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第15話 勘弁してくれお嬢様③

あっついですねぅ

最近は暑さに負けて夏バテしまくりです。


というわけで久しぶりの投稿となります!

今さらになってちょっとした長編なんて書くんじゃなかったと後悔してます!面倒なんで!

一戦目のインディアンポーカーは男子チームの敗北という結果で幕を閉じた。

そして二戦目である。


「それじゃ、次はダウトやろうよ、ダウト!」


佐原が元気良く提案する。他の奴からの反論は無い。いや、他の女子は笑いを堪えているからそれどころではない。また俺や高瀬もそれどころではない。


「よし、やろうか!」


「ちょい待て佐原」


トランプの束を手にした佐原を制す。視界に入るフリフリしたものがウザい。


「どうしたのかね木下君?」


「まさかこのまま次へ行く気じゃないだろうな?」


「大丈夫だよ。すっごく似合ってるから」


え?マジで?…ってな感じにはならないぞ。こんなの似合っちゃ不味いんだよ。


「高瀬も黙ってないでなんか言ってやれよ」


「……僕はもう男として、いや、人としての誇りを穢されて何も言えないよ…」


高瀬は深刻なメンタルダメージを受けたようだ。だけどだ!


「それには同感だが、諦めんなよっ!ここで屈したら俺達はマジで女子に何も言えなくなる!そしてこの凄惨な姿から脱っせなくなるぞ!」


そう。俺達は一刻も早くこの精神的危機から逃れなければならない。

これもう冗談無しにホントやばいから。自尊心をことごとく打ち砕かれていくからさ。マジで止めた方がいい。

男がメイド服を着るもんじゃない。


パシャ!パシャ!


「この私が男子を褒める日が来るとは思いませんでしたよ。これ以上なくお似合いです」


写メ撮るのやめろ三坂。

うわぁ、くそっ、すげぇ滑稽なものを見るかのような笑みを浮かべてやがる。

ちょっ、顔は写すな!

佐原や三坂はもう駄目だ。このフリル付きメイド服を持ってきて今もニコニコしている羽川さんは言わずもがな。

こうなったらこの場における最高権力者に懇願するしかないようだ。


「お嬢様、本当に勘弁してもらえませんかこれ?」


「え?ぷ…はは、な、なによ?」


「いや、だからこの痛々しい格好を止めるのを許してくださいっていう…」


「いいじゃない、しばらくそのままでいれば。なかなか可愛いわよ?」


女子はよく勘違いしているようだが、男にとって可愛いと言われることは喜ばしいことじゃない。むしろ男としてのプライドが傷付くというものだ。

だったらなんて言えば?という人にお教えしよう。

何も言うな。何も言わずに黙って見守れ。男は静かにでかくなっていくものなんだ。俺何言ってんの?


真相心理の自分が総崩れしていくのを感じていると羽川さんが手を叩いて注目を集めた。


「はいはい〜。ではぁ、お嬢様、真貴君達も不服そうなのでぇ、恩情をあげたらいかがでしょう?佐原さん達もいいですかぁ?」


さすが羽川さん。俺はあんたを見直したぜ!大人の判断ができる人だ。


「うん、それは姫ちゃんに任せるよ。今のうちに面白写メを一杯撮っとくし」


「泉堂さんと佐原さんがいいと言うなら賛成です。私としてはもっと貶め人前に出れなくすることをオススメしますが」


さすが佐原と三坂。俺の目に狂いはなかったぜ!お前らは酷い奴だ。


「じゃあ…二回戦のダウトに男子が勝ったら、それ脱いでいいわ」


「「よし!」」


俺と高瀬は小さくガッツポーズをした。


「でも負けたらそのままで、私がさっきのメモ帳に何が書いてあるのか読むわ」


なん…だとぉ…!?

お嬢様はメモ帳を俺に見せつけながら目を細めた。可愛らしい顔が鋭利な冷気を帯びたかのようになる。

だが…俺は負けん。


「そ、それは…ですね」


「なに?見られたらマズイものでも書いてあるの?」


「プ…プライバシーの侵害です!主従の関係にも礼儀があるべきです!」


「どーせ私に対する悪口とか文句の三つや四つ書いてあるんでしょっ!」


「たったそれだけだと思ってんのかぁ!」


「もっと書いてあんの!?」


しまった!?つい真実を口にしちまった。


「絶対勝って内容を確かめてやるんだから!」


負けた場合の俺への仕打ちが厳しすぎる。しかも高瀬には何も不利益がないじゃないか!俺だけなんて納得が……いやいや、落ち着け俺よ。ダークサイドに堕ちては駄目だ。

全てを丸く治めるには実にシンプルで分かりやすい答えがあるじゃないか。

勝てばいい。ただそれだけだ。

普段ならこんな遊びにマジになるなんてことはほとんど無いが今回は違う。勝てるかどうかじゃない。勝たなきゃならないんだ!今の俺は超熱いぜ!


