあってこそ成り立つっていうかね?もうすでに、ペアになれ、って言うあの魔の言葉が自動的に挿入されているという恐ろしさを秘めているのよ」


なんか大々的に語っているが、要はつまり。


「グループで何かやるってのが嫌なんですね」


「だって昔からそういう共同作業ってやつが苦手なんだもの!中学の時だってなんとかグループができても私だけやることなくて手持ちぶたさで、調理後にお情けのように盛られてる自分の分を見るとなんか悲しくなるんだもん!もうあんなのは嫌ぁ!」


とりあえず落ち着け。騒ぐから周りからの視線が集中するじゃないか。この場合、世間様は俺がお嬢様に何かをしたと決めつけるんだぜ?

おい、そこのおばさん達。こっちを見ながらひそひそと話すんじゃない。いつもの公害のごとき騒音井戸端会議はどうした。


「もう周りも高校生なんですからそんなことにはなりませんよ」


「ハッ、すぐに友人のできるあなたに何が分かるってのよ。ぼっちの素人がベテラン舐めないでよね」


そんな悲しいベテランがいるとは思わなかった。てか、ぼっちにベテランもなにもないんじゃないかね。

しかしながら、あーだこーだ言ってはいるが着々と学校へは向かえている。歩き方がゾンビのようになるかと思いきや背筋を伸ばし猫背にすらなっていない。変なところで育ちの良さが出ていた。

これでいつもニコニコしていればみんな寄ってくるんじゃないかと思う。なんたって御令嬢。さらに顔やスタイルはいいんだ。あとは誰かの前では魂が抜けたかのようになる表情と時折変なことを喋る口をなんとかすればあるいは…。

とにかく学校のみんなはお嬢様を理事長の娘だから近寄りがたいと思っている。俺の調査の結果それは確定した。特に女子にその回答がダントツだったのは印象深い。

近寄りがたいのなら近寄りやすくすればいい。回答の反対にお嬢様を変化させればいいのだ。ならば…。


「お嬢様、少し笑ってみてください」


「あなたの遊びに付き合えるほどハッピーじゃねえんだよ馬鹿め」


少しイラッとしたがここは大人になって堪えた。


「いいから笑ってみてくださいよ」


「嬉しくもないのに笑えっての?意味わかんない」


「まあまあ騙されたと思って」


「わ、わかった」


お嬢様の目が細り、口の端がつり上がる。


「お嬢様?別に般若の真似をしろと言った覚えは…」


「笑ってんのよ!?」


「今のが、笑み!?」


思わず「笑み」の部分を強調して驚いてしまった。

しかし、やはり笑えと言われてしっかりと笑うのは難しいのだろう。俺も笑えと言われたら見下すか愛想笑いくらいしかできない。

だが、笑ってもらわねばなんとも判断しにくい。まあこれも仕事の一貫として考えれば。


「それではお嬢様失礼します」


お嬢様の頬や目元に手を添えて動かしてみる。


「ちょちょちょちょ!?な、何すんのよ!マジであなたは、女子の顔を無遠慮に触るとかやめなさい!」


そうでもしないと笑った顔が見れないだろ。

顔に触れないとしたらどうする。いっそのこと、くすぐってやるか?ヤバイ、もう俺の思考はセクハラの域だ。


「どうしたら笑えます?」


「ど、どうしたらって」


何度かお嬢様の笑顔を見たことがある。それはもう爆発的な何かを俺の中で引き起こすほどの威力を持っていた。他の人にだって効果は抜群のハズなんだ。

はて、どうしたものだろうか?そしてこれの趣旨は初め何だっただろうか?


「そ、その…」


お嬢様が小さな声でもじもじと喋りだした。なんか耳とか赤くない?


「今度また、か、買い物にでも、つ、付き合ってくれたら…嬉しい、かなぁ…?なーんて…」


買い物?


「それだったらいつでも構いませんが」


「ほ、ほんと!?いいの?」


「断る理由も無いですし」


「キターッ!」


おおっ!?うん、それだ。そうだよ。それでいいんだ。今している笑顔をいつも絶やさずにしていれば周りから寄って来るさ。


「お嬢様、今日は一日その笑顔で過ごしましょう」


「へ?」


「一日笑顔でいれば調理実習もたぶん上手くいきますから」


「いや、笑顔って、そんなんでなんとかなるとは思えないんだけど」


疑り深い視線がお嬢様から放たれる。

そうじゃないんだ。笑顔だよ。笑顔になれ。


「大丈夫です。世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔なんです」


「あ?え?」


「さらに付け加えて言うと、羽川さんの受け売りですが、可愛いは正義!なんですよ」


「理解が追い付かないんだけど」


「馬鹿は深く考えないでいいんですよ。とにかく笑顔を続けていれば何もかも上手くいきます」


「そ、そう?なら今日は頑張って……馬鹿が何だって言ったお前?」


今日も一日が始まる。今日起こることは今は解らないが、きっとそれは俺達が一日一日を生きてきた証しになるのだろう。

この話はこれで一旦終わるが、確かに今日という日はあったのだ。だからこう付け加えて締めようと思う。お嬢様が今日という日を笑顔で過ごせたかどうかは、また別のお話で…。

うん、なかなかいいんじゃないか?


「おい、何勝手に終わらせようとしてんのよ」


お嬢様、しゃしゃり出て来るのはお止めください。変な感じになるじゃないですか。

では、これにて今回は失礼しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