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例えば仮の魔王様  作者: 零月零日
第二章
24/67

プロローグ1

9/24日、内容を大きく変更致しました。

 思えば、出会いから胡散臭いおっさんだった。


 なにせ最初の言葉が、「愛と情熱の戦士です」なのだから、取り立ててその胡散臭さを語る必要はないだろう。

 僕は彼のそんな物言いに、何言ってんだこのおっさん、と至極マトモで、面白味もない感想しか抱かなかった。

 けれど、レイが孤児を引き取ったり、虐げられる人達に救いの手を差し伸べたりと、旅をしながらそんな事をしているのを見て、少しずつ僕はレイを見直した。

 というか、孤児で虐げられる……僕がまんまそれだった。

 記録上で僕が死んでから、僕はレイに引き取られてランベルグ帝国以外の国を色々と旅をしていた。

 魔王だったので六歳の少年を殺しました、と大々的に発表出来るはずも無く、帝国は魔王を倒したとだけ発表した。その結果、僕は普通に顔を出して街を歩けていた。


 旅の医者、という名の胡散臭いおっさん——レイ。彼はその日の食事と寝る場所、という簡単な報酬で治療を行なっていた。たまに、金持ちの貴族からは馬鹿にならない金を奪い取っていたが。いや、それこそが正当な報酬なのだ。

 レイの扱う魔法ーーそれは『憤怒』。

 最凶にして最悪の属性。最強でも最良でもない、扱いづらい魔法。

 それでもレイは、それを使いこなしているーーように見えた。

 僕は知らなかったのだ。


 『憤怒』属性の魔法は、リスクを伴う事を。



   ーーーーーーーーーーーーーー



 僕とレイは、四大大国には含まれない小国、ウィンドル王国の王様に招待されていた。

 一応、招待としておこう。


「……貴殿が『不可能を可能にする』と言う旅人か?」


 王、ギルバ・ウィンドルは自分でそう言いながら、疑いの眼差しを僕らに向けていた。大丈夫、僕も仕方がないことだと解かっている。

 『不可能を可能にする』というだけでも怪しいと言うのに、王座に腰を据えたギルバの前にいるのは、小汚い黒のマントに身を包んだ赤髪の男と、フードを深く被った少年なのだ。

 謁見の間に相応しい真っ赤な絨毯に、黒い汚れが付いているようだった。

 そして……。


「滅相もございません。私はそんな小っ恥ずかしい名前、名乗った覚えはありません。何ですか、それ?」


 尋ねた相手、レイもきっぱりと否定しているのだから。

 その物言いがどこか皮肉めいており、ギルバ王のこめかみに青筋が立った。なんと言うか、その言葉に微塵も畏敬の念が無いのだ。

 形だけはやけに美しい片膝立ちが、妙に気に障るのではないだろうか。隣で同じようにしている僕には、頭下げてやるから機嫌良くしろよ、なんて顔に書いてあるのが見えていた。

 顔を隠した少年に、不遜な態度の男。

 それには脇に立っている王家に忠誠を誓った騎士や、国に仕える大臣達が目つきを鋭くしたが、ギルバ王には見えていないのでレイは全く気にしていない。相手が怒りをあらわにしたら、更に嫌味っぽく反応するんだろうけどさ。


「王様、一つ申してもよろしいですか?」

「……なんだ?」


 こめかみに指を押しあて怒りを抑えながら、ギルバ王は一応聞き入れた。

 唯一の救いは、レイが敬語を使うと言う点だろう。それがなければ、騎士達は今にも切り掛かりそうだった。


「一体どうしてその、ふ、不可能を可能にするだか何だか知りませんが、そのような輩をお探しになっておられるのですか? 王都到着と同時に、攫われるようにここに連れてこられた私にも解るように説明していただきたい」