「みなさんにトランプを配りますねぇ」


羽川さんが配っている間にルールを確認しておこう。


①1から順番に番号を宣言しながら場に出していく。②出すカードは宣言した番号でも違う番号でもいい。③カードを出した人以外の人は『ダウト』と宣言することで出たカードが嘘であった場合、場のカードは全てカードを出した人が取らなければならない。

④『ダウト』と宣言して出たカードが正しい番号であった場合、場のカードは全て『ダウト』を宣言した人が取らなければならない。⑤ダウト後は好きな番号から始めてよい。

⑥先に手札が二枚になった人の勝利。


トランプが配り終わると羽川さんの仕切りによって進行していく。


「それではぁ、この二回戦では男の子と女の子で先にニ回勝利した方の勝ちでーすぅ」


ここで負けたら俺達の社会的死が確定する。一歩も退くことの許されない戦いの幕開けとなった。


順番は、佐原→三坂→お嬢様→高瀬→俺。

手札を確認すると十枚で2と5と10があった。これで3周は無事に出し続けられるはずだ。まずは順当に七枚まで減らすことを考えてそこから……いや、安直な考えはやめよう。これは戦いだ。相手を陥れることも考えるべきか。

色々と考えを巡らしていると佐原の「いくよー!」という声でゲームが始まった。


「1!」

「2です」

「3?」

「…4」


全員が何の迷いも無くカードを出していく。まだ1周目だから手札が十分あるんだろう。

さて、俺はこれを出すか。


「5だ」


「ダウトです!」


む…。三坂によってダウトが宣言された。

俺が出したのは6だ。全員にカードを見せてから場のカードを集める。するとダウトを宣言した三坂の小綺麗な顔から意地の悪さが滲み出した。


「フフフ…、こうなることはすでに決まってたのですよ。手に余る手札を目にして苦しむがいい」


ふん、そう言っていられるのも今のうちだ。1周目からバカ正直に出さず勝負に出た俺は勝ちに一歩リードしてんだよ。勝利のためなら甘んじて嘘つきの汚名を被ろうじゃないか。

手札に加わったカードを確認しようか。


『7』『9』『J』『Q』


こ…こぉんの、嘘つきどもがァァァ!!

誰一人として正直者がいねえよ!?なんでなにくわぬ顔でひょいひょい出せんの?もう誰も信じられねえ。

さらにひとつ悪いことに奴等がどういった意図で出したのかが分からない。何か策があってのことか、それともただ出せる手札がなかっただけなのか。ちなみに高瀬は後者の可能性がやけに高い。

しかしながら、分かったこともある。三坂の手札だ。何の迷いも無くダウトを宣言した辺り手札には5のカードが三枚はあるってことが予想できる。これをこれからどう活かせるか。

そして、さっき仕掛けたことによって俺の手札に5が無いことを全員に思い込ませることができたはず。そこをうまく利用してやる。ふふふ…ぅ…うああ、今気づいてしまったことだが、俺の仕掛けって誰かがダウトしてくれなきゃ意味無かったんじゃないか?言わなければ結局誰も気づかないわけだし。


「頭なんか抱えてどうしたの?」


「いえ、なんでも…」


首を傾げるお嬢様への返答を適当にしてから息を吐いた。


「私の策にハマって身悶えてるんですね。哀れな」


三坂が何か言っているが無視しよう。

なんにしてもこれで俺の手札は十四枚だ。一周目だったことが幸いしたか、そこまで大した痛手じゃない。また、あと数周は出すカードに苦労はしない。それなりに手は謀れるんだ。木下真貴、ポジティブになれ。


