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例えば仮の魔王様  作者: 零月零日
第二章
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プロローグ3

「君のその魔法は、人の存在理由を奪うんです」


 おっさん、レイが——死んだ。

 その死に様は、すごく呆気ない物だった。


 ノーランドの王子とマクシアの王女を助け。

 ウィンドルのお姫様の病気を治し。

 魔王を助けた一人の男の死としては、あまりにも似つかわしくない物だった。



ーーーーーーーーーーーーー



「兄の敵! 死ね!」


 不意に、ナイフを持って突っ込んで来る少女。

 どうしようかと僕がレイの顔を伺うと、彼は不気味なくらい優しげな笑みを浮かべていた。

 そして。


「あのドレス、僕の弟子の結婚祝いに上げてください」


 そう言って、僕に笑顔を見せて。


 レイの心臓に、深々とナイフが突き刺さった。


「ごふっ……」


 口から、胸から……彼がいつもこんな時に出していた炎のように、勢いよく血が零れ出した。ふらふらと、レイを刺した少女は後ずさりし、そして逃げ出した。レイも膝をつき、そして地に伏せる。じわじわと赤い血が、大地に染み渡って行く。

 僕は、呆気にとられて何も出来なかった。

 ……何でだよ?

 アンタ、いつも『理不尽だ』って、何でも消滅させてただろ? 痛みも、傷も。……なんで、消さないんだよ。

 アンタの魔法は、『憤怒』。

 『理不尽をそれ以上の理不尽で消す』……そんな魔法じゃないかよ。


 僕がどんな顔をしていたのかは、分からない。

 ただ、レイが僕に笑って言った。


「……敵討ちは……理不尽じゃないでしょう? 愛の成せる業ですよ」


 事切れたレイは何も語らない。

 だから僕は、仮想人格に問うた。



 何故、死にたかったのか。



 死んでから初めて、僕はレイの事を何も解っていなかったんだと知った。



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