 最後は一息、レイが怒っている事は明白だった。

 それでも王に対する態度ではないだろう、というのが僕の思いだったが、レイの考えも解らないでも無い。

 だが、今のギルバ王には一刻も猶予がなかったようだ。




 ウィンドル王国は農業が盛んな国だ。むしろ農業しかない。

 その農業大国では最近日差しが強く、水は涸れ作物は萎れ、一種の飢饉じみた現象が起きていた。


 だが、ギルバの悩みはそれでは無く、愛する娘の病気だった。

 一国の王がそれではまずいだろうと思われるが、しかし彼の娘、ミリア・ウィンドルは民に愛される良き姫だった。人当たりが良く、平民も貴族も分け隔てなく接し、その優しげな微笑みは人々を天にも昇らせると言われた程だ。


 そんな彼女が病気になった。皮膚に黒点が大量に現れ、ミリアは寝込んでしまった。さらにそれに合わせたように国は飢饉となったのだ。

 国民(ギルバもその一人だが)の間では、ミリアが病気になったから飢饉となった、ミリアの病気が治れば飢饉も止まるという噂が囁かれているのだった。王であるギルバが娘のために国中、さらには諸外国の医者達に病気の治療を依頼したが、誰も治せる者はいなかった。

 最後の手段として、藁にも縋る思いでどこからか聞きつけた『不可能を可能にする』人物を探し出したのだ。


 その人物は、燃え上がるような紅の髪をしているとだけ語られ、それ以外の容姿は語られていない。

 ただし、その話は恐ろしい程ある。

 アルテミウス山の頂に住むと言う、天空の支配者たる竜王と互角に渡り合った、不死の魔族であるヴァンパイアを敗北させたなどの戦歴。毒素溢れる鉱山から生きて帰った、蔓延る伝染病を治したという経歴。

 それはどれも不可能と詠われた行為。


 もしその人物が実在するのなら、それは間違いなく娘も救える、そうギルバは考えた。

 そして国中から赤髪の人物を捜し出した。

 赤髪はそれほど珍しい訳でもなく、たくさん見つかったが、いずれも該当者はいなかった。

 そして、最後に見つかったのが、今目の前にいる男——レイだったのだ。


「なるほど……、王様も大変ですね。ですが私は、不可能を可能にする——そんな者ではないので、帰っても良いですか?」

「……やはりそうだったか。済まなかったな」

「いえいえ。子を思う親の気持ちは解らないでも無いですから。頑張ってください」


 そう言ってレイは踵を返す。ちょっと驚いたが、僕もそれに続く。

 扉へと手をかけ、レイは振り返らずに言った。


「無理矢理連れて来て、見送りも無しですか。……駄目な国ですね。一人の人間で国が一喜一憂してるなんて、ね」


 何言ってんだアンタ!?

 謁見の間に居た者達全ての額に青筋が浮かび、騎士の一人が慌てて僕らを追って来た。

 謁見の間を出る時、居心地の悪い空気が支配していたのは僕には関係ない。悪いのはレイだ。




 レイは城内を勝手に歩き回っていた。正しく言えば、物色していた。そんなレイを僕は、少しばかり困惑した表情で見ていた。

 そんなレイに怒鳴りつける騎士が一人。

 金髪のポニーテイルで、中性的な顔立ち。胸元に膨らみがあり、女性であることが伺える。


「旅人殿! いくら何でもあのような振る舞いに物言い、無礼ではありませんか!」

「はい? 知りませんよそんな事。私は少々苛立っているんです。私の都合も考えずに連行紛いに連れてこられれば、辛気くさい爺との面接。美人の王妃が出迎えるのならばいざ知らず、野郎と対談して何が面白いというのです? まして、私はこの国の住人でもない。敬意を払う必要など皆無!」


 レイは吐き捨てるようにそう言って、あちらこちらと城内を物色する。

 ……あー、怒ってる。何が原因かは知らないが、怒っている。

 対して騎士は律儀にそれに答える。


「……その通りではありますが、我々も必死なのです。飢饉で国内の作物はやられ、他国からの輸入に頼っています。物価が高まり生活が厳しくなり、国民も暗くなっております。ですが、姫様が戻られれば国も活気づくのです。だから、このような無礼を働いてしまいました」

