復讐と暴力の挑戦者 7
「戦姫様と戦うとか、ちょっとやりづらいな」
個人的に、かなり戦いづらい。
今までの戦い、ずっと魔術に頼って来たから、尚更だ。
「そうですか? 私は、勇者様と戦えて光栄です、と言った感じですが」
「感じですか……」
「感じですね」
やれやれ、勇者様とは戦えません! とか言って降参してくんねーかな。
あっ、そう言えばオッズ的に俺は舐められた存在だったか。
「あ〜、日頃の行いが悪いんかねー」
「日頃の行いって……、神出鬼没の英雄ですよね?」
「人徳が欲しい。もうちっと崇拝してもらいたい」
本当、おかしいな。
英雄なんてやってるのに、何故パスが使えないんだろうか。
もう勇者なんだから、問答無用で決勝に進めさせてほしい。
俺は突き刺した剣に寄り掛かり、試合開始の合図を待った。
「準決勝! 試合開始!」
ノエルの合図と共に、リースがこちらに向かって来た。
俺は一歩も動かず、それを迎え撃つ。
いや、魔術がダメでスピードじゃ勝てないなら、もう打つ手は一つでしょ。
「はぁっ!!」
リースの刺突に俺は攻撃を合わせた。
刺突対刺突。
だが。
「なっ!」
リースは剣で。
俺は鞘だった。
聖剣が俺の持った鞘に納まった瞬間、間髪入れず俺は鞘を、巨大魚を釣り上げるかのように、勢い良く上に上げた。ぶおっと風が舞う勢いだ。
ただのレイピアなら折れていても可笑しくないが、聖剣だ。折れはしないだろう。
聖剣が宙を舞い、俺は地面に刺してあった剣をリースに突きつけた。
「悪いな。力づくで勝たせてもらった」
「勝者、勇者レオ!」
タイミングよく、聖剣が舞台に刺さった。
うん、俺のオッズが低い訳だ。全部、ギリギリの勝利じゃねーか。
まあ、エキシビジョンまで秘策を取っておきたいから、仕方がねーか。
俺は剣を鞘に戻し、それを杖代わりにして舞台から降りた。
もう一つの準決勝、黒フードの試合を見よう。
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「リース、手加減したの?」
「え? そういう訳じゃないですけど?」
観客席に行くと、フィーが首を傾げてました。
まあ、ちょっとあっさりし過ぎと言えば、そうですもの。
それは……。
「……見てみたかった、というのがありますね。ダークホース同士の戦いを」
「なるほどね」
舞台では、そのもう一人にダークホース、黒フードさんが戦っていました。
対戦相手の槍使いの攻撃を避け、大きな跳躍をみせ、そして——。
「っ!?」
「凄い!!」
黒フードさんは宙に立った。結界内かそうじゃないか、ぎりぎりの辺りに立っています。
まるでそこに足場があるとでも言わんばかりに、平然と。
一秒に三十回の突きが出来ると言う対戦相手も、あまりの高さに攻撃が出来ていません。
と。
また、対戦相手が不意に倒れました。
けれど今度は、何かに斬られたように血しぶきを上げて。
「勝者! 匿名希望選手!」
そのコールと共に、医療班が駆け寄ってきます。
黒フードさんはすっと舞台に降り、そのまま引っ込んでしまいました。
「……やっぱり」
「どうしました、フィー?」
フィーが目を輝かせていました。
探していた玩具が見つかったような、満面の笑みを浮かべて。
「アイツよ! やっぱり、アイツがレイよ!」
「ちょ、お、落ち着いてフィー」
がくがく肩を揺さぶられても、困ります。
「あたし、あれ見た事あるもの。研究所に来た時、見せてもらった!」
「えっ!? そうなんですか!?」
そうと決まれば。
「で、どうします?」
「うっ……」
私達に連絡をくれなかったレイさん。
それは、何か理由があるからでは?