★プロローグ★悠人side
あいつがいなくなった日。
オレは誓った。
あいつ以外絶対誰も好きにならない、と。
オレは和泉悠人。
この高校のサッカー部のキャプテンをしている。
ちなみに、まだ一年であるオレがなぜキャプテンなんかをしているのかというと…
理由は単純。
この高校はかなり珍しいことにもともとサッカー部がなく、部ができたのがオレらの年だったからだ。
サッカー部の誕生にはろくに情報も調べずに入ったオレと光がサッカー部がないことをしり、いろいろと努力したすえにできたというエピソードもあるのだが、それはあえておいておく。
顧問の先生はサッカーの経験がない先生にほぼ無理やりになってもらったので練習試合などを組んではくれるが、練習はほとんど放置状態というところだ。
そんなわけで練習メニューに関しては部員の中で唯一のサッカー経験者だったオレと光に任せられた…が、光はかなりの適当なやつだからへたしたら「毎日試合!」だとかいいだしかねない。
ので、オレは部のいろいろな責務を負わされて多忙な毎日だ。
まぁ別に嫌なわけではないのだが。
今日もいつものように練習メニューを組んで部活に向かった。
いや、今日はいつもと違うようだ。
いつまでも部室にいる部員を呼びにいくと恵美のそばに見なれない女子がいた。
「んっ??」
肩までの髪のおとなしそうな女。
なんか見たことある気がするな……
少し考えて、ふとその子が昨日恵美と一緒にいた子だということを思い出した。
「そーいや、お前…昨日マネージャーなりたいとかなんとか言ってたやつやんなぁ??」
「は、はい!一応先生にも報告してきました!!」
オレが尋ねると、その子はぴしっと姿勢を正して答えた。
……あれ??
たしか、昨日の子って眼鏡かけたいかにも暗そうって感じの子やったやんな??
この子は眼鏡かけてないし、別に暗そうとも思えへんねんけど……
「……なんか昨日と雰囲気ちがうくない??」
「あっ!せやろ!!やっぱ悠人は気付いてくれた!?」
オレが尋ねると、突然光が目をきらきらさせながらよってきた。
「これにはふかーいわけがあってな!?聞きたい!?聞きたい!?」
「いや、ええわ」
なんとなくめんどくさそうな予感がしたので光を軽くスル―し、オレは笑顔をつくってその子に軽い自己紹介をした。
「オレはキャプテンの和泉悠人や!よろしくな!!」
それからオレはその子にいろいろ教えるように言ってから練習に向かった。
休憩時間、オレは恵美とさっきの女子が手をとめてぺちゃくちゃとしゃべっているのを見つけた。
……またか。
ほんまに恵美だけはめんどくさいやつやなぁ。
オレはふぅと軽いため息をつき、注意をしようと2人の方へ向かった。
「おい、え…」
「大丈夫ですよ!西崎くんと恵美ちゃんならすっごくおにあいです!私、応援してますから!」
偶然聞こえた会話に呼びかけようとした言葉を思わずきった。
あれ?
今恵美と光がお似合いやって言ったよな……???
んで応援してるって……
「いや、ほんまにちが「えっ!?」
思わず驚きの声がもれた。
それって、恵美が光のこと、好きってことか!?
「そう…やったん……??」
恵美がゆっくりと振り返る。
「…悠人!!」
恵美は驚きと焦りの入り混じったような表情でオレを見た。
「いや、聞くつもりはなかってんけどな…聞いてもーたわ」
恵美は慌てたように弁解をする。
「いや!違うねん!これは菜ノ花が勝手に!」
「いやいや、大丈夫。恥ずかしがらんでも、オレもおまえは光が好きなんちゃうかと思ってた」
…たしかに、こいつ小さいころから光としゃべってるときめっちゃ楽しそうやったもんなぁ。
まぁ恵美にそんな女の子らしい一面があるなんて思わへんかったからめっちゃびっくりしてもうたけど。
恵美はまだ弁解をしようとしているようだ。
必死に何かを言おうと口を開こうとする。
…こんなふうに好きな人の話されて焦るみたいな女の子っぽい恵美とか初めてみたわ。
なんか、可愛いなぁ。
オレはぽんっと恵美の頭に手をおいた。
「頑張れよっ!!」
恵美は少し頬を染めて口を閉じる。
そんな恵美が以外すぎてオレは思わず笑ってしまった。
「応援してるで!」
恵美は顔を真っ赤に染めながらうつむき、ぼそっと言った。
「……ありがとう」
下校時刻。
いつものようにオレと光と恵美はくだらない話をしながら家路についていた。
そうしてもう校門をでようかというとき、
「……あれ??」
突然光が足を止めた。
そして慌てたように後ろを振り返る。
「菜ノ花は??菜ノ花はどこ行ったん??」
「え…なんか残って部室のそうじやるって言ってたけど……」
戸惑うように恵美が答えると、光はさっとオレ達に背を向けた。
「どーせやったら菜ノ花も一緒に帰ろうや!オレ呼んでくるから!!」
「えっ!光!?」
恵美は光を呼びとめようとしたが光はもう足を踏み出そうとしている。
オレは横目で恵美の様子を伺った。
「…わかった。待ってるわ」
恵美は諦めたのか笑ってそう言った。
そして光の背中をじっと見つめている。
さっきの話を聞いたばかりなので、なんとなく恵美が何を考えているのか予想できてしまった。
…たく、ほんまこいつだけはめんどくさいやつやなぁ。
「光」
オレは光の方をつかんだ。
光が少しだるそうに振り返る。
「オレ部室にシューズ忘れたから、オレがついでに呼んでくるわ」
「えっ…!そうなん!?でも、オレも……」
「恵美が1人になるやろ?お前はまっとけ」
「あ…せやなぁ……」
光は恵美の方に視線をうつすと、少し残念そうに言った。
どや。
おまえのためにめんどくさいことしたったで。感謝せーよ?
