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例えば仮の魔王様  作者: 零月零日
第四章
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復讐と暴力の挑戦者 3

 闘技場の歴史を感じさせるタイルに剣をつきたて、それに体重を預ける。

 剣に寄りかかった俺は、第一回戦の対戦相手にその無礼を謝った。


「別に舐めている訳じゃねーんだ。気を悪くすんなよ、シュイ」

「構わないさ。……あんたの話は聞いているぞ、勇者レオ。悪いが、殺す気で行かせてもらう」


 武闘大会第一回戦にて、早くも優勝候補の一人と対戦だ。

 というか、俺ともう一人の黒ずくめ以外、全員が優勝候補に等しかったが。


 シュイ。

 十代という若さでAランクに上り詰めた天才剣士。

 身の丈ほどある大剣を軽々と振り回し、こと剣士同士の対決においては無敗を誇る凄腕だ。ちなみに、奴と対決して生き残った剣士はいない。故に、その強さもどこか神秘性を帯びている。

 まあ、俺にはそのタネはわかっているのだが。

 そういう所、フェアじゃないのかもしれないが、情報戦での勝利だと考えておこう。


「ルールは予選同様、審判が失格とみなす行為をした、場外に出された、戦闘不能と判断されたので、敗北となります。よろしいですね?」


 昨日のはっちゃけた雰囲気を消し、ノエルは淡々としていた。

 一応、公私は分けられているようだ。


「試合、開始です!」


 試合開始の合図と共に、シュイが踏み込んできた。

 どうやら、俺の得意の戦法を封じる気のようだ。

 俺の得意な戦法?


 不意打ち上等、先制で必殺の一撃をかますことだ。


 様子見だとか、弱らせるとかそんな回りくどいことはしない。

 初撃から、完璧な全力攻撃だ。

 力と速さ任せの、暴力的な一撃。

 別に一回の戦闘で一度しか使えないとか、そんな制約があるわけでもない。ただ、戦いが長引けば長引くほど、体力が落ちて疲労が増して、その威力が落ちてしまうからそんなことをしていたのだ。

 それを封じるには、同様に全力でぶつかってくることだ。シュイはそれをやってきた。

 どうやら、相手も俺を研究しているようだ。

 でもさ……。

 

 それって、俺が怪我をする前の話だろ?


「——なっ!?」


 俺は剣を杖代わりにしたまま、その攻撃を受け止めた。


 膨大な魔力で。


「おおっと!? こ、これは凄いですレオ選手! 先代魔王にも劣らない、桁外れの魔力! それだけで、シュイ選手の攻撃を受け止めました!」


 ノエルがちゃんと司会の仕事をしているのにびっくりだ。

 そんなどうでもいい事を考えている俺を、視認できるほどの魔力が包んでいる。

 シュイは先ほどから、必死に剣を振るってそれを削り取っていた。

 俺? 剣を杖代わりに棒立ちさ。


「さ、さすがは勇者だな」

「どうしたシュイ、剣士相手には無敗なんだろう?」


 俺は剣に凭れ掛かって、必死に剣を振るシュイを見ていた。

 こりゃ結構際どいな~、と冷や汗を掻きながら。

 足を奪われ、その教訓を生かして以前の俺とはまるで違う戦闘方法を取っている。


「どうした勇者! ……まさか、動けないのか?」

「——ッ」


 ご名答。

 俺には、この魔力のバリアを維持したまま移動する術が無い。そもそも、逃げ切れない俺には移動する意味など無い。 

 だが、動かないのは策を弄しているからに過ぎない。

 問題は……それが間に合うかという点だ。


 シュイの剣が、俺の魔力のバリアを遂に消し飛ばした。

 勝利を確信し、シュイが剣を振りかぶる。

 だが、俺の術が完成するのも同時だった。

 杖代わりにしていた剣で、俺はシュイの剣を迎え撃つ。


 瞬間、振り下ろされたシュイの剣が粉々に砕け散った。

 

「——ッ」


 だが、それはすべて計算どおり。

 これこそが、シュイが対剣士で無敗の理由。そして、誰一人生き残れなかった術だ。


 砕け散った大剣は無数の刃、魔力によって操作される小さなナイフとなる。


 シュイの大剣は、無数の刃を魔力で固めて作られた物だ。その刃は柄に埋められた魔石から出る魔力は空気中を伝播し、刃に魔力を供給する。そのため、砕け散った後も自在に動く。

 刃と刃の間を魔力が接着しており、見た目からは想像できないほどに軽い。

 剣士の対決では、少なからず剣と剣が触れ合う瞬間が生まれる。というより、シュイはそれを起こす。そこでこの剣は、インパクトの瞬間に砕け散り、相手を切り刻む。大剣であるがゆえに相手の剣はこちらに届かず、一方的に相手を切り裂く剣術だ。


 これこそが、シュイが対剣士で無敗の理由。そして、誰一人生き残れなかった術だ。


 だが。


「なっ!?」


 驚きの声を上げるシュイ。

 それって確かに、一本の剣じゃどうしようもないが。

 どこぞのおっさんが使っていた、全ての刃を防げるようなでかい盾があればいとも簡単に防げる。


 俺の目の前に、大量の砂が盾となって出現した。


 砂は刃を絡めとリ、柄からの魔力供給ラインを遮断する。


 俺が馬鹿みたいに魔力を放出してただバリアを創っていたと?

 時間稼ぎ? 非効率的過ぎるだろう。


「くそっ、まだだ!」


 砕け散ったままの大剣を投げ捨て、懐に忍ばせていた小刀を取り出し、一撃必殺のつきを繰り出そうとするシュイ。

 

「馬鹿。もうチェックメイトだ」


 

 シュイが力強く踏み切り俺に突進しようとした瞬間、シュイの体勢が崩れた。


 シュイの足元のタイルが砂地獄と変わっていた。


 俺が動けなかったのは、剣を通して舞台下の土を砂に分解し、集めていたからだ。

 もはやこの舞台のタイルの下は、すべて俺の魔力で操作された砂だ。

 

「武器に頼りすぎたな、シュイ」

「完敗……だな」


 正直、その剣術のタネが解かってなかったら、俺はやられてた。

 一回見た事があって良かった。


「勝者! 勇者レオ!」


 砂を土に構成し直し、大歓声に背中を押されるように、俺は舞台から降りた。

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