「そうですか。随分と愛されているようですね、ここのお姫様は」


 レイは実にどうでもよさそうに相槌を打ち、城の物色を続ける。

 城の中庭には澄んだ水をアーチ状に放射する噴水や、彩りの花が咲き乱れる花壇がある。城内は大理石の床、壁には絵画や壷、宝剣などが飾られ、隅々まで掃除がなされている。さすがは一国の王が住む城といった風情であった。

 一通り見て回り、レイは小さく呟いた。


「ここに割く人員を地方に派遣すれば良いでしょうに。王って人は、いつどこで見ても無駄好きなものですねぇ」

「は? 何を言っておられるの——って、旅人殿! そちらは駄目です!」


 レイが階段を登ろうとした所を、騎士はその体を割り込ませる事でなんとか止めた。僕はそんな二人の様子をぼけーっと見ていた。


「なんですか。ここまで見せてくれたのなら、もう全部さらけ出してくれても良いでしょう? それとも、あなたがしますか?」

「意味が分かりません! ここから先は、姫様の部屋です。何人足りとも通す事は出来ません!」

「なんですか、行きがけの駄賃に姫様の顔でも拝見しようと思っていたのに! ここに来た意味がまるでない」

「それならば、これで十分でしょう!」


 そう言って、騎士は壁にかかった絵画を指差した。

 それは、一人の少女の絵。

 肩程までの輝く金髪に、宝石のような金色の瞳。見る者を虜にしそうな微笑を浮かべた少女、ミリア姫が描かれた絵だった。


「……………」


 レイは少し放心したようにその絵を見つめ、素直に踵を返した。あ、これはなんかやるな、と僕は思いながらその後を付いて行く。

 ほっと息を吐き、騎士はレイを押すようにして城門へと案内した。

 気付いていないかもしれないが、あんたはかなりの美人だ。ちょっと抵抗して密着してもらって、レイは顔をにやけさせているんだよ。


「良いものを見させていただきました。その点は感謝しましょう。ですが、二度目は私も素直に招待されませんよ」


 そう言い捨て、レイは城を後にしたのだった。顔をニヤ付かせたまま。

 ちらりと僕が背後を見ると、見送りに来た騎士がプンスカ怒っているのがよく分かった。


「……レイ、何を考えてるんだ?」

「うふふ、ちょっとしたサプライズですよ。サプラーイズ。勿論、助手の君にも手伝ってもらいますよ?」


 ああ、あの姫様可哀想。きっとトラウマレベルのサプライズを喰らうぞ。

 けど、役得役得。あの美少女とお話し出来る訳か。レイが仕出かした後、僕がフォローする。下げて上げる。うん、僕は助手としてはかなり有能じゃないか?




 月夜が綺麗な晩だった。

 僕らは城壁を跨いで、城のある部屋へと向かっていた。

 空中を歩いて、城壁を跨いだのだ。見張りが蟻のように小さい。足がすくむ高さだ。


「良いですか? マナとは魔力がなければ存在しない物と囚われがちですが、ちゃんとそこに存在します。目に見えない形ですが」


 レイは得意そうに空中でそんな事を語っている。

 僕らの足下には、一見何もないように見える。空中を歩いているように見えるが、実際は風のマナが足下にあって、それを足場に移動しているだけなのだ。


 風のマナは真空の箱。それをたくさん集めて、足場とする。

 風のマナを自分たちの足下にだけ展開する。踏み終えたら、次に踏み出す足下に展開する。こうする事で、それほど多くない風のマナで空中を歩く事が出来る。

 マナを集めると感知されるのは、微量の魔力が体内から流れ出しているからだ。実際の所、魔術師に感知出来るのは、マナではなく魔術。風のマナを集めたら、集めたうちの少しと魔力が反応して微弱な魔術が出来上がる。それを感知し、マナが集められたと魔術師は知る訳だ。