去り際にオレはそう言わんばかりに恵美の方を見た。
しかし、恵美はオレには気付いていないようだ。
それどころか、光と2人でいられるチャンスだというのに恵美は少しもうれしそうな顔をしていなかった。
……??
なんでやろ?せっかくのオレのがんばりを。
…ま、光が自分以外の女の子のこと気にしたあとやしあんなもんか。
オレはそう思い、部室の方へ向き直った。
部室の扉をあけると、目当ての女子はちょうど掃除を終えたようでちりとりと箒をなおしている最中だった。
「部室のそうじとは感心やなぁ!」
オレが声をかけると彼女は振り返った。
「和泉くん??どうしたんですか??」
彼女は箒とちりとりを手早く片づけるとオレの方へかけよってきた。
「いや、光に呼んでこいって頼まれてな。一緒に帰らへんか?」
オレが尋ねると彼女は大きく目を見開き、うれしそうに笑った。
「いいんですか!?あ、あの!すぐに支度をします!!」
「お、おう……」
オレは予想外の反応に驚きながらうなずいた。
あたふたと準備を始める新しいマネージャーをじっとみつめる。
そーいや、光ってめっちゃあの子のこと気に入ってるみたいやなぁ。
あんなに誰かに執着してる光もあんま見たことないわ……
恵美には悪いけど、光はもしかしたらあの子のこと気になってるんかもしらんな……
「あ、あの…」
「……んっ!?」
考えにふけっていると突然目の前に支度を終えた女の子が立っていた。
「えっと、準備終わりましたけど……」
「ああ、ごめん!んじゃはよ行こか!光と恵美が待ってるし」
オレと彼女は一緒に部室をでた。
そして光と恵美が待っている校門前へと向かう。
そのときにふと思った。
…あ、そーいやオレこの子の名前知らんな。
自分だけ自己紹介しての相手の名前聞かんとか…ほんま自分ぬけとるわ……
「ごめん、聞くの忘れててんけど名前なんて言うん?」
オレは自分のバカさ加減にあきれながら彼女に尋ねた。
「あ、笹川菜ノ花といいます」
「ああ、じゃぁ菜ノ花。よろしくな」
オレが言うと菜ノ花は少し困ったように言った。
「あの…大阪では異性の下の名前を普通に呼び捨てで呼ぶっていうのが普通なんですか??」
「え…どうやろ…今まで気にしたことなかってんけど…」
別に大阪全域でそうってわけじゃないやろしなぁ……
ちゅーか、ウチの学校でも呼ばんやつはおるやろうし……
「別にそんなことないんちゃう??でもなんで……」
尋ねようとしてはっと気がついた。
オレが当然のように下の名前で呼んだんが嫌やったんか!?
「ごめん!嫌やった!?嫌なんやったら名字で呼ぶで!」
オレが慌てて謝ると菜ノ花は驚いたように手を横にふった。
「いえ!そんなことないです!ただ西崎くんもそうだったし、私は誰かに、ましてや男の子にそんなふうに呼ばれ慣れていないので緊張してしまうというか……」
ああ、そーいうことか。
めっちゃ焦ってもーたやん……
てゆーか、東京ではそんなんじゃないんかなぁ??
別に東京も大阪も変わらへんと思うねんけどなぁ……
「でも…うれしいです。」
菜ノ花がぼそりといった。
少し考えにふけっていたオレは菜ノ花の方を見た。
「なんだか……いいですよね。下の名前で呼んでもらえるのって」
菜ノ花もオレの方を見た。
無邪気な笑顔。
ふと、記憶の中のあいつがよみがえった気がした。
「そうか?ならええけど」
オレもふっと笑った。
光が菜ノ花を気に入っている理由が分かった気がした。
そうか……
この子はちょっと似てるんや。
大好きやった、あいつに。
もはやプロローグではないプロローグ……
一応3話の話に対応しています(*^_^*)




