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例えば仮の魔王様  作者: 零月零日
第四章
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復讐と暴力の挑戦者 6

「いや、まさかお前がここにいるとは思わなかったぜ? キョウ——いや、ヒビキさんよ」

「戦うのは久々なんだ。武闘大会なんて僕のためにあるようなものだとは思わないか? 今まで参加できなかった分、思いっきりやらせてもらうよ」

「手加減無し、ってことかよ」

「して勝てるとは思っちゃいないよ」

「勝つ気かよ……」


 空気が震える程の闘気を出して、キョウは笑みを浮かべた。

 蒼い髪にスーツ、バトルジャンキー、強者を追い求める男——ヒビキ・キョウ。


 試合開始の合図と共に、キョウは大規模魔術を展開させた。

 対抗し、俺も大規模魔術を展開させた。

 観客席のざわめきが酷い。まあ、そりゃそうだ。


 大規模魔術。

 それは魔術陣を複数個展開し、更にそれを巨大な魔術陣で囲み、一つの魔術陣として使う魔術。そうする事によって通常では考えようも無い、途方も無い威力の魔術を可能とする。普通、一人では不可能。

 まあ、俺達は普通じゃないから。

 キョウの作り出した魔術陣の色は蒼色。水のマナを使った魔法だ。

 対して、俺が作り出した魔術陣は黄色だ。


 キョウの魔術発動と同時に、結界内部に滝のように水が降り注いで来た。恐らく、五秒と掛からずに結界内部を水で埋め尽くすだろう。

 だがそれに触発されたように、俺の魔術が発動する。


 瞬間、目を瞑らずにはいられない程の光量が闘技場を埋め尽くした。

 観客席から悲鳴が聞こえるが、俺は構わず次の魔術の展開に掛かる。

 複数の魔術を同時に扱う、大規模魔術に比べればなんて事は無い行為。

 足下に複雑なのを一つ、手に小さなものを一つ。

 

「電気分解……か」


 キョウが目をやられたのか、わずかに目を開けながら、水が振って来ていた空を見つめた。

 そこには、滝のような水はもう存在していない。


「ああ。まあ、消滅じゃないから、有効活用させてもらうぞ!」

「!!」


 俺が構築した魔術陣のうち一つは、防御用。

 十秒程、魔術陣内を絶対的強度で隔離する魔術。これも結構魔力を喰うが、昨日増加させたから問題ない。

 そして、もう一つ俺が展開している魔術は。


「生憎、俺はお前と戦いを楽しむ気はない」

「ッ!!」


 炎の魔術だからだ。


 今、大量の水を電気分解したため、酸素と水素がこの結界内にある。

 そんなところで炎を使えば、どうなるかは解るだろう。


「さらばだ、歴史ある闘技場よ」


 俺が防御用の魔術を発動させてすぐ、大爆発が起こった。

 周りの大地が音をたてて削れて行くのは、なかなか壮観だった。

 残念なのが、足下以外爆煙で何も見えないと言う事か。

 

 十秒後、苦しい程の熱気と


 と。


「ふふふっ、やっぱり君と戦うのは面白いな」


 ゆらゆらと、煙と熱で霞む視界の奥に、蒼い髪の男が立っていた。

 無傷で。


「勝者! 勇者レオ!」


 だが、結界の外でノエルが叫んだ。

 驚いた顔をしているキョウだが、すぐに思い出したようだ。


「……場外は失格だったね」


 場外も何も、足場は俺の魔術陣が展開していた場所だけ。

 後はクレーターになっている。


「やはり、衆目を気にせずに戦う方が楽しいね」

「お前のための武闘大会じゃないのかよ。前言撤回がはえーぞ」

「場外とか、本当の戦いではないからね。……奥の手も使えないし」


 大会のルールが無かったら、俺は死んでいたかもしれない。

 俺は闘技場に感謝しつつ、舞台を元に戻すために尽力した。



ーーーーーーーーーーーーーー


 

「カノン殿! 貴殿は、本当に彼の者に勝利出来るのだろうな!? あんな男達を敵に回したくはないぞ!」

「御心配なく。魔術ごときで、私を殺す事は出来ません」

「ならいいのだが……」


 貴賓席にて、試合を見ていた貴族達が慌てていた。

 ただ単純に感心出来ないと言うのは、何か疾しい事があると言う事か。それを悪びれるのは評価出来るが。


 確かに、あのキョウという男も、レオも強い。

 だが、私とは強さの次元が違うのだ。

 どれほど強い魔術であろうと、私には関係ない。

 ……ただ。


「……また、一歩も動かなかったか」


 剣を付いて歩くレオの姿は、何かが変だった。

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