 この空中闊歩は魔力を一切放出せずに行なう。逆に、少しでも魔力が流れ出てしまうと足下で風の魔術が完成し、足場を失ってノーロープバンジーだ。そのため、魔術師にこれは感知されない。

 少ない魔力しか持たないレイらしい技術だ。

 僕なら、有り余る魔力を運動エネルギーに変換して、一気に飛び越えるのだけど。そんな事をしたら、馬鹿みたいな魔力を感知されてしまうのでしないが。


 お目当ての部屋、ミリア姫の部屋のベランダにそっと降り立つ。僕らは覗きでもするように——実際覗きだが——気配を消して部屋を覗き込んだ。

 少女——ミリア姫は泣いていた。

 天蓋付きのベッド、ふかふかの毛布に包まれて、ミリア姫は枕が濡れるくらい泣いていた。


「……行きますよ」

「…………」


 レイに促され、僕は無言で頷いた。

 こういう場面は、何度見ても慣れない物だ。

 レイがそっと、まるで何度もこんな事をして来たように、慣れた手つきで音を立てずに戸を開けた。ミリア姫は気付かない。

 レイはそろそろと足音を立てずにミリア姫に寄って行く。その歩みは、熟練者の物だった。


「ミリア姫ですか?」


 さめざめと泣いているミリア姫の脇に立ち、レイが優しげな声をかけた。

 わお、なんだかとっても詐欺師っぽい。

 顔を上げるミリア姫の顔を見て、レイが笑みを浮かべる。

 いつもの胡散臭い笑みで無く、優しげな笑み。


「ですね。あの絵と一緒です。その綺麗な金色の髪に瞳。間違いない」

「……誰? どうやってここに」


 ミリア姫がそう思うのも当然だろう。

 この部屋の左右上下の部屋にベランダは無く、この部屋は地上百メートルの高さにある。さらに魔術無効の結界が張られ、何人足りとも侵入する事ことは出来ないはずだった。

 マナを集めるだけでは、魔術ではないのだ。


「おや……、これはなかなかに酷いですね。御愁傷様」


 レイはミリア姫の質問には答えず、ミリア姫の病に侵された顔見て口元を歪めた。

 黒い点々が顔中、否、体中に溢れている。病気に詳しくない僕でも、これはあまり良くない類いの病気だと分かった。

 そんなレイの態度に、けれどミリア姫は自虐の言葉を吐いた。


「そうよ。とても見られた顔で無いでしょう。何? 哀れみにでも来たの?」

「……治る見込みは無いのですか?」

「治るわけないわ。どんな治療魔術を用いても治らなかったのよ。帰って。私に構わないで」


 不貞腐れるようにミリア姫は枕に顔を埋めた。子供っぽい仕草が可愛いな、とか僕は場違いにも思っていた。

 侵入者を咎めるでも無く、自虐の言葉を吐く少女。もはや自分と言う可能性を完全に見切った様子。自分が犯される、などという被害妄想を出来ないくらいに。

 対して、レイは嘲笑うように口元を歪めていた。


「いいですね! 最高です! 実に不愉快極まり無い! もの凄く苛つきます!」


 急に声を荒げるレイの様子を見ようと顔を上げるミリア姫。

 部屋の内部を風のマナの膜で覆っているので、外には音が漏れづらい。


「——ッ!!」


 と、レイは荒々しくベッドに乗り上げ、ミリア姫の頭を鷲掴みにした。驚くミリア姫の顔を枕へと強く押し付け、抵抗するミリア姫を強い力で押し付ける。


「これで声が漏れる心配はありませんね。安心して身体を預けてください」


 妙に甘ったるい声。王族の彼女なら知っているかもしれない。情欲に溺れた男の声だ。

 今のこの状況で安心出来る奴はいないだろうよ。

 まあ、見慣れた僕としては安心に近い何かを持っているけど。


「レイっ!? 何を——」


 けれど僕は、あえて慌てた振りをする。

 まるで、これが予定外の出来事のように。

 それがミリア姫の恐怖心を煽る。


