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例えば仮の魔王様  作者: 零月零日
第四章
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復讐と暴力の挑戦者 7


「戦姫様と戦うとか、ちょっとやりづらいな」


 個人的に、かなり戦いづらい。

 今までの戦い、ずっと魔術に頼って来たから、尚更だ。

 

「そうですか? 私は、勇者様と戦えて光栄です、と言った感じですが」

「感じですか……」

「感じですね」


 やれやれ、勇者様とは戦えません! とか言って降参してくんねーかな。

 あっ、そう言えばオッズ的に俺は舐められた存在だったか。


「あ〜、日頃の行いが悪いんかねー」

「日頃の行いって……、神出鬼没の英雄ですよね?」

「人徳が欲しい。もうちっと崇拝してもらいたい」


 本当、おかしいな。

 英雄なんてやってるのに、何故パスが使えないんだろうか。

 もう勇者なんだから、問答無用で決勝に進めさせてほしい。

 俺は突き刺した剣に寄り掛かり、試合開始の合図を待った。

 

「準決勝! 試合開始!」


 ノエルの合図と共に、リースがこちらに向かって来た。

 俺は一歩も動かず、それを迎え撃つ。

 いや、魔術がダメでスピードじゃ勝てないなら、もう打つ手は一つでしょ。


「はぁっ!!」


 リースの刺突に俺は攻撃を合わせた。

 刺突対刺突。

 だが。


「なっ!」


 リースは剣で。

 俺は鞘だった。


 聖剣が俺の持った鞘に納まった瞬間、間髪入れず俺は鞘を、巨大魚を釣り上げるかのように、勢い良く上に上げた。ぶおっと風が舞う勢いだ。

 ただのレイピアなら折れていても可笑しくないが、聖剣だ。折れはしないだろう。

 聖剣が宙を舞い、俺は地面に刺してあった剣をリースに突きつけた。


「悪いな。力づくで勝たせてもらった」

「勝者、勇者レオ!」


 タイミングよく、聖剣が舞台に刺さった。


 うん、俺のオッズが低い訳だ。全部、ギリギリの勝利じゃねーか。

 まあ、エキシビジョンまで秘策を取っておきたいから、仕方がねーか。

 俺は剣を鞘に戻し、それを杖代わりにして舞台から降りた。


 もう一つの準決勝、黒フードの試合を見よう。



ーーーーーーーーーーーーー


 

「リース、手加減したの?」

「え? そういう訳じゃないですけど?」


 観客席に行くと、フィーが首を傾げてました。

 まあ、ちょっとあっさりし過ぎと言えば、そうですもの。

 それは……。


「……見てみたかった、というのがありますね。ダークホース同士の戦いを」

「なるほどね」


 舞台では、そのもう一人にダークホース、黒フードさんが戦っていました。

 対戦相手の槍使いの攻撃を避け、大きな跳躍をみせ、そして——。


「っ!?」

「凄い!!」 


 黒フードさんは宙に立った。結界内かそうじゃないか、ぎりぎりの辺りに立っています。

 まるでそこに足場があるとでも言わんばかりに、平然と。

 一秒に三十回の突きが出来ると言う対戦相手も、あまりの高さに攻撃が出来ていません。

 

 と。


 また、対戦相手が不意に倒れました。

 けれど今度は、何かに斬られたように血しぶきを上げて。


「勝者! 匿名希望選手!」


 そのコールと共に、医療班が駆け寄ってきます。

 黒フードさんはすっと舞台に降り、そのまま引っ込んでしまいました。


「……やっぱり」

「どうしました、フィー?」


 フィーが目を輝かせていました。

 探していた玩具が見つかったような、満面の笑みを浮かべて。


「アイツよ! やっぱり、アイツがレイよ!」

「ちょ、お、落ち着いてフィー」


 がくがく肩を揺さぶられても、困ります。


「あたし、あれ見た事あるもの。研究所に来た時、見せてもらった!」

「えっ!? そうなんですか!?」


 そうと決まれば。


「で、どうします?」

「うっ……」


 私達に連絡をくれなかったレイさん。

 それは、何か理由があるからでは?

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