ひてまず再び舞い戻ってきた6を出しておくか。


「6から」


それから二周が過ぎ…。

誰もダウトになることなく場には十枚出されていた。


「3だ」


俺がカードを出して十一枚になる。


「木下君」


「どうした佐原?」


「おかえりなさいませ御主人様って言ってみてよ」


「そんなサービスは誰も望んでねえよ。男子が言ったって気持ち悪いだけじゃないか」


「そうだ!お前ら女子こそこれを着て僕らに言うべきだ!女子にこそメイド装備を!」


「うっさいよ、高瀬。そんなのありきたりすぎるじゃんか」


いや、俺は今の高瀬のマニフェストに一票を投じてもいい。


「だって、なんかつまんなーい!君さ、メイド服着てんのに全然普通にしてるんだもん」


「騒いでも残酷な現実は変わらないからな」


そこへ三坂がタン!と床を叩いた。


「そのクールぶってるのが気に入りません!男子は己の全てを出しきって私達を楽しませるべきです!」


「小鳥ちゃん、それは酷いんじゃないかい?合コンとかでもそうだけど、女の子はお客様過ぎるよ。常に自分達が楽しませてもらう側だと勘違いしてる」


高瀬が正論を言っている。


「男子なんてそれ以外の存在理由が見当たりません」


「そうだそうだぁ!面白くない君らなんてただの男子高校生だ!」


ただの男子高校生で何が悪い?いろいろと普通じゃないお前らには分からないかもしれないが、結局は普通が一番なんだよ。

容姿にせよ性格にせよ何にせよ普通であることが平和であることなんだ。これ、俺が十五年の人生を掛けて悟ったことね。

だから今美少女達が自分の部屋にいるなんてのは実は不幸なことなんだ。平和なんてあり得ない。つまり、主人公タイプの奴に平穏なんてないんだ。

男としてのプライドが崩壊する格好をせざるを得ないこの状況がそれを証明しているじゃないか。少しスポットライトが当たるとこうなる。だから主人公タイプにはなりたくない。

ここで一句だ。


無理をせず 平和に生きよう 脇役で


木下真貴、心の俳句。

あれ?季語が入ってねえ。


「今なんてねぇ、かっこつけてる二枚目より面白味のある三枚目の方が魅力的なんだよ?」


季語をどうねじ込むか無駄に考えていると佐原がそんなことを言っていた。


「面白くてもこんな格好をさせられるんじゃ僕はモテなくていいよ」


「俺もだな」


「そんなこと言ってるか草食男子なんて言われるんだって。男らしくいこうよ」


「「ならせめて男らしい格好をさせろ」」


高瀬とハモるとは気味が悪いな。内心そう思っていると三坂が何か呟いていた。


「どう足掻こうと男と言うだけで嫌悪感しか生まれませんが…」


「つーか、木下の次は佐原の番だろ?さっさと出しなよ」


高瀬が促した。


「うん、そうだね。はい、次は4!」


「ダウト」


「あーんもうっ!高瀬、やっぱあんたが4を全部持ってんでしょ。さっき一瞬何か考えてたから怪しいと思ったよ!」


よほど悔しいようだ。


「はっはっは!僕がいつまでも考え無しのバカだと思ったら大間違いさ」


「考え有りの馬鹿ほど質の悪いものは無いのに!」


「あれ…?バカの称号は変わりないんだね…」


だが、高瀬も一周目で仕掛けていた口らしい。俺とは逆の仕掛け方だが、素振りで相手を貶め、かつ、自分の手札の内に納めてある確実性がある。お前にそこまで思考ができる知能があったとは知らなかったよ。


ひとまず佐原が渋々カードを集めているうちに現状を確認しておこう。


お嬢様 八枚

三坂 八枚

高瀬 七枚

俺 十一枚

佐原 十八枚


なんだかんだで高瀬がリードしている。

佐原は上がるにはすでに厳しい状況となり、まず負けることはないだろう。ただ一回戦のインディアンポーカーの実績がある分注意すべきだ。

これはあくまで男子対女子の戦い。男子は女子を、女子は男子を貶める。そして男子にとっては勝たなければ社会的に死ぬデスバトルとなっている。

自分を犠牲にしつつも高瀬に勝ちを持っていかなければならない。俺が高瀬の引き立て役になるのは釈然としないが、最も勝ちを取れる道を優先しよう。

とにかく三坂とお嬢様をどうにかする。少しでも男子を有利にするんだ。あとは高瀬がヘマをしなければいい。

さっきからお嬢様が静かなのが気になるが…。

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