「これは私のただの八つ当たりです。無理矢理城に招待されて、少々気が立っているんです。その憂さ晴らしを、原因であるあなたでさせてもらいますよ」


 レイはミリア姫の頭を鷲掴みにした手とは反対の手を掲げる。

 ミリア姫からは見えないだろうが、その手は赤々と燃える炎を灯している。

 だが、ミリア姫には狂気とも取れる笑みを浮かべたレイの顔が微かに見えていた。というか、レイはあえて顔を近づけている。病に掛かって尚美しい顔が恐怖に飲み込まれている。

 レイは笑みを顔に張り付け、その手をミリア姫へと近づけ、そして——。


「——ッ!!」


 ミリア姫の体を瞬く間に炎が包み込んだ。

 じわじわと、肉の焦げる匂いがした。




「……あ、れ?」

「気付いた?」

「ッ!?」


 目が覚めて、聞き慣れない僕の声にピクリと反応し起き上がるミリア姫。知らない男がそばにいるというのに、ピクリとしか反応しない。

 レイのときもそうだったが、どうにも反応がよろしくないお姫様だ。貞操観念が薄い気がする。

 あれから一時間程度しか経っておらず、夜空を星と月の光が彩っており、それが部屋を照らしていた。


「私は……あの男に……っ」

「落ち着いて鏡を見て。それで全てが分かるから」


 思い出してみるみる顔を青くするミリア姫。どうやら、かなり怖かったようだ。僕だって怖いよ、三十代のおっさんに頭鷲掴みにされてベッドに押し倒されるとか。おまけに変な笑みを浮かべてさ。

 演技にしても、治療しに来たんだからもうちょっと穏便に出来なかったのか?

 鏡を見せようとすると、途端、嫌そうな顔をして顔を背けるミリア姫。

 それもそうか。自分の顔が見るのが、顔が見られるのが嫌になるくらい、黒い点は気持ち悪く、彼女の顔を醜くしていたのだから。


「失礼します」


 と、僕は鏡を起いて彼女の手を取った。

 白い手袋に隠された小さな手。隠された肌。その手袋を外し、その手を——肌を露にする。


「綺麗な手だ。それに、綺麗な肌だ。何を恐れる必要がある? 君はこんなにも綺麗なのに」

「あっ……」


 ミリア姫の口から、驚嘆と困惑の声が漏れた。

 黒い点など無く、そこにはまっさらな白い肌があった。


「えっ……あっ、え?」

「ごめんな。気が立っていたのは本当なんだ。だから、ちょっと荒っぽい治療になっちゃった」


 何がって、やり方が。もっと穏便に済ませようよ。 


「先ほどの……神聖術、ですか? 彼は、一体何者なんですか?」


 首を振って少し考えた後、僕は答えた。


「魔法だよ。僕らは……魔法使い。奇跡の押し売りをしている者さ」


 言えなかった。言えるはずもなかった。

 『愛と情熱の戦士』だとか。




 足が付いてしまいそうなのでウィンドル王国を出国して、僕らは街道を歩いていた。その足取りは、まさに追っ手を撒こうとする犯罪者の物だった。


「……相変わらず、アクドイ」

「何を言ってるんですか、マモル君。これは正当な報酬です」


 ミリア姫の病魔を焼き殺し、その正当な報酬だと抜かして部屋を漁った男が一人。その旨を一応伝えるべく部屋に残った僕。

 僕がそれを伝えるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!


「お姫様の服なんて、そうそう手に入る物じゃないですよ? 不治の病を治した報酬にはピッタリじゃないですか!」


 変態だ。変態がここにいる。


「大丈夫です。新品を頂きましたから。……ぎらぎら光るたくさんの宝石もおまけで」


 一瞬見直しかけたけど、やっぱり……アンタはどうしようもないダメ人間だよ